2250 作者未詳 2012-02-29 | 巻十 秋相聞 春霞 多奈引田居尓 廬付而 秋田苅左右 令思良久 春霞 たなびく田居に 廬つきて 秋田刈るまで 思はしむらく 「春に立つ霞が、たなびく農村の、農作業小屋に泊まりこんで。イネを収穫するまで、いろいろと考えているのだ」
2249 作者未詳 2012-02-28 | 巻十 秋相聞 鶴鳴之 所聞田井尓 五百入為而 吾客有跡 於妹告社 鶴(たづ)が音(ね)の 聞こゆる田居に 廬りして 我れ旅なりと 妹に告げこそ 「ツルの鳴き声が、聞こえる農村に、(作業小屋を建てて)そこに住んでいる。(ツルよ)『きみの夫は旅に出ているよ』と、(僕の)妻に伝えてくれないか」
2248 作者未詳 2012-02-27 | 巻十 秋相聞 秋田苅 借廬作 五目入為而 有藍君□ 将見依毛欲得 秋田刈る 刈廬(かりいほ)を作り 廬りして あるらむ君を 見むよしもがも 「秋の田を刈るために、粗末な農作業小屋を建てて、そこで寝泊りして、いるあなたに、お会いする方法がありません」
2247 作者未詳 2012-02-26 | 巻十 秋相聞 秋田之 穂向之所依 片縁 吾者物念 都礼無物乎 秋の田の 穂向きの寄れる 片寄りに 我れは物思(ものも)ふ つれなきものを 「“秋の田の” 穂の向きが一方に、片寄っている。私は(あのひとに)物思いをする。全くつれないものだ」
2246 作者未詳 2012-02-25 | 巻十 秋相聞 秋田之 穂上置 白露之 可消吾者 所念鴨 秋の田の 穂の上に置ける 白露の 消ぬべくも我(わ)は 思ほゆるかも 「“秋の田の” 穂の上に降りた “白露の” 消えてゆくんだと私は、そう思えるんです」