2281 作者未詳 2012-03-31 | 巻十 秋相聞 朝露尓 咲酢左乾垂 鴨頭草之 日斜共 可消所念 朝露に 咲きすさびたる 月草の 日くたつなへに 消(け)ぬべく思ほゆ 「朝の露に、咲くにまかせた “月草の” 日がたつにつれ、(その恋心が)消えてゆくように思われます」
2280 作者未詳 2012-03-30 | 巻十 秋相聞 芽子花 咲有乎見者 君不相 真毛久二 成来鴨 萩の花 咲けるを見れば 君に逢はず まことも久(ひさ)に なりにけるかも 「ハギの花が、咲いているのを見れば、きみに会えぬまま、(過ぎた日々が)まことに久しく、なってしまったと(思えてならない)」
2279 作者未詳 2012-03-29 | 巻十 秋相聞 吾郷尓 今咲花乃 娘部四 不堪情 尚戀二家里 我が里に 今咲く花の をみなへし 堪(あ)へぬ心に なほ恋ひにけり 「わたしが住む里で、いま咲いているのは、オミナエシ。耐える心で、なお恋しつづける」
2278 作者未詳 2012-03-28 | 巻十 秋相聞 戀日之 氣長有者 三苑圃能 辛藍花之 色出尓来 恋ふる日の 日長(けなが)くしあれば 我が園の 韓藍(からあゐ)の花の 色に出でにけり 「恋にふける日が、長く続いたのか、私の庭園の、ケイトウの花のように、表に出てしまいました」
2277 作者未詳 2012-03-27 | 巻十 秋相聞 左小壮鹿之 入野乃為酢寸 初尾花 何時加 妹之手将枕 さを鹿の 入野のすすき 初尾花(はつをばな) いづれの時か 妹が手まかむ 「“小牡鹿の” 入り込んで奥深い野原のススキの(群生から)、(今年)初めてのススキの花が咲いたな。いつになるのだろう、あの娘と抱き合えるのは」