万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

teacup.ブログ“Autopage”から引っ越してきました。

2350 作者未詳

2012-06-08 | 巻十 冬相聞
寄夜

足桧木乃 山下風波 雖不吹 君無夕者 豫寒毛

あしひきの 山のあらしは 吹かねども 君なき宵は かねて寒しも


夜に寄せる

「“あしひきの” 山の嵐は、吹いてはいませんが、あなたがいない夜は、今までずっと寒かったのです」

2349 作者未詳

2012-06-07 | 巻十 冬相聞
寄花

吾屋戸尓 開有梅乎 月夜好美 夕々令見 君乎祚待也

我が宿に 咲きたる梅を 月夜(つくよ)よみ 宵々見(よひよひみ)せむ 君をこそ待て


花に寄せる

「我が家(の庭)で、咲いたウメを、月がきれいな夜に、毎晩見てほしいのです。あなた(のお越し)をお待ちしています」

2348 作者未詳

2012-06-06 | 巻十 冬相聞
和射美能 嶺徃過而 零雪乃 □毛無跡 白其兒尓

和射見(わざみ)の 嶺行き過ぎて 降る雪の いとひもなしと 申せその子に


「和射見の、峰を(超えて)行くと、降る雪は(厭わしいが)、(おまえのもとに通うのは)厭わしくもないと、伝えておくれよあの少女(ひと)に」

●和射見:阜県不破郡関ケ原町関ケ原

2347 作者未詳

2012-06-05 | 巻十 冬相聞
海小船 泊瀬乃山尓 落雪之 消長戀師 君之音曽為流

海人小舟(あまをぶね) 泊瀬(はつせ)の山に 降る雪の 日長く恋ひし 君が音ぞする


「“海人小舟” 泊瀬の山に、降りしきる雪のように。長い間恋していた、あなたが(わたしを訪ねて闇夜に)足音が聞こえてきます」

2346 作者未詳

2012-06-04 | 巻十 冬相聞
窺良布 跡見山雪之 灼然 戀者妹名 人将知可聞

うかねらふ 跡見山雪(とみやまゆき)の いちしろく 恋ひば妹が名(な) 人知らむかも


「“うかねらふ” 跡見の山に(積もった)雪が、はっきり目立つように、愛する女の名前が、他人に知られてしまうでのではないだろうか」

●うかねらふ:窺狙(うかねら)う 狩りで獣などが通った跡を見て獲物をねらうところから「跡見(とみ)」にかかる