よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

「少食」と「断食」のすすめ

2019-11-11 17:07:04 | 健康・病気
 飽食の日本では、「○○によい△△食材」と健康ブームにあやかった内容の報道が連日マスコミを賑わせています。確かに、積極的に摂取したほうがよい食品もありますが、他の食材とのバランスを考慮しないとカロリーオーバーや栄養の偏りの原因になる危険性があります。
今回は、食事に加えるのではなく減らす方向の、少食と断食に関して考えてみます。

 昔から「腹八分に病なし、腹十二分に医者足らず」という言葉がありますが、食べ過ぎは健康によくないことは認識されていました(無論、昔は腹一杯食べられる機会は少なかったと思いますが・・・)。
 空腹であることのメリットとして現在考えられているのは、① 血糖値が安定する、② 消化器官の負担を軽減する、③ 消化吸収能力が向上する、④ 良質な睡眠が確保できる、⑤ 食事からの有害物質の取り込みが減る、⑥ 長寿遺伝子のスイッチが入る(空腹状態を皮切りに長寿遺伝子が活性化し、老化を防いで心身が若返る)、⑦ 脳の新たなエネルギー源をつくり出す(食事量が減ることで体脂肪をケトン体に変換し、脳のエネルギー源として利用する)、⑧ 集中力が高まり、頭がよくなる(インスリン分泌が低下し、記憶にかかわる脳内のタンパク質が多くつくられる)、などがあります。
 同様に少食にすることで、がんの予防や転移防止に役立つ、若返り効果があるなどの最新研究もあります。
皆様も、昼食を抜いた時に、急激な空腹感が過ぎ去ったあと集中力が増し仕事のパフォーマンスが上がったことを経験されたことがあるかもしれません。

 断食とは、「母なる自然の中の手術台」とも言われ、ケガをした動物は、食を断ちじっと安静にして回復を待ちます。また、生物は、冬眠、生殖(発情期)や変態などの生命活動に断食をフル活用しています。
 我々人間も、毎日、空腹である睡眠中にからだの組織の合成・修復が行われているのはよく知られています。さらに断食をすると、体内のエネルギー源が「糖」からが「ケトン体」に切り替わります。このケトン体は、健康長寿をもたらす、疲れ知らずのスタミナがつく、集中力を生み出す、脳を落ち着かせ「心のデドックス」になるなどの効果が考えられています。
 最近の地球環境の悪化という点から考えても断食は有効です。残念ながら、現在我々の口に入る食材は、ほとんどがいろんな有害物質に汚染されています。断食は、有害物質が体内に入るのを防ぐだけでなく、体内から排出する効果も指摘されています。現代人に必要なのは、「足し算の栄養学」よりも、「引き算の栄養学」かもしれません。
 さらに、断食は、現代医療との共存も可能です。そもそも一日三食になったのは明治時代以降であり、それまでは一日二食が当たり前でした。休日に一食抜く手軽な方法から、医師の指導のもと三~七日間断食する本格的なものまであります。

 断食の基本的な手順をご説明します。断食とは、体に溜まった老廃物・毒素を排出し、本来の解毒力・免疫力を復活させる体の大掃除のプログラムです。
【準備期間(3~5日前)】玄米・野菜を中心とした穀菜食にします。
【当日】良質の水と断食用ジュースを朝昼晩に分けて摂ります。断食用ジュースは、最低限のカロリーを確保しつつ、細胞のリセットに不可欠なビタミンやミネラルを豊富に含んだものになります(例〔一人一回分〕、:イチゴ100g+レモン半分+豆乳80ccをジューサーで混ぜる)。水分といっても、コーヒー、紅茶、カフェイン入りのお茶、清涼飲料水、アルコールはダメです。
【復食期(1~3日間)】消化のよいお粥などで胃腸を慣らしていきます。

 さて、断食を成功に導くには、断食期ではない普段の食生活も重要です。
一つは、糖質依存からの脱却です。白米、パン、めん類には糖質が非常の多いため、主食は玄米やもち麦など食物繊維の多い穀類への変更や豆類などが望ましいです。野菜をしっかり摂ることも必要です。二つめは、カルシウムよりマグネシウムをしっかり摂ることの重要性です。理想的には、カルシウムとマグネシウムの摂取比は、2:1がよいとされますが、多くの人がカルシウム過剰になっています。マグネシウムは、未精製の穀物や青菜類、豆類や藻類、種実類に多く、不足するのは、精白した穀物、リンの多い動物性食品(消化管での吸収を妨げる)、飲酒(マグネシウム排泄を増やす)、ストレスなどです。三つ目は、魚油、亜麻仁油、えごま油などに含まれるω3脂肪酸を摂ることです。さらに、適度な運動(ヨガ・散歩など)に取り組むことも相乗効果を期待できます。

 断食は、減量目的ではなく、悪いものをとらず身体の解毒パワーを取り戻す手段の一つです。さらに空腹時間を増やすことにより、グレリンが分泌され、それにより成長ホルモンが出て新陳代謝が活発になり、若返り効果も期待できます。
 皆様も、時には是非、小食や断食にトライしてみてください。


参考文献:「死ぬまで元気に生きるための七つの習慣―自然的生活のすすめ―」 山田豊文 山と渓谷社
     「夫婦で楽しむ、ファスティング入門」 山田豊文、船瀬俊介 三五館
     「体が生まれ変わる「ケトン体」食事法」 白澤卓二 三笠書房


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