万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1915 作者未詳

2011-03-31 | 巻十 春相聞
寄雨

吾背子尓 戀而為便莫 春雨之 零別不知 出而来可聞

我が背子に 恋ひてすべなみ 春雨(はるさめ)の 降るわき知らず 出でて来しかも


雨に寄せる

「私の夫に、恋して仕方がありませんでした。“春雨の”降っていることも知らずに、(外に)飛び出して来てしまいました」

1914 作者未詳

2011-03-30 | 巻十 春相聞
戀乍毛 今日者暮都 霞立 明日之春日乎 如何将晩

恋ひつつも 今日は暮らしつ 霞立つ 明日の春日(はるひ)を いかに暮らさむ


「(会えない妻に)恋(心)を募らせて、今日(一日)を過ごしてきた。霞がかかる、明日の春の一日を、どのようにして過ごせばよいのか」

1913 作者未詳

2011-03-29 | 巻十 春相聞
見渡者 春日之野邊 立霞 見巻之欲 君之容儀香

見わたせば 春日(かすが)の野辺(のへ)に 立つ霞 見まくの欲しき 君が姿か


「(あたりを)見渡しても、春日の野辺に、霞が立って(何も見えない)。見たい(と願うのは)、きみの姿なのだ」

1912 作者未詳

2011-03-28 | 巻十 春相聞
霊寸春 吾山之於尓 立霞 雖立雖座 君之随意

たまきはる 我が山の上に 立つ霞(かすみ) 立つとも居(う)とも 君がまにまに


「“たまきはる”我が(故郷の)山の上に、立つ霞。(霞が)立ちのぼるとも停滞しようとも、(それは)きみ(天)のままに」

1911 作者未詳

2011-03-27 | 巻十 春相聞
左丹頬經 妹乎念登 霞立 春日毛晩尓 戀度可母

さ丹つらふ 妹を思ふと 霞立つ 春日(はるひ)もくれに 恋ひわたるかも


「“さ丹つらふ”妻を思えば、霞がかかる、春の一日も暮れて。(この)恋は超えてゆくよ」