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知多半島の新ごんぎつね

2010-06-05 03:00:00 | 自然

 
 


 2010年6月10日付け中日新聞の知多版に「ごんぎつね」の記事が載っています。http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20100603/CK2010060302000024.html 

 半田市出身の童話作家「新美南吉」の作品「ごんぎつね」に出てくる知多半島のホンドギツネは、1960年代にはほとんど確認できなくなり、その血統は絶えたと考えられています。

 しかし、ここ数年、知多半島先端の南知多町や美浜町で目撃例が相次ぎ、いくつかの場所で繁殖していることが確認されています。また、今回の轢(れき)死体の発見例で明らかになったように、今では知多半島全体で生息していると考えられています。


 実はこの記事は、私が深く関わったというか…。(*^_^*)

 このお話の経緯は、昨年の年末近くのある日、知多市の担当課から、「キツネの轢死体があるがどうしたらよいか。」という相談があったので、私の手元まで持ってきてもらいました。そして、かねてからつながりのある名古屋大学の織田教授の研究室に引き取ってもらい、ここの職員の方が標本化されたものです。
  
 

 そしてその後に、いくつもの偶然が重なって、今回国立科学博物館に収蔵されることになったのです。

 実のところ、このキツネの標本化は、今の私の仕事からは少し離れた内容というか、半分趣味的なことなので、当時は(上司から指摘を受けないか)少しひやひやしながら事を進めていました。
 最終的に、このキツネに関わった人たちの多くが納得いただく結果というか、最良のことになったようで、私自身も、関わることができてよかったと思っています。
 もちろん、このキツネの死体を発見した方、連絡して搬送していただいた方、標本化していただいた方、死体や標本を受け入れ手いただいた方。誰ひとり欠けても、このキツネは標本になることはありませんでした。関わっていただいたっすべての人に感謝しています。

 ところで、動物の死体というと、一般の人はあまり気持ちのよい印象を受けないかもしれません。轢死体と言えばなおさらのことと思います。
 しかし、死体の中には、私たちの知らない多くの情報が隠されています。
 
 残念なことに、動物の標本は決定的に不足しています。おそらく愛知県内のキツネの標本は数例のみでしょうし、標本を収蔵する施設もほとんどないというのが実情です。
 実際に、このキツネのルーツをたどろうとしても、その母体となると思われるキツネのサンプルがほとんどありません。
 いくつかの博物館や大学の研究機関は、積極的に標本を収集し始めています。マニアの間ではよく知られていますが、大阪市立自然史博物館の「なにわホネホネ団」のように、ボランティアを募って標本作製をしているところもあります。http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/honehone/
 愛知県内のある自然史系の博物館でも、ボランティアによる標本作りを始めています。
 
 もしあなたが動物の死体を見つけたら、地元で受け入れ手くれる施設を探してみてください。
 不幸にして死んでしまった動物でも、標本という形で永遠に生き続け、標本の中に隠された情報は、多くの研究者たちの手でひもとかれる日が来るかもしれません。


 それにしても、この地域の生態系の頂点(アンブレラ種)であり、象徴種でもあるキツネたちが復活し、知多半島を走り回っていることは嬉しいことです。
 ごんぎつねが生きたような時代。人と生き物たちが互いに尊重しあって生きていた時代が復活するといいですね。
 
 
P.S.記事に載っていた私の実年齢が、少しだけ若くなっていたことは、ここだけの秘密ということで…。(^_^;)