漆黒の王子 (角川文庫)初野 晴角川書店(角川グループパブリッシング)このアイテムの詳細を見る |
タイトルに惹かれ(懲りない)、めずらしく国内ミステリ『漆黒の王子』を、読みました。
初野晴さん、もちろん初めて読む作家さんです。
第22回 横溝正史ミステリ大賞を、『水の時計』という作品で受賞され、作家デビューをされたようです。
今作は、そのミステリ大賞受賞後に書かれた長編小説、第一作目です。
あらすじは
ある地方都市で勢力を拡げる暴力団藍原組の組員が、一人、また一人と不審死を遂げていた。
その遺体には、殺傷された傷もなく、検視の結果、体内から毒物の痕跡も見つからず、眠るように亡くなっていた。
しかし、組員が亡くなるたびに、組長代行紺野と紺野の右腕高遠のもとに、“ガネーシャ”と名乗る人物から、Eメールが一通届いていた。
そのEメールの送信者名は、一通ごとに違っており、王子(prince)、時計(watch)、墓(grave)などの英語表記で、件名には、eta、zetaなどのギリシア数字が英語表記されたものだった。
そして、何よりもEメールの本文が、暴力団に送りつける脅迫文とは思えないものだった。
それは、中世ヨーロッパの詩文のように書かれており、要は「命が惜しければ眠るな、睡眠を差し出せ」という内容だった。
“ガネーシャ”と名乗る人物の目的とは・・・
この作品、序章を読んだ時点で、内容が「おっ、重っ!!」って思って、読むのが憂鬱になったのですが、本編が始まったら、面白くて、ぐいぐいと最後まで一気に読んでしまいました。
暴力団が出てくる作品ですから、そこには凄惨な暴力シーンも描かれていて、グロいの苦手な自分は、ちょっと読みながら、目を瞑りたくなるって感じだったのですが(読めないじゃん)、本編の中にファンタジーっぽく(?)描かれている部分があって、そこがあったからこそ、読みきることが出来たように思いました。
登場人物、紺野も高遠も、そして“ガネーシャ”にも、感情移入できるというか、こういう風になってしまうのも、「ムリもないよなぁ」と思える、説得力のある作品でした。
(高遠の心の捻じ曲がり方は、王子の説明で理解できた感が強い・・・かな?)
とても、登場人物たち一人一人の深層心理まで、深く深ーく描かれているなぁと思いました。
とても読み応えのある作品で、すごい読ませる作家さんだと思います。
ミステリーに、うまくファンタジーを取り込んでいる作家さんのようです。
他の作品も読んでみたいと思うのですが、あとがき(?)の作品紹介文を読むと、青春ミステリーみたい・・・苦手分野
デビュー作
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これは、装丁だけ見ると読まないかな・・・
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