marcoの手帖

永遠の命への脱出と前進〔与えられた人生の宿題〕

世界のベストセラーを読む(809回) (その7)大江健三郎の慕う渡辺一夫教授はあの評論家と東大の同窓だった

2021-02-22 00:23:36 | 小説

◆東大にもあまたの知られざる多くの先生がたが居られるにもかかわらず、渡辺一夫教授は、これまた、彼によって多くの読者に知られる方となった。実はこの先生は、あの彼をコケにした評論家小林秀雄と東京大学で同窓なのである。大江は、渡辺先生に晩年まで導いていただいたという。先生は、彼の小説の内容には全く関心なかったようだったが・・・。大江健三郎は、先の本の『六章 引用には力がある』に次に述べるような言葉を残している。そして、それは、前のブログにも書いたように誰でもが自分の人生を主体的に生きる希望を与えてくれるものではないだろうか、無論、人により微々たるものではあるだろうけれど。◆****「私にとって自分の小説家としての人生に有効な実際の教示をあたえられたのが、大学で教わったのみならず最晩年まで導いてくださった渡辺一夫教授だった。・・・ジャーナリズムの評価というか、端的に彼らのきみへの態度は、すぐにも変わるものでアテにならない。批評家の先生がたのきみへの対し方も同じ。彼らは偉い人たちだから、とくに! きみは自分の仕方で生きてゆかねばなりません。小説をどのように書いていくかは僕にはわかりませんが、ある詩人、作家、思想家を相手に、三年ほどずつ読むということをすれば、その時々の関心による読書とは別に、生涯続けられるし、少なくとも生きていく上で退屈しないでしょう! ・・・・それからの私の人生の原則は、この先生の言葉だった。」(p103) とある。◆僕らは地上に生を受けて、必然と短い人生をおくるわけだから、そして、僕らの知り得なかった先人たちの物語を聞くそのDNAが身体の中にわずかでも残されているのだから(サルトルはこの辺を全く認めない。信仰なんぞは持たない。存在の極限まで自己を見つめるというか、人の肉体と思考を剥がす思考をするように僕には思われるのだが、この辺がベルグソンを読んでたあの評論家には分からなかったのだろうけれど)その個々人の人生に於いて自分なりの物語を死ぬまで紡いでいく(誰でもがそうできる)、彼にとっては誰もが小説家になれるだろうと言っていることなのだ。少なくとも死ぬまで退屈しないでしょう・・・と。



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