Matthewの映画日記?

Matthewの独断と偏見に満ちたお気楽日記

ICO イコ -霧の城-  上 ・下  / 宮部みゆき

2010-12-26 22:34:48 | '10 読書
宮部みゆきの『ICO イコ -霧の城-』上・下巻を読みました。



ICO-霧の城-(上) (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社


このアイテムの詳細を見る




ICO-霧の城-(下) (講談社文庫)
宮部 みゆき
講談社


このアイテムの詳細を見る




あらすじは、

イコは、生まれたときから頭に角の兆しがあった。そのため、生母・家族から引き離され、村長夫婦に育てられた。それが、村のしきたりであり、角の兆しを持って生まれたニエの子としての運命だったから。ニエの子だとしても、村長夫婦は愛情を持って、育ててくれたし、村の子たちと共に、普通に幸せに暮らしていた。しかし、13才になった時、兆しであったイコの角は、立派な角へと突然、変化した。そして、それは、イコのニエの子としての役目を果たす時でもあった。角の生えたイコは、逃げられぬよう村外れの岩屋に、ニエとして差し出されるまで、閉じ込められることになった。閉じ込められる前、継父である村長に連れられて、イコは禁忌とされる北の山の果てへと連れて行かれ、自分のニエとしての役目を果たさなければならない理由を、その目に突きつけられる。もとより、自分の運命を受け入れていたイコではあったが、突きつけられた真実に、ニエとしての役目の重大さを知る。神官一行到着の日、村長から一枚の衣服を試着させられる。それは、継母オネが特殊な文様を織り上げたものであったが、いままでのニエの子が着たものとは違うのだという。村長は「これが、お前を守ってくれる。お前は希望だ。」とつぶやく。神官一行が到着し、先ほど着た服を神官から着せられ、イコは旅立ちの時を迎えた。そして、神官一行に連れられて来た霧の城で、ニエの子として、イコを待ち受けていたものとは・・・


感想は、

敬遠していた宮部みゆき作品ですが、知り合いに薦められて読み始め、以前ほどには敬遠をしなくなりました。
アニメ映画「ブレイブ・ストーリー」が結構良かったので、この『ICO イコ -霧の城-』もファンタジーということで購入して読んだのですが、内容は、宮部作品らしく、胸に突きつける真実を読者自身がどう受け止めるか(選ぶか)といった命題が与えられています。
実際、イコの取る道が正しいとは思いますが、他の選択肢を選んだとしても、イコを責めることは出来ないでしょう。
人間の弱さや狡さといった面と、愛情・友情・勇気といった面などは、いろいろな形で、とても上手く書きあげられていました。
(この辺も、宮部作品らしいですね)
ただ、この作品は、ゲームソフト『ICO』が先にあり、ゲームを気に入った宮部みゆきさんが、ゲームのノベライズ版として、書きあげたものなのだそうです。
だからなのか、『ブレイブ・ストーリー』の時のような良さを、自分は感じませんでした。
やはり、大筋は、ゲーム内容を踏襲しなければならないわけで、だからなのか、イコが自由に動いている感じがしなかったからかもしれません。
ファンタジー作品ということで、『ブレイブ・ストーリー』のような良さを期待して読んでいたので、自分的には残念な作品でした。
ゲームソフト『ICO』をプレイして読んでみると、また違った感想になったかもしれません。



ICO PlayStation 2 the Best

ソニー・コンピュータエンタテインメント


このアイテムの詳細を見る






blogram投票ボタン  ←よろしかったら、ポチッと!!

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い


愛書家の死 / ジョン・ダニング

2010-12-07 05:09:18 | '10 読書

愛書家の死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 タ 2-10)
ジョン・ダニング
早川書房


このアイテムの詳細を見る




以前にも書いた元警察官で古書店主のクリフ・ジェーンウェイが活躍するシリーズの最新刊『愛書家の死』を読みました。



あらすじは、

先月亡くなったアイダホ州の牧場主で資産家の代理人と名乗るウィリスという男から「蔵書の鑑定を頼みたい」と電話がかかって来た。会って話を聞くと「蔵書の鑑定とともに、過去に奪い去られた本の行方を捜してくれ」と頼まれる。最初は、ウィリスの尊大な態度に依頼を断るクリフだったが、資産家の娘から新たに「20年前に事故死として亡くなった母の死の真相をつかんでほしい」と頼まれ、娘の依頼を受け、真相を探るクリフだったが、20年前の事件とともに明らかになった本の行方とは・・・


