1月11日（祝）午後、1月5日から始まった福岡市美術館の「ソシエテ・イルフは前身する〜福岡の前衛写真と絵画」を観覧しました。写真愛好家や写真史研究家の間では密かに話題となっている写真展です。
戦時下の福岡、カフェ・ブラジレイロなどを集いの場として活動を続けたメンバーと会友の濃い作品群の1987（昭和62）年以来となる企画展。今回は本ブログの過去記事からご縁をいただき、イルフ会友であることが判明した収集資料（渡辺清次郎＝渡辺與三氏撮影写真群）の写真貸与＆新資料発掘解析への情報提供など、展示の企画を少々お手伝いさせていただきました。
過去記事「戦前の福岡アマチュアカメラマン作品群が素晴らし！」2015年
上の写真はイフル会友であったことが判った渡辺清次郎（與三）氏の撮影写真です。50点余の写真の中からイルフ的な前衛写真、写真コンクールでの入選作品を展示いただきました。私自身はアーカイブ資料を兼ねる、撮影場所がわかる写真が好きなので上の写真が構図を含めていい写真だなと思っています。以下の写真を含めて、前衛写真的な大胆な構図が魅力です。
渡辺清次郎氏は博多総鎮守・櫛田神社前の社家町で「神代醤油」という醤油蔵を経営されていた渡辺與三氏であることが、今回調査いただき判明しました。「渡辺」「神代（かみよ）」の名から推測できる通り、「渡辺通り」渡辺與八郎氏を排出した紙与呉服店（現・紙与産業）の渡辺一族で與八郎氏の姉（長姉・コト）の系統です。
渡辺氏は、イルフの中心的メンバーだった高橋渡氏らと1936（昭和11）年に「福岡ローライ倶楽部」を結成し、カメラ雑誌への写真投稿や展示会を積極的に行っていました。イルフ結成の1939（昭和14）年頃にはすでに戦争で応召されていたようです。
今回は、事前に完成した図録や招待券をいただき楽しませていただきました^_^。
イルフのことやメンバーの詳細が展示会および図録でわかりましたが、私が入手している膨大な戦前期（1930〜40年代）の様々なパンフレットや写真帖、卒業アルバムなどにイルフ的な写真が掲載されていることに気づき、改めて整理を始めています。
福岡市は藩政時代から写真師（福岡藩士・古川俊平＝古川写真館）がいて、明治後期には多彩な写真館がありました。日本最初のスクープ写真家・大崎周水氏（土居町角の大崎周水堂の初代で絵葉書の発行元）をはじめ、戦前に海外・ロンドンの写真サロン等でも評価された写真家・安本南陽とその父・江陽（西町筋、旧蔵本町の安本写真館）の存在を含めて、改めて体系的な収集研究と写真ミュージアム開設が必須だなと感じます。
過去記事「福岡最初の写真師、東中洲「古川写真館」撮影」2012年
「博多が誇る名写真家の記事を喜ぶ！」2009年
とりあえず、収集した膨大な写真資料の中からイルフ絡みで「渡辺清次郎氏」撮影写真のアーカイブスを近々公開します。
ちょうど福岡市博物館の有馬学館長が昨春「新興写真と福岡のメディア〜歴史と同時代性の交錯」をコラム発表（2020年3月25日刊行「市史研究ふくおか第15号」）され、イルフの高橋渡と合わせて投げかけをされているので、これからの研究が楽しみです。このコラムの中で私が本ブログに過去記した「安本南陽」に関する記事も参照いただ感謝です。
追伸：イフルは「古い」の逆さ読みから名付けたそうですが、メンバーが集ったカフェ・ブラジレイロの奥様に伺い、高橋渡氏が住んでいた千代町に「イルフビル」があることを知りました。
記念フォトブック「福ビルと天神の60年〜さよなら福岡ビル・再開発記念フォトグラフ」残数わずか！
LOVE FM 76.1MHz 「JAL九州歴史ロマン街道」2020年4月より9月まで第２クール放送（毎月第3・第4・第5土曜日13:00〜13:30）。コロナ禍の影響で一旦放送は終了されました。
新刊Vol.24「天神大牟田線80th 歴代車両図鑑」等フォトブックシリーズ全27冊通販ページ
にしてつWebミュージアム（企画構成を担当）
西日本鉄道創立110周年記念誌『まちとともに、新たな時代へ』第１部は「天神発展史」
アーカイブ画像ライブラリー（アンティーク絵葉書に観る懐かしの風景・町並みアーカイブス）
KBC「栄光の西鉄ライオンズ」DVD紹介の特設ページ（企画構成・台本・監修を担当）
