それで、ユーカリスティアのニュースレター最新号冒頭で触れたが、ハルドール・ラクスネス『極北の秘教』(原題:『氷河の下のキリスト教』)である。この小説の英語訳の読者たちのレビューを眺めると、翻訳についての不満はあったが小説そのものに関しては好意的なものがほとんどのようだ。この小説を私自身が要約したり紹介するのは極めて困難なので、アマゾンの紹介欄の記事をとりあえず、訳しておこう。
「桂冠を授けるに値するハルドール・ラクスネスの小説『氷河の下で』は、ユニークな傑作である。この世的でもあり、あの世的でもある、奇妙に挑発的な小説だ。最初に、スナイフェル氷河の牧師にかけられたいくつかの疑い――中でも、死者の埋葬を行わないようだ、など――について調査するようにと、アイスランドの司教が若い使者を派遣する。しかし使者がそこで理解したのは、この職務放棄が少々風変わりとみなされるに過ぎない、ということである。この共同体は世界の中心とみなされており、そこでは創造が進行中のものであると考えられている。たとえば、板でドアを打