万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1672 作者未詳

2010-07-31 | 巻九 雑歌
黒牛方 塩干乃浦乎 紅 玉裾須蘇延 徃者誰妻

黒牛潟(くろうしがた) 潮干の浦を 紅の 玉裳裾引き 行くは誰(た)が妻


「黒牛潟の、干潮の浦を“紅の”美しい衣装の裾をひいて、歩くのは誰の奥さんだろう?」

●黒牛潟:和歌山県海南市黒江

1671 作者未詳

2010-07-30 | 巻九 雑歌
湯羅乃前 塩乾尓祁良志 白神之 礒浦箕乎 敢而滂動

由良の崎 潮干にけらし 白神の 礒の浦廻を あへて漕ぐなり


由良の崎の、潮が引いたので、“白神の”磯辺の湾曲した場所を、敢えて漕ぐのだ」

1670 作者未詳

2010-07-29 | 巻九 雑歌
朝開 滂出而我者 湯羅前 釣為海人乎 見反将来

朝開き 漕ぎ出て我れは 由良(ゆら)の崎 釣りする海人を 見て帰り来む


「夜が明けて、(船を)漕ぎ出した私は、由良の崎にて、釣りをする漁師を、見て帰りたいものだ」

1669 作者未詳

2010-07-28 | 巻九 雑歌
三名部乃浦 塩莫満 鹿嶋在 釣為海人乎 見變来六

南部(みなべ)の浦 潮な満ちそね 鹿島なる 釣りする海人(あま)を 見て帰り来む


「南部(みなべ)の浦の、潮よ満ちないで。鹿島へ(渡って)つりをする漁師を、見て帰りたいのだ」

1667 作者未詳

2010-07-27 | 巻九 雑歌
大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首

為妹 我玉求 於伎邊有 白玉依来 於伎都白浪

妹がため 我(あ)れ玉求む 沖辺なる 白玉寄せ来 沖つ白波

右一首上見既畢 但歌辞小換 年代相違 因以累戴


701(大宝元)年・辛丑・冬10月。太上天皇大行天皇、紀伊国に幸(いでま)しし時の歌十三首

「妻のために、私は真珠を求めている。沖のあたりの、真珠を(打ち)寄せておくれ、沖の白波よ」

右の一首は、上に見るには既に畢(おわ)るか。但し、歌の辞(ことば)は小(すこ)し換わり、年代は相違える。因って、以ち累(かさ)ねて戴せる