ラウタヴァーラ 交響曲第7番『光の天使』、フルート協奏曲『風との踊り』(作品69)、鳥と管弦楽のための協奏曲『カントゥス・アルティクス(極北の歌)』(作品61)
ペトリ・アランコ(フルート)
オスモ・ヴァンスカ指揮 ラハティ交響楽団
録音: 1999年[光の天使]、1995年[風との踊り]、1992年[カントゥス・アルティクス] (BIS-CD-1038)
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フィンランドで最も有名な作曲家と言えば、誰の口からもほぼ100パーセント、シベリウスの名前があがるだろう。
それでは、2番目に知られている作曲家は? ここで、もうひとり名前が出てくるようであれば、かなりの北欧音楽通と考えていい。エイノユハニ・ラウタヴァーラ。1928年にヘルシンキで生まれた、現役の作曲家だ。
現時点で発売されているラウタヴァーラのCDは、かなりの数に上る。もともと知る人ぞ知る巨匠として、北欧音楽ファンの間ではそれなりに愛好者が多かったが、1995年に米国インディアナ州のブルーミントン交響楽団によって初演された交響曲第7番『光の天使』の大成功で、その名声は海を越えて世界に広がることになったのである。
この時期になって、ラウタヴァーラの音楽が、なぜそれほどのポピュラリティーを獲得したのだろうか。その理由は、聴いてみれば明らかなように、現代音楽でありながらわかりやすい、ということに尽きるだろう。作風は素朴なほどにロマンティックで、牧歌的。決して深淵な思想があるわけではないのだが、ストレスの多い現代に生きる人たちの「癒し」にはうってつけの、適度な宗教的陶酔感を味わえるところにありそうだ。
さて、ブームの火付け役となった交響曲第7番『光の天使』。ラウタヴァーラは1970年代から、天使をモチーフにした作品をいくつか書いていたが、この交響曲は、それらの集大成として位置づけることができよう。
第1楽章Tranquilloは、神秘的な守護天使の顕現を思わせるような、ゆったりとしたスケールの大きい音彩が魅力的。第2楽章Molto Allegroでは一転して、スピード感あふれる天使たちの乱舞となる。第3楽章Come un songoは楽園の子守唄のように穏やかな音楽。幼い天使たちの見果てぬ夢を表わしているのだろうか。第4楽章Pesante-Cantabileは、大天使ミカエルの登場を告げるような雄大なファンファーレで始まり、栄光の力に満ちた支配者をたたえる凱歌が、いつ果てるともなく続くのである。
『光の天使』は、世界初録音のセーゲルスタム指揮/ヘルシンキ・フィル盤を皮切りに、すでに3種類のディスクがリリースされており、どれを採ってもいいと思うが、ここではオスモ・ヴァンスカ指揮/ラハティ交響楽団のCDを紹介しておこう。シベリウスの録音でお馴染みのコンビは、同国の作曲家ラウタヴァーラにおいても、澄み切った、細部まで血の通った名演奏を聴かせている。
このディスクには、あと2曲、1974年に作曲されたフルート協奏曲『風との踊り』と、1972年に書かれた鳥と管弦楽のための協奏曲『カントゥス・アルティクス(極北の歌)』が収録されており、どちらもなかなかの傑作だ。
まず『風との踊り』。このフルート協奏曲は、楽章ごとに4種類のフルートを使い分けるところに面白さがある。
第1楽章Andantinoでは、通常のフルート。変幻自在に明滅するソロと、起伏の大きいオーケストラとの色彩豊かな絡み合いが聴きどころ。第2楽章Vivaceでは、高音のピッコロ・フルートが一陣のつむじ風のような神業を演じる。わずか1分30秒ほどの音楽だが、印象は強烈だ。第3楽章Andante moderatoはアルト・フルートの出番となり、ほの暗い雰囲気を醸し出しながら、どこか嵐の前の静けさのような緊張感を漂わせる。第4楽章Allegroは、雷鳴の到来を思わせるような激しい打楽器の響きで始まるが、曲はバス・フルートの先導によって次第に静けさを増し、やがて漆黒の闇の中に消えてゆく。
最後の『カントゥス・アルティクス(極北の歌)』は、なんとテープに録音した鳥の鳴き声を「ソリスト」に起用して、管弦楽とのコラボレーションを実現させるという前代未聞の協奏曲。
第1楽章「沼地」では、実際に北極圏の沼地で録音した鳥の声を背景に、神秘的な森の夜明けのような音楽が展開する。第2楽章「メランコリー」では海辺に棲息する鳥の歌声が、第3楽章「渡りゆく白鳥たち」では飛翔する白鳥の群れが主役を演じる。その演奏効果は抜群で、居ながらにして極北の国フィンランドの雄大な光景が目に浮かぶようだ。
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