四国遍路テクテク日記

「四国を歩いて遍路する。」にこだわって平成14年のGWから2年間、5回に分けて歩いた記録を中心に遍路に関するあれこれ。

平成15年9月14日(土佐から伊豫・第18日目)

2005-07-27 09:26:38 | 第3回(土佐から伊予)
9月14日(日曜日)
(第2日・通算第18日目・歩行距離36.7km・歩行歩数43,079歩)

 寝苦しい夜だったが、疲れもありそこそこ寝入ってしまった。

5:00分、寝覚めは悪くない。
 布団を畳み、昨晩いただいたおにぎりを一個食べて出掛ける用意をする。

 6:00分、車の少ない車道に出ると、顔を出したばかりのお日様を
背に受けて長い陰ができる。
さすがにこの時間は暑くはないが、少し歩くと汗ばんでくる。

 今回は、暑さ対策のためにできるだけ朝早い時間に歩きだし、
午前中に距離を稼ぐことにしていた。

 順調に歩いていると、ヘンロ道は左手の海岸へと降りていく。
海岸沿いに続く松林の中を歩いていく。
適当に吹く風が気持ちいい。
 海には、もう、サーフインを楽しむ人達がたくさん波待ちをしている。
この辺の海は、サーフインのメッカのようだ。
波の立ちそうな場所には、色とりどりのウェットスーツ姿の人達が
30~40人はいる。

 それが、しばらく行くと同じように波待ちをしている人達がいる。
いったい何人の人達がいるのだろう。
松林の中には、テントがたくさん建っている。
サーフインをしている人達のテントのようだ。
考えてみると今日は連休初日だ。
道理でたくさんの人達が来ているわけだ。

 道は、松林の中に続いており、適当にお日様を遮ってくれているので
気持ち良く歩ける。
時折、海から風も吹いてくる。

 しばらく歩くと松林を抜け、見晴らしのよいところに出た。
松林の内陸側の砂地で畑らしいものを作っている人達がいる。
沢山の人達が出ており、砂を均したり、溝を作ったりしている。
近くで作業をしているお婆さんがいたので聞いてみると、
らっきょを植えているとのこと。
20センチくらいの棒のような苗を植えている。
らっきょを作っているところを初めてみた。

 らっきょう畑の向こうに運動公園が見えてくる。
運動公園を通りすぎると「かきせ橋」という橋がある。
橋のたもとがちょうど日陰だし、小一時間ほど歩いたので休憩する。

 7:00分、橋のたもとの歩道に座り込み、靴を脱ぎ、
靴下まで脱いですっかりくつろぎモードに入っていると、
制服姿の中学生らしい子供達が「お早うございます。」と
元気な声を掛けて、自転車で走り抜けてゆく。
私も、「お早う!」と返す。

 歩き出してしばらく行くと大きな白い犬を連れた65歳くらいの
お爺さんが歩いている。
「お早うございます」と挨拶すると、「どこから来たの」と
話しかけられる。
「北海道からです」というと、「私も友達が旭川と言うところにいる」と
話しかけられる。
しばらく、このおじいさんと話しながら歩く。
お爺さんは、しきりに「私の体が元気だったら歩いてお遍路を
してみたい」という。
車では何回かお遍路をしたことがあるようだ。
 歩くスピードが違うようでお爺さんが遅れがちになり、
「先に行きなさい」と言われたので、お礼を言って、先を急ぐ。

 ほどなく、家が数件建っているところに来た。
交差点を見ると、正面の道路に近道の表示があり、
左に曲がると田浦と書いてある。
ちょっと迷ったが、近道を行くことにする。

 登り下りを繰り返す山の中の農道でこの道を通る車もほとんどない。
この道をただひたすら歩く。
車もほとんど走ってこないし、人家もないのでどこを歩いているか
見当もつかない。

 しばらく歩き坂を下ると、目の前には水田が広がる広いところに出る。

 道は水田の中を真っ直ぐに延びている。
ちょっと疲れたので一休み。
この時間になると結構暑くなっているので山陰になる日陰を探して休む。
しかし、風が吹き抜けるので、思ったほど暑さは感じない。
この調子で歩ければ、いいな!

 右側の方から延びてくる道路と三叉路になったところへ来る。
どうやら、右側の道路が双海方面から来る道路らしい。
前方を見ると、家がたくさん建っているのが見える。
その向こうの高いところを車が走っているのが見える。
どうやら、堤防のようだ。
四万十川の近くまで来ていると思い集落目指して歩く。

 8:55分、堤防の上に登ると四万十大橋だ。
目の前には向こう岸まで一直線に伸びる四万十大橋がある。
そして目の下にはエメラルドグリーンの水が流れている。
四万十川だ!。
四万十大橋は文字通り大きな橋だが、橋を歩いていると、
時折、強風が吹き抜けていく。
菅笠を吹き飛ばされないように両手で押さえながら歩くので、歩きずらい。

 渡り終えるの10分は掛かっただろうか。
 四万十大橋を渡り、左側にある階段を下りてホッと一息!

