万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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2311 作者未詳

2012-04-30 | 巻十 秋相聞
皮為酢寸 穂庭開不出 戀乎吾為 玉蜻 直一目耳 視之人故尓

はだすすき 穂には咲き出ぬ 恋をぞ我(あ)がする 玉かぎる ただ一目のみ 見し人ゆゑに


「“はだすすき” 決して表に出ない、恋をわたしはしています。“玉かぎる” ただ一度だけ、妻問いに来てくださったひとなのです」

2310 作者未詳

2012-04-29 | 巻十 秋相聞
旋頭歌

蟋蟀之 吾床隔尓 鳴乍本名 起居管 君尓戀尓 宿不勝尓

こほろぎの 我(あ)が床の辺(へ)に 鳴きつつもとな 置き居つつ 君に恋ふるに 寐(い)ねかてなくに


旋頭歌

「コオロギが、わたしの寝床のあたりで、しきりに鳴いています。寝床に身を横たえながら、あなたを想像して、寝付かれないでいます」

2309 作者未詳

2012-04-28 | 巻十 秋相聞
譬喩歌

祝部等之 齊經社之 黄葉毛 標縄越而 落云物乎

祝(はふり)らが 斎(いは)ふ社(やしろ)の 黄葉も 標縄越えて 散るといふものを


比喩歌

「神職らが、崇め奉る神社の、もみじの葉も、しめ縄を越えて、散るというものを」

2308 作者未詳

2012-04-27 | 巻十 秋相聞
雨零者 瀧都山川 於石觸 君之摧 情者不持

雨降れば たぎつ山川 岩に触れ 君が砕かむ 心は持たじ

右一首不類秋歌而以和載之也


「“雨降れば” 山間の渓谷をたぎり流れる川が、岩にぶつかって、きみの心を砕くような、そんな(残酷な)心は持ってはいないよ」

右の一首は、秋の歌に類しない。しかし、和なるを以(も)ちてこれを(掲)載するなり

2307 作者未詳

2012-04-26 | 巻十 秋相聞
於黄葉 置白露之 色葉二毛 不出跡念者 事之繁家口

黄葉(もみちば)に 置く白露の 色端(いろは)にも 出でじと思へば 言の繁けく


「もみじの葉に、白露が降りれば、わずかな顔色にも、(この思いを)出さないようにと思っています。噂がわずらわしいがために」