2159 作者未詳 2011-11-30 | 巻十 秋雑歌 影草乃 生有屋外之 暮陰尓 鳴蟋蟀者 雖聞不足可聞 蔭草(かげくさ)の 生ひたる宿の 夕影に 鳴くこほろぎは 聞けど飽かぬかも 「物陰に草が、生えた自宅(の庭)で、夕日の中で、鳴くコオロギ(の声)は、(何度)聞いても飽きないものだ」
2158 作者未詳 2011-11-29 | 巻十 秋雑歌 詠蟋 秋風之 寒吹奈倍 吾屋前之 淺茅之本尓 蟋蟀鳴毛 秋風の 寒く吹くなへ 我が宿の 浅茅(あさぢ)が本(もと)に こほろぎ鳴くも 蟋(こおろぎ)を詠む 「“秋風の” 寒く吹くなか、私の自宅の(庭に生える)、チガヤの根本では、コオロギが鳴いているよ」
2157 作者未詳 2011-11-28 | 巻十 秋雑歌 詠蝉 暮影 来鳴日晩之 幾許 毎日聞跡 不足音可聞 夕影に 来鳴くひぐらし ここだくも 日ごとに聞けど 飽かぬ声かも 蝉を詠む 「夕日(の中)に、(飛んで)来て鳴くヒグラシよ。こんなにも、毎日聞いても、飽きない声だ」
2156 作者未詳 2011-11-27 | 巻十 秋雑歌 足日木乃 山之跡陰尓 鳴鹿之 聲聞為八方 山田守酢兒 あしひきの 山の常蔭(とかげ)に 鳴く鹿の 声聞かすやも 山田守(やまたも)らす子 「“あしひきの” 山の暗い陰で、鳴くシカの、声を聞いたのか。山の田を(けものから)守る若者よ」
2155 作者未詳 2011-11-26 | 巻十 秋雑歌 秋芽子之 開有野邊 左壮鹿者 落巻惜見 鳴去物乎 秋萩の 咲たる野辺に さを鹿は 散らまく惜しみ 鳴き行くものを 「“秋萩の” 咲いた野辺では、牡鹿が、(花が)散るのを惜しんで、鳴きとおしているよ」