 ほどなく、八束の集落に入る。八束の集落を歩いていると中学校がある。
小さなグランドで野球の練習試合があるのか、ホームベースを挟んで生徒が
整列して挨拶を交わし、グランドに散っていく。
中学校の校門のところに父兄なのか、お爺さんとお孫さんらしい人が
いすに座って野球を見ている。
 
 9:15分、私は、そのグランドが見えるところで、
ちょうど自動販売機を見つけたので、一休みする。

 八束の集落に別れを告げて、しばらく行くと津蔵渕になる。
国道から右手の道を歩くと旧道になるが、この道は、津蔵渕川の
流れに沿っており、川には綺麗な水がサラサラと流れており、
ちょっと涼しく気持ちのいい道だった。

 また、国道に合流する。合流してからは、少しずつ登りとなっていく。
両側の山が迫ってきたと思ったら、正面にトンネルの入口が見える。
伊豆田トンネルのようだ。
このトンネルは、1,620メートと長いので、トンネルの手前で休憩する。

 休憩後、歩き出すと右側にお寺がある。
こんなところにお寺があるとは?と思い、地図を見るが何も載っていない。
お寺の入り口に四国の道の石柱がある。
よく見ると今大師寺と書かれている。
道路のこちら側から手を合わせてお参りする。

 伊豆田トンネルは長いトンネルだが出口が見えているし、
広い歩道もあるので、それほど圧迫感はない。
一気にトンネルを抜けるが、太陽の強い日差しが避けられて
ホッとしながら歩く。
 
 トンネルを抜けると、道の先の方に大きな水車が見える。
ドライブイン水車のようだ。
 
 11:10分、お客さんが誰もいないドライブインに入る。
うどんを頼んでから靴と靴下を脱ぐ。ついでに、足を揉むと気持ちがいい。
冷房の効いたドライブインにすっかり気をよくし、冷たい水を何杯も
お代わりする。
ああ、生き返る!
 
 さて、今晩の宿をまだ決めていなかったので、大阪のHさんお勧めの
民宿久百々にしようと思い、携帯を取り出すが、なんと、圏外の表示がでる。
下ノ加江まで行けば通じると思い、あとで電話することにした。

 40分ほど休んで気持ちもすっきりしたので11:50分、ドライブイン水車を
後にする。
ここからは、1時間ほどで下の加江と思い、頑張ることにした。

 下ノ加江の手前で右側に流れる市野瀬側の中に奇妙な人がいる。
市野瀬川はもうすぐ海に注ぐので川幅も広くなりゆったりと流れているが、
その川の中に人がいる。
ウェットスーツに潜水眼鏡を付けている。
半身を川の中に付けて、建網で川の中の石を囲み何か漁をしているようだ。
よく見ると、川の中に半球状に石を積みあげたこんもりしたところが
何カ所か見える。
どうやら、この積み上げた石の中に寄ってくる魚か何かを取っているようだ。
こんな漁は、よほど川がきれいでなければできない。

 下ノ加江の集落に入り民宿安宿(あんしゅく)の前まで来た。
ここから、民宿久百々さんへ電話する。
奥さんが出る。
今晩の宿をお願いすると「今日は結構お客さんがいるし、この時間で
下の加江まで来ているのならもう少し先までいけるよ。」と言われる。
私は、今朝も早くから歩いているし、友達から久百々さんがいいよと
聞いていると言うと、「広間でも良ければ」と言って、
やっと泊まれることになる。

 そうすると、久百々はここ下ノ加江からは3キロほどなので、
ゆっくり歩けばいいとすっかり安心してしまう。
 
下の加江の集落の先にある橋を渡り、三原町への三叉路に来ると、
ちょうどベンチがおいてあり、「お遍路さんお休みください」と書いてある。
自動販売機もあるので、飲み物を買って、例のとおり靴と靴下も脱ぎ、
すっかりくつろいでしまった。

 ベンチに横になっていると、思わずウトウトしてしまった。
この時間は日差しも強く、今朝から炎天下の中を歩いていたので
疲れも溜まっていた。
気がつくと、ここのベンチで、なんと、30分も寝ていた。

 13:30分、気持ちをお遍路モードに戻し、歩き出す。
道は上り坂となり、左手に海が見えてくる。右手は山だ。
相変わらず海の色は綺麗だ。
岬を回ると進行方向のずーと先にボーッと霞んで見えるのが足摺岬のようだ。
 
 幾つかの岬を回ると、道路工事中の場所に出る。
右側の急な山を削っている。
そのすぐ先に集落が見える。どうやら久百々の集落らしい。

 工事中の場所を過ぎると橋がある。
集落の手前で川が海に流れ込んでおり、その橋の下にパラソルを広げ、
海水浴をしている人達がいる。
海にゴムボートや浮き袋を浮かべ遊んでいる。
とても気持ちよさそうだ。