感想は

相変わらずの古書(今回は児童書)の蘊蓄や、ストーリーも面白かったです。
今回は、20年前の死の真相を掴むため、クリフは競馬界に潜入(?)するのですが、作者も競馬界に一時期、身を置いたことがあるそうで、競馬レースの舞台裏を詳しく描かれていて、興味深かったです。
犯人探しも、いずれもひと癖もふた癖もあるような人物たちで、最後の最後まで、クリフ同様に引っ張られました。
今作で、クリフと恋人のエリンとの間が、ぎくしゃくしてくるのですが、クリフはどっちの道を選ぶのか、今後が楽しみです。

あとがきに書かれていましたが、作者の体調不良により長期療養を取っていたため、新作は、まだ発刊されていないようですが、現在は体調も回復し、新作に取りかかっていると書かれていました。
早く、次回作が読みたいなぁ~。




既刊のクリフ・ジェーンウェイシリーズはこちら↓

死の蔵書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン ダニング
早川書房


このアイテムの詳細を見る



幻の特装本 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン ダニング
早川書房


このアイテムの詳細を見る



失われし書庫 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン ダニング
早川書房


このアイテムの詳細を見る



災いの古書 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョン ダニング
早川書房


このアイテムの詳細を見る




blogram投票ボタン  ←よろしかったら、ポチッと!!

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い



タッチ / ダニエル・キイス

2010-09-29 19:00:49 | '10 読書
読みかけだった本の一冊目、ダニエル・キイスの『タッチ』読み終わりました。


タッチ (ダニエル・キイス文庫 15)
ダニエル・キイス
早川書房


このアイテムの詳細を見る





あらすじは、

バーニーとカレンは、子供を欲しがる、どこにでも居る夫婦だった。バーニーの勤めている会社では、社の方針で、通勤の際、車のシェアを推奨しており、バーニーは、近くに住む別部署に勤めるマックス・プラーガーと一日おきの交代で、お互いの車の相乗りをしていた。ある日、マックス・プラーガーの勤める実験棟で、作業中に事故が起こったのだが、その事故が、バーニーとカレン夫婦を知らぬところで、不幸へと導いていた。そして、そんな中、あれほど熱望していた新たなる生命をカレンは宿すのだが・・・


感想は、

ダニエル・キイスと言えば「アルジャーノンに花束を」の作者です。
「五番目のサリー」、実在した24もの多重人格者を書いた「24人のビリー・ミリガン」と読みましたが、この「タッチ」という作品は、「アルジャーノンに花束を」のあと、「五番目のサリー」の前に書かれましたが、日本では、未刊行だった作品なのだそうです。


内容は、バーニーには全く関係のない部署で起きた会社での事故により、バーニーとカレンの夫婦が、会社や世間と戦っていくストーリーなのですが、途中から(最初から?)、神経質で芸術家肌なバーニーの精神的苦悩や弱さ、出来る姉に対するコンプレックスからか、自分に自信のないカレンが、逆境の中、念願の妊娠をすることにより、強くなっていく姿が描かれていきます。読んでいて、バーニーの現実逃避がとっても嫌だったのですが、最後は、悲しいですが、不幸により離れていた二人の心が、強く結ばれる結果となっていました。

作中に起こる事故は、放射性物質による目に見えない脅威のため、とっても怖いです。

作品のあとがきにも、世界中で起きた、いくつかの放射性物質の在処が行方知れずになった事件や盗難事件の事例が何件か載せられていました。
日本の民間企業のいずれかの中にも、作中の中で使用されたような高度な実験機器を使っている企業や医療機関も、きっとあり、本当に微量のため、そのものを掲げず、事故が起こり、作中と同じように、何も知らずに街なかに拡まってしまう危険性はあるのかも知れないと思いました。



著者最新刊

預言 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
ダニエル・キイス
早川書房


このアイテムの詳細を見る




ダニエル・キイスと言えば、これ!! 日本でも、ユースケ・サンタマリア主演でTVドラマ化されています(自分、見てませんが)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)
ダニエル キイス
早川書房


このアイテムの詳細を見る




ビリー・ミリガンの別人格時の写真や描いた絵なども載っていて、多重人格者は確かにいるのだと、確信出来た作品。

24人のビリー・ミリガン〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)
ダニエル キイス
早川書房


このアイテムの詳細を見る



24人のビリー・ミリガン〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)
ダニエル キイス
早川書房


このアイテムの詳細を見る





blogram投票ボタン  ←よろしかったら、ポチッと!

