某劇場の楽屋に、某俳優さんを訪ねて行った時のことです。
楽屋入り口では、
面会する人間の名前と(複数の場合は代表者で可)、
面会に行く出演者の名前を申告します。
ここでたぶん出演者が、
「そんなやつぁ知らん」
と言ったら、通してもらえないまま帰ることになるのでしょう。
私も友達2人と、名前を告げて、
訪ねる俳優さんの名前も告げて、
入り口に並んで待っていました。
その時、私たちの横をすり抜けて、
楽屋へ入って行こうとする女性が2人。
劇場スタッフが、彼女たちを止めて、
「お名前と、どなたにご面会かをおっしゃってください」
と言いました。
片方の女性が露骨に嫌な顔をして、
「ま~だいちいち、こんなことしなくちゃいけないの!?」とか、
「なんで私が、こんな扱いを受けるわけぇ?」とか、
顔パスで通れないことに、深く憤っておられるご様子。
はてさて。
しかし、劇場スタッフも、そのへんに出て来ている出演者も、
そこに並んでいる私たちも、
「この人、誰なんだろう?」
という感じでした。
前に、同じ楽屋を訪ねた時に、
N・Mさんも、K・Mさんも、(ともに元四季の女優さん)
ちゃんと名前を言って並んでいたのに。
「私を誰だと思ってるの」
「そんな手順、踏ませずにさっさと通しなさいよ」
・・・という怒りに溢れた彼女の顔は決して美しくなかったし、
何より、人間として恥ずかしい。
みっともないし、カッコ悪い。
何かひとつの職業に就いている人間が、
(役者? 医者? 作家?)
特別扱いされてしかるべきだなんて、
しかも、自分自身が特別扱いされたいだなんて、
そうとう、恥知らずでなきゃ持てない願望だ。
狭い世界だもの。
それほどの大物なら、私だって存じ上げていますわよ。
あなたより後にやって来た、
元宝塚のS・Jさんには、
のれんから顔をのぞかせただけで、すぐに気づいたもの。
宝塚ファンでなくても、ですよ。
すんなり名前を告げて、案内されるのを待てば、
どんなにスマートに見えるかわからないのに、
ああいう鈍感な人でも、芝居ってできるものなのね。
芝居が好きなんじゃなくて、
「女優をやっている私」が好きなんだね、きっと。
びっくりした上に、ものすごくおもしろかったので書いちゃいました。
どこで、誰に、
自分のみっともない言動を聞かれているか、
わからないものだよね。
私も気をつけよう。
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