昭和28年生まれの4人の少年のその後を追った物語。
『スタンドバイミー』みたいだといった人がいましたが
前半はそんな感じです。
ノブ・ケン・マサ・タクの4人は兵庫県の小畑村出身ですが、
小学校6年生の時4人の内のノブは滝で転落死してしまいます。
そのことに双子のケンは罪悪感を抱き続けます。
ケンとタクは早稲田に進学し、マサと東京で再会します。
その後バブル景気の時、
マサは不動産屋、ケンは大手銀行員、タクはフリーライターとして
再会することになるのですが…。
表紙が「ピエタ」なので、題名と併せて考えるとおおよその見当がつきます。
第一部が「原罪」で、第二部が「贖罪」
クリスチャンからすると、これでもか!っていう目次ですが、
内容はそんなに、というより、ほとんどキリスト教的ではありません。
『スタンドバイミー』や『エデンの東』では、
優秀な兄が亡くなりお馬鹿な弟が残るという
「カインコンプレックス」が出てきたと思いますが、
これは反対の優秀な兄が生き残ってしまって罪悪感を持つというと、
その時点で私にはどうもしっくりきません。
地方出身の方の結束力の強さは想像できますが、
マサとケン・タクの結びつきは、
もっと年上の人ならそうかと思いますが、
私より数歳上でこんなに強いものなのだろうかと
不思議な気もします。
また当時の大学生の風俗等は良く再現されているとは思うものの、
大学生の恋の相手が同じ女子大学生ではなく、
キャバレーのホステスさんや、ソープ嬢っていうのも、
私からすると、何だかず~と年上の人の話に感じてしまいます。
多分作者はバブル期の狂乱じみた時代(第二部)を書きたくて
その前提として第一部を書いたのでしょうが、
法律的な罪と、宗教的な罪って違うと思うし、
「罪を憎んで人を憎まず」という精神風土の日本で
金融犯罪を罪人とは単純に呼びにくいような気がしてなりませんでした。
折角骨子が良いのに、肉付けに失敗したように感じて残念でした。