2098 作者未詳 2011-09-30 | 巻十 秋雑歌 奥山尓 住云男鹿之 初夜不去 妻問芽子乃 散久惜裳 奥山に 棲むといふ鹿の 夕さらず 妻どふ萩の 散らまく惜しも 「山奥に、棲息するシカが、夕方ごとに(山を下りて)、恋して求めたハギ(の花)が、散ってしまうのが残念だよ」
2097 作者未詳 2011-09-29 | 巻十 秋雑歌 鴈鳴之 来喧牟日及 見乍将有 此芽子原尓 雨勿零根 雁(かり)がねの 来鳴かむ日まで 見つつあらむ この萩原に 雨な降りそね 「カリガネが、飛来して鳴く日まで、眺めていた、このハギの原に、雨よ降らないで」
2096 作者未詳 2011-09-28 | 巻十 秋雑歌 真葛原 名引秋風 毎吹 阿太乃大野之 芽子花散 真葛原(まくずはら) 靡(なび)く秋風 吹くごとに 阿太(あだ)の大野の 萩の花散る 「クズが一面に生える原を、ひるがえるような秋風が、吹くごとに、阿太の広い野に(咲いた)、ハギの花が散るよ」
2095 柿本人麻呂歌集 2011-09-27 | 巻十 秋雑歌 夕去 野邊秋芽子 末若 露枯 金待難 夕されば 野辺の秋萩 うら若み 露にぞ枯るる 秋待ちかてに 右二首柿本朝臣人麻呂之歌集出 「夕方になると、野のほとりのハギは、芽が出たばかりなので、露にあたって枯れてしまう。秋を待つまでもなく」 右の二首は、柿本朝臣人麻呂の歌集に出る
2094 柿本人麻呂歌集 2011-09-26 | 巻十 秋雑歌 詠花 竿志鹿之 心相念 秋芽子之 鍾礼零丹 落僧惜毛 さを鹿の 心相思(こころあひおも)ふ 秋萩の しぐれの降るに 散らくし惜しも 花を詠む 「“小牡鹿の” 心に互いに思います。“秋萩の” 時雨れが降るので、(ハギの花が)散ってしまうのが惜しいです」