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い


暗闇 上・下/コーディ・マクファディン

2010-08-15 02:59:30 | '10 読書

暗闇 上 (ヴィレッジブックス)
コーディ ・マクファディン
ヴィレッジブックス


このアイテムの詳細を見る



暗闇 下 (ヴィレッジブックス)
コーディ ・マクファディン
ヴィレッジブックス


このアイテムの詳細を見る





読みかけの本が2冊もあるにもかかわらず、新たに購入して読み始めた『暗闇 上・下』読み終わってしまいました。

あらすじは、

FBI捜査官スモーキー・バレットは、ロサンゼルス支局長とともに本来居るべきはずではないヴァージニア(管轄外)にいた。有無を言わせず、支局長に連れてこられたスモーキーは、死体安置所のスチール製の台に横たわる一人の女性の遺体の前に立っていた。もう一度支局長に「なぜ、ここにいるのか?」と尋ねたとき、死体安置所の扉が開き、ラスバンFBI長官が入って来た。被害者は、高度1万メートルの旅客機の中でシートに座ったまま殺害されていた。それにしても、長官自らが出てくるほどとは思えなかったが、遺体にかけられたシーツを下にめくられたとき、女性と思っていたその遺体が、男性だったことを知る。その遺体の人物は、次期合衆国大統領に一番近い大物政治家の娘(性転換した息子)リサ・リードだと告げられ、内密に捜査してほしいと言うのだ。そして、スモーキーを指名したのは、同じく子供の命を奪われるという経験したことがあるという理由で、遺族であるリサの母親の強い希望なのだという。母親の強い希望を聞き、納得したスモーキーは、事件の捜査を始めるのだが、手掛かりは、奇妙な右脇腹の刺し傷と、刺し傷の中に残されていた十字架しかなかった。そして、犯人の残した十字架には、143と数字が刻まれていた。もしも、数字が被害者の数を表しているのならば、ものすごい数の連続殺人事件となる。部下チームとともに、リサの捜査に当たっていたスモーキーは、リサの自宅から犯人のメッセージを受け取る。そこには、次の殺人を仄めかす文言が記されていた。そして、新たな被害者が見つかるのだが・・・




感想は、

好きなジャンルのストーリーなので、一気に上・下巻読んでしまいました。
この作品、装丁が心神喪失/ジリアン・ホフマンと酷似していたため、ジリアン・ホフマンの新作と思い、購入してしまいました(気をつけて、前二作は買わなかったのに・・・)

今作は、コーディ・マクファディンのスモーキー・バレット捜査官シリーズの三作目にあたります。
作中に、前二作について語られる(回想される)シーンが何度かありましたので、より楽しむには、前二作を読んでからの方が楽しめるかもしれません。
ストーリーも面白かったですし、事件の捜査状況も楽しめましたし、スモーキーと組んでいるチームのメンバーも、それぞれにキャラが立っていて、楽しかったです。
FBI捜査官作品でしたが、ちょくちょくFBIに関した単語(クワンティコとか)が出てきて、海外TVドラマ『クリミナル・マインド』が好きな人には、本当に楽しめる作品だと思います。
キャラは違いますが、なんとなく、チームメンバーがリード達に似た雰囲気があり、頭の中で置き換えて読んでる感がありました。

作中で語られる前二作の事件は、スモーキー自身に降りかかった事件で、スモーキー自身にかなり悲惨な結果をもたらしています。
結構、グロそうで、読みたいような読みたくないようなです。
読んだ感じは、女性作家かと思ったのですが、あとがきを読んでみたら、男性作家でした。
コーディって名前は、言われてみれば、男性名か・・・
あとがきにも書かれていましたが、女性キャラの心理描写が、とても男性が書いたものとは思えないほど、巧みに描かれていました。



