375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(38) シベリウス 『クレルヴォ交響曲』

2009年07月22日 | 名曲夜話② 北欧編


シベリウス 『クレルヴォ交響曲』(作品7)
第1楽章 導入部 Allegro moderato
第2楽章 クレルヴォの青春
Grave
第3楽章 クレルヴォと妹 Allegro vivace
第4楽章 クレルヴォ戦場に行く Allegro molto-Vivace-Presto
第5楽章 クレルヴォの死 Andante
リリ・パーシキヴィ(メゾソプラノ)
ライモ・ラウッカ(バリトン)
ヘルシンキ大学男声合唱団
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
録音: 2000年 (BIS-CD-1215)
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LP時代からCD時代に移行する1980年代中盤は、それまでのクラシック音楽の人気曲が微妙に移り変わっていく時期だった。収録時間の関係で、LP時代にはどうしても2枚組になってしまったマーラーやブルックナーの交響曲が、CDでは1枚で収まるようになった。そうなると、今まであまり聴くことのなかった作品に接する機会が増え、人気も上昇し、コンサートでの演奏回数も増える、という好循環が生まれた。この録音メディアの変化が、1980年代の「マーラー・ルネッサンス」の背景にあった。

同じ例が、シベリウスの作品にも当てはまる。番号付きの7曲の交響曲以前に書かれたクレルヴォ交響曲がそれだ。この作品は、祖国フィンランドに伝わる民俗叙事詩『カレワラ』に登場する英雄クレルヴォの物語を題材にした5楽章の合唱付き交響作品で、全曲を演奏すると優に80分近くになってしまう。パーヴォ・ベルクルンドが初の全曲レコーディングを行なったのは1970年だったが、その当時は、まだほとんど知られていない作品だった。録音が増えてきたのは、CD時代に移行した1980年代中盤になってからの話である。

ここに紹介するヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団の演奏が発売されたのは21世紀になってから。実はこのCDが出るまで、自分はこの曲をまともに聴いていなかった。シベリウス特有の透徹した音楽がまだ確立していないという先入観があったし、今聴いても、多分に手直しの余地がありそうな気がする。実際、シベリウス自身が、1892年の初演からほどなく、この曲を未熟なものとして封印しているのである。あるいは、いずれ改訂しようと思いつつ忘れてしまったのかもしれない。

個人的には、初期の習作的な作品として、割り切って聴いている。とは言っても、決してつまらない音楽ではない。これはこれで、若書き特有の魅力があるように思えるし、後期の傑作群と比較しさえしなければ、それなりに聴きどころのある佳作と言えるのではないだろうか。

第1楽章導入部は、ソナタ形式で書かれた長大なプロローグ。シベリウスがウィーン留学中に聴いたブルックナーの交響曲を思わせる響きが、随所に垣間見えるところが興味深い。

第2楽章クレルヴォの青春は、一族の争いによって、家族と生き別れになったクレルヴォの数奇な生い立ちを背景にしている。まるで暗い森に迷い込んだような音楽。クレルヴォは両親と再会するが、彼の妹は依然として行方不明になっていることを知らされる。

第3楽章クレルヴォと妹は、全曲の中心的な部分。クレルヴォは美しい乙女と出会い、関係を持ってしまうが、お互いの身の上を語り合ったところで、2人が生き別れの兄妹だったことが判明。妹は入水自殺し、クレルヴォも自殺を考えるが母親に制止され、家族に不幸をもたらした仇敵への復讐を思い立つ。男女の独唱と男声合唱が、クレルヴォの恋愛の喜びと、急転直下で訪れた悲劇を歌う。

第4楽章クレルヴォ戦場に行くは、管弦楽のみによる闘いの音楽。

第5楽章クレルヴォの死では、復讐を果たしたクレルヴォが良心の呵責に耐えきれず、結局は死を選んでいく様子が、男声合唱によって厳かに歌われる。

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