グリエール バレエ組曲『青銅の騎士』+ザポロージェのコサック
バレエ組曲『青銅の騎士』(作品89)
1.序奏 2.元老院広場にて 3.広場での踊り 4.エフゲニー 5.パラーシャ 6.抒情的な情景 7.ダンスの情景 8.占い師 9.輪踊りとダンス 10.第2の抒情的な情景 11.ワルツ 12.嵐の始まり 13.偉大なる都市への讃歌
ザポロージェのコサック(作品91)
ドミトリー・リス指揮 ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1994年 (Russian Disc RD CD 10 037)
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もし自分が指揮者であれば、どんな曲を演奏するだろう。クラシック・ファンであれば、一度はこんな想像をするのではないだろうか。人生でたった1回、コンサートを任されるとしたら、どのようなプログラムを組むか…。それは、なかなか楽しい想像である。
自分の場合、この名曲夜話がそうであるように、すでに有名オーケストラの定番となっている人気曲よりも、知られざる名曲に光を当てたい、という視点から曲目を決めていくだろう。もちろん、単に珍しいというだけではなく、もっと多くの人に聴いてもらいたい曲、聴いて感動することのできる曲、というのが最低条件であることは言うまでもない。
そんな中で絞っていくと、交響曲ならば、カリンニコフの第1番はぜひ演奏してみたいと思うし、管弦楽曲であれば、グリエールのバレエ組曲『青銅の騎士』が筆頭候補に上がってくる。両曲とも、有名オーケストラのプログラムに載ることはほとんどないが、現時点では、すでにアマチュアのオーケストラやブラスバンドで度々演奏されるようになっており、近い将来、さらに知名度を高めていく可能性は十分にあるだろう。
さて今回は、その『青銅の騎士』のCDを再度採り上げてみたい。前回(名曲夜話21)、同曲のChandos盤を紹介した時、次のように書いたのを憶えておられるだろうか。
“現時点で入手可能な唯一の音源ということもあり、グリエール・ファンには貴重なディスクである。(以前Russian Discというレーベルで、もう一種類出ていたはずだが、見かけなくなってしまった)。”
その「すでに見かけなくなってしまった」Russian Disc盤を、なんとその後、ある通販サイトを通じて、入手することができたのである。このディスクは、ロシア期待の若手指揮者ドミトリー・リスが、1994年にエカテリンブルク(旧スヴェルドロフスク)のウラル・フィルハーモニー管弦楽団を振った、正真正銘の「本場モノ」の録音だ。
前回紹介したダウンズ指揮のChandos盤は、どちらかと言えば、スマートで洗練された演奏で、美しくはあるが、やや食い足りないところがあった。それに対して、このRussian Disc盤は、低音部が生き、濃厚なロマンに満ちあふれた、いかにもロシアの楽団らしいスケールの大きな演奏。個人的な満足度では、こちらのほうが遥かに上を行き、当分手元から離すことのできない愛聴盤となった。
すでに紹介したように、この音楽は、全編聴きどころの連続だ。
ワーグナー風の勇壮な旋律の立ち上がる①「序奏」から、一気にスピード感あふれる②「元老院広場にて」に突入する迫力。間髪入れず、軽やかでチャーミングな③「広場での踊り」が展開する。まさに、一部の隙もない導入部だ。
そしていよいよ、このバレエの主人公④「エフゲニー」と⑤「パラーシャ」が登場。それぞれの性格を現わすような、いかにもロシアン・バレエの情緒たっぷりな名旋律を聴かせる。この2人がデュエットを歌う⑥「抒情的な情景」のゆったりとしたアダージョは、全オーケストラが躍動する前半部分のクライマックスとなって、聴く人の魂に訴えかける。
⑦「ダンスの情景」のテンポの速いダイナミックな舞曲が、この組曲の中間部。⑧「占い師」では、一転してメルヘン的な色彩美を聴かせる。ここから切れ目なく続く⑨「輪踊りとダンス」はゆったりとしたワルツの旋律。ロマンチックな泣かせ節を存分に聴かせた後、さらに感動的な名旋律、⑩「第2の抒情的な情景」が始まる。このあたりが、大きく盛り上がる中盤のクライマックス。切々と心にしみるロシアン・アダージョが、いつ果てるともなく続く。
⑪「ワルツ」は、優美な旋律が印象的なロシアン・ワルツ。クライマックス直前の、つかの間の休息といった感じだ。やがて雲行きが怪しくなり、⑫「嵐の始まり」の悲愴感にあふれる音楽が始まる。そして、激しい嵐が終わると、雲間から眩しい陽の光がさすかのように、荘厳で感動的な終曲、⑬「偉大なる都市への讃歌」が歌い上げられる。まさにロシア音楽史上に燦然と輝く、不朽の名作! サンクト・ペテルブルクの市歌にも採用された素晴らしい旋律が、新時代の夜明けを告げるかのように全曲を締めくくる。
このCDの後半には、1921年(作曲者46歳)に作曲された『ザポロージェのコサック』が収録されている。こちらも、本来はバレエ音楽として構想されたもので、ウクライナの踊りや民謡の旋律が随所に散りばめられた、ローカル色豊かな音楽だ。
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自分が指揮者だったら。。。この想像はかなり楽しめますね~^^/
昔、ピアノを習っていたので、私はラフマニノフとベートーベンのピアノ協奏曲に曲目が集中しそうです。
それにしても、ミナコビッチさん凄いですね!
身近に、こんなにクラシックに詳しい方がいたとは。。。嬉しいです~
「青銅の騎士」聴いてみたくなりました♪♪
自分は学生時代にコーラスをやっていた程度で、
楽器は習う機会がありませんでした。
クラシック音楽は奥が深く、聴き始めると中毒症状に
なりますね~。マラソンと通じるものがあるかも。
この「青銅の騎士」は、店頭で入手するのは難しいので、Amazon.comのサイトで注文するのが近道です♪
吹部でHron♪をやっております。
今、「青銅の騎士」をやっている最中です!!
なので、曲について、いろいろ分かったので助かりましたぁ↑↑
ありがとうございました!!
「青銅の騎士」は、日本の吹奏楽部では人気曲のようですね。
メロディが素晴らしいので、今後もっと多くの人に親しまれる時が来るでしょう。
演奏会の成功を心よりお祈りしております^^
友人からこのRussianDisk盤を借りて聴きました。ウラル・フィルという、ロシアのローカルオケの音色が曲にマッチしている盤ですよね。
ところで、自分の所属しているアマオケでこの組曲全曲を来る4月の演奏会でとりあげます。
レンタル譜のパート譜の中には、国内代理店が今回浄書したものも含まれていた(出来上がるのを待たされた)ので、もしかしたら組曲全曲は初演なのかもしれません・・・(過去のいくつかの大学オケの演奏では抜粋で演奏されていました)
もしご都合つきましたらお運びいただければ幸いです。
貴重なお知らせ、ありがとうございます。
この曲が知られるようになったのが、ごく最近ですから、もしかすると全曲版の演奏は日本初演かもしれませんね。
この記念すべきコンサート、ぜひ観に行きたいのですが、なにぶん海外在住で、時期的には厳しいかな…という感じがします。
ぜひとも、この曲が広く知れ渡るような名演を期待しております。
息を吸うところがあまりないので・・・
つらいですが、がんばります
今年の吹奏楽コンクールで、
青銅の騎士やりました
全国で銀でした。
やっぱり難しかった…。
ダンシングシーンが…。
コンクール、がんばって下さい。
あるいは、もう終わったかな?
>マカロンさん
全国で銀はすごいですねー。
やはり一筋縄ではいかない曲なんですね。