 橋を渡ると、前方右手に白い2階建ての建物が見える。
民宿久百々さんだ。

 14:05分、民宿久百々に着く。
やれやれ、これで今日のお遍路は終了だ。

 入り口で声を掛けると、奥の方から奥さんの声がする。
玄関横にある10畳ほどの広間へ案内され、風呂の場所と、
洗濯の場所を聞く。

 早速、風呂に入り汗を流す。
広間は、風がビュンビュンと通り抜け気持ちがいい。
窓も戸も開け放して風を入れ、部屋の中で畳の上にゴロリと寝て
ウトウトしていた。

 目を覚ましたが何もすることがない。
時間を持て余してしまったので、先ほど見ていた海水浴をしていた人達の
方へ行ってみる。
 民宿の裏に細い道があるのでそれを歩いてちょっと行くと、
久百々川にぶつかる。
その川がすぐ海に注いでおり、そこで海水浴をしている。
靴を脱いで川の水に足をつける。冷たくて気持ちがいい。
気持ちが良いのでしばらく足をつけていたが、
頭の方にはカンカンでりの太陽が当たるので、いい加減のところで宿に戻る。

 宿の広間の方が風が通り抜け気持ちが良い。寒いくらいだ。
またウトウトしてしまった。

 夕食ですと、女将さんから声が掛かってので、隣の食堂へ行く。
今晩は、お遍路が私を入れて三人。
海水浴のお客さんが二組四人という顔ぶれだ。

 お遍路は、いずれも年輩の人で東京のOさんと逆打ちをしている
静岡のWさんだ。
食事時間は、お遍路話で盛り上がったが、明日の予定を話していると、
皆さん足摺岬の金剛福寺に泊まると話している。
 私もそのつもりだったのだが、久百々の奥さんから、
金剛福寺はユースホステルを廃業したと聞かされる。
それでは、足摺岬に泊まる必要もないと思った。
おまけに、久百々からなら足摺岬は往復できると言われ、
私は、一日で往復することにして、明日の晩も久百々に泊めて
もらうことにする。

 今回のお遍路は予定を組んだが、最初に組んだ予定では
44番大宝寺辺りまでしかいけない。
次回のお遍路を考えると、交通の便の良い松山市までは
行きたいと思っていた。
おまけに、足摺岬までを2日で往復するとしたら、
1日の歩行距離が25キロほどなのでちょっと物足りないと思っていた。
一昨日、昨日、と2日間歩いてみたが、足の調子はいいので
思い切って久百々さんから一日で足摺岬を往復することにした。
 Oさんは、足が遅いから明日は予定通り金剛福寺に泊まると言い、
Wさんは、金剛福寺を打った後、窪津まで戻り、奥さんに車で
迎えに来てもらうことにした。
 奥さんの話では、お接待として、お遍路さんが足に合わせた
ところまで歩き、そこまでは久百々から送り迎えのサービスをしていると
言われる。
いずれにしても、私は、明日45キロは歩かなければならないので、
6時には出たい旨話し、朝食を5時半にしてもらう。

 久百々の奥さんに、昨年の夏に大阪からHさんという女性が
泊まっているはずだがと話すと、Hさん?Hさん?と
何回か言った後に、「かよこさん?」と言ったので、
「そうです!思い出しました。」と聞くと、Hさんと言われたときに
かよこさんという名前が浮かんだと言われる。

 お客さんが書いてくれた一言が残っているはずだと言われたので、
昨年のを持ってきて探してみるとありました。
 そこに書かれている奥さんのHさんに対するコメントは、
☆田村由記子ちゃん似の顔☆
    予約をいただいた時「ありがとうございます」と伝えたら、
   Hさんの方も「こちらこそありがとうございます」って
   喜んで下さった。
    落ち込んだ後に2通の喜ばしてくれる手紙を受け取った
   ときに思った。心の中の話をさせていただいた。
   3通目は女性からで私が男だったらプロポーズすると笑わせる。
   とある。
 手紙についての話はよく分からなかったが、Hさんらしいなあと思った。

 明日の朝は早いので寝ることにしたが、昨晩の寝苦しさとはうって
変わって涼しい。
窓を開けておくと涼しい風がバンバン吹き抜けていく。
ちょっと涼しすぎるので、窓を少し閉じて寝ることにした。

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  久百々には満室のところを無理を言って泊めて貰いました。
 でも、泊めていただいて本当によかったと思います。
 久百々さんの広間は、風がビュンビュン吹き抜け、今までの暑さが
 嘘のように涼しく、寝不足と暑さで疲れ切った体の疲れを吹き飛ば
 した宿でした。
  ここで気持ちの切り替えがついたので、これから先の遍路も順調に
 歩くことが出来たと思います。