傷痕(きずあと)〈上〉 (ヴィレッジブックス)
コーディ マクファディン
ヴィレッジブックス

このアイテムの詳細を見る


傷痕(きずあと)〈下〉 (ヴィレッジブックス)
コーディ マクファディン
ヴィレッジブックス


このアイテムの詳細を見る



戦慄〈上〉 (ヴィレッジブックス)
コーディ マクファディン
ヴィレッジブックス


このアイテムの詳細を見る



戦慄 下 (ヴィレッジブックス F マ 9-4)
コーディ・マクファディン
ヴィレッジブックス


このアイテムの詳細を見る





blogram投票ボタン  ←よろしかったら、ポチッと!!

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い

沼地の記憶 / トマス・H・クック

2010-06-06 01:11:08 | '10 読書
トマス・H・クックの『沼地の記憶』を読みました。
トマス・H・クック、名前は知っていましたが、作品を読むのは初めてです。


沼地の記憶 (文春文庫)
トマス・H. クック
文藝春秋


このアイテムの詳細を見る





あらすじは、

1954年、レークランド高校で教職をしている私(ジャック・ブランチ)は、まだ24才で、恵まれた星の下に生まれたため、世の中の本当の悪というものを知らなかった。
この当時のレークランドは、まだ人種や階級によって、街の中がはっきりと線引きされていた。
私の教えていたレークランド高校は、私が育ったような支配者階級の子女が通うような学校ではなく、普通の労働者・低賃金層の子女が通う高校だった。
それでも、私は父の教えていたこの高校で、父と同じく教職に就いたことを誇りに思っていた。
レークランド高校に勤めて3年、私は注意散漫な生徒たちが学業に関心を持つように、ある特別授業を行っていた。それは、「悪について」というクラスだった。
本に描かれる、過去の伝記や、実際に行われた数々の非道な事件について、拷問について描かれた絵画や写真を使い、かれらの関心を誘いながら、世の中には自分たちが決して犯すことのないほどの邪悪な行為を行う人々(悪)が存在していると教えようと思ったのだ。そして、それは育ちによって、失われているかれら自身の自己評価を一段高めることが出来ると思ったからだった。

そのクラスには、いつも教室の後ろにぽつりと一人で座る男子学生がいた。
彼の名は、エディー・ミラー。
まじめな生徒だが、自分に自信がなく、いつもおどおどびくびくして、クラスにも馴染めずにいた。
そして、私が、彼が遠巻きにされる本当の理由を知ったのは、同じクラスで校内一の美少女シーラ・ロングストリートの失踪事件が起きたときだった・・・




感想は、

最初のうちは、私(ジャック・ブランチ)の行う特別授業が嫌で、なかなか読み進まなかったのですが、シーラの失踪事件が起きたあたりから、面白くなってきました。
私の与えた「悪人について」の課題を生徒たちが、取り組むあたりで、エディーの課題を書き上げるための過程が面白かったです。
私ことジャック・ブランチは、悪い人ではないですが、育ちが良いための世間知らず(自身を良い教師という時点でダメな人と思う)で、「悪について」の授業で“悪”について教えていますが、それはたくさんの書物から得た知識であって、本当の意味での人の中にある“悪”というものを理解していませんでした。
良家の子息である私は、階級に捉われ、人を見下すことはしていませんが、無意識の高慢というか、私が思い描く、善い人を演じている感が、ありました。
ただ、私が、自分の父とエディーが親密になって行く過程で、嫉妬・猜疑心に捉われて、エディーを悪人とした架空の物語をでっち上げ、授業で、生徒たちに物語の主人公(エディー)を悪人だと認めさせ、自身に賛同を得ようとするシーンで、私が、どれだけ世間知らずかがわかるシーンでは、笑ってしまいました。生徒たちの意見が、普通の正しい意見だと思います。

最後は、なんとも言えない結末でしたが、一番可哀そうなのは、エディーですね。
私に、散々振り回されたあげく、未来の可能性まで奪われた気がします。
読後感は、あまり良いものではなかったです。



blogram投票ボタン  ←よろしかったら、ポチッと!!


↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い