K先生にお会いするため、横浜に出向いた。信仰や学問の傾向は異なるものの、K先生は大福先生にとって大学時代から知る兄貴であり、私にとっては恩人の先生でもある。多忙な時間を割いていただき、急きょお会いすることになった。私がK先生にお会いしたかったのは、近況報告を兼ねて、かつての日本組織神学会の様相などをお聞きしたかったことと、現在のキリスト教界についてK先生がどのようにお感じになっているのかを拝聴したかったからだ。
私の話に誠実に対応して下さる先生の寛容は相変わらずで、いろいろと実り多い話を伺うことができた。しかしそれ以上に有難かったのは、大福先生の存命時以上にK先生が私を励まして下さることである。このような有難い体験は、K先生からに限ったことではないのではあるが。
率直なところ、大福先生が亡くなったとなれば豆大福との関わりもそれで終わり、とされることが多いのだろうと思っていた。実際、そういう現実もある。ただ、今の私には、その現実を不快と思うことがあっても辛い悲しいという感覚がない。そのような繊細な感情を生み出す機能が、私の脳内では壊死しているのかもしれない。
K先生の教会から歩いて桜木町あたりまでくると、潮の匂いが漂ってきた。ああ、横浜に来たんだなあ、と実感する。みなとみらいで遅めの昼食の後、横浜美術館で松井冬子展を観る。画がとても上手い。日本画の明るい未来が彼女に託されているようにも思える。斬新であり、真摯であり。でも観ているうちに、作品に込められた生と死のリアリズムへの飽くなき固執に、お腹いっぱいになってきてしまった。きっと、松井氏と私とでは抱いている世界観が異なっているのだろう。
ミュージアムショップで、cochae『伝統こけしのデザイン』という写真集に出会う。帯はさくらももこ氏が書いていることからも想像しやすいと思うが、伝統こけしの正統的な紹介本でありながら、ポップでかわいい造りに仕上がっている。帯に小さくあるところによれば、さくらももこ氏もこけしコレクターなのだろうか?!でも彼女の作品を考えてみれば、脈絡は容易につく。関連で、かねがねさくら氏に聞いてみたいことがある。「さくらさん、あなた、北斎を、とくに北斎漫画を師としていませんか?」と。なぜなら私は観たことがあるのだ。「ちびまる子ちゃん」中のキャラのひとり永沢君そっくりの、玉ねぎ頭キャラが北斎漫画に描かれているのを。ちなみに大福先生もさくらさんの作品は大好きだ。ほのぼのなんだけど皆どこか変、的な、要するにキャラ立ちが極めて優れた作風を、テレビや漫画で味わっていた。この出会いで、またさくらさんとの距離が縮まった。こちらからの勝手なアプローチだけど。
美術館を出て、整備された海沿いの歩道をひたすら歩く。山下公園の埠頭に係留されている氷川丸をみていつもどおりしばらく感慨に耽り、そろそろあたりが暗くなってきた頃、中華街へ。路地の、客引きをしないお店にホッとするものを感じて、そこでご飯を食べる。帰路、聘珍樓のあんまん小を買い食いし、石川町から各駅停車で池袋まで出る。各駅列車のおかげで車中勉強も結構はかどった。無味乾燥な勉強は車中が一番いい。
私の話に誠実に対応して下さる先生の寛容は相変わらずで、いろいろと実り多い話を伺うことができた。しかしそれ以上に有難かったのは、大福先生の存命時以上にK先生が私を励まして下さることである。このような有難い体験は、K先生からに限ったことではないのではあるが。
率直なところ、大福先生が亡くなったとなれば豆大福との関わりもそれで終わり、とされることが多いのだろうと思っていた。実際、そういう現実もある。ただ、今の私には、その現実を不快と思うことがあっても辛い悲しいという感覚がない。そのような繊細な感情を生み出す機能が、私の脳内では壊死しているのかもしれない。
K先生の教会から歩いて桜木町あたりまでくると、潮の匂いが漂ってきた。ああ、横浜に来たんだなあ、と実感する。みなとみらいで遅めの昼食の後、横浜美術館で松井冬子展を観る。画がとても上手い。日本画の明るい未来が彼女に託されているようにも思える。斬新であり、真摯であり。でも観ているうちに、作品に込められた生と死のリアリズムへの飽くなき固執に、お腹いっぱいになってきてしまった。きっと、松井氏と私とでは抱いている世界観が異なっているのだろう。
ミュージアムショップで、cochae『伝統こけしのデザイン』という写真集に出会う。帯はさくらももこ氏が書いていることからも想像しやすいと思うが、伝統こけしの正統的な紹介本でありながら、ポップでかわいい造りに仕上がっている。帯に小さくあるところによれば、さくらももこ氏もこけしコレクターなのだろうか?!でも彼女の作品を考えてみれば、脈絡は容易につく。関連で、かねがねさくら氏に聞いてみたいことがある。「さくらさん、あなた、北斎を、とくに北斎漫画を師としていませんか?」と。なぜなら私は観たことがあるのだ。「ちびまる子ちゃん」中のキャラのひとり永沢君そっくりの、玉ねぎ頭キャラが北斎漫画に描かれているのを。ちなみに大福先生もさくらさんの作品は大好きだ。ほのぼのなんだけど皆どこか変、的な、要するにキャラ立ちが極めて優れた作風を、テレビや漫画で味わっていた。この出会いで、またさくらさんとの距離が縮まった。こちらからの勝手なアプローチだけど。
美術館を出て、整備された海沿いの歩道をひたすら歩く。山下公園の埠頭に係留されている氷川丸をみていつもどおりしばらく感慨に耽り、そろそろあたりが暗くなってきた頃、中華街へ。路地の、客引きをしないお店にホッとするものを感じて、そこでご飯を食べる。帰路、聘珍樓のあんまん小を買い食いし、石川町から各駅停車で池袋まで出る。各駅列車のおかげで車中勉強も結構はかどった。無味乾燥な勉強は車中が一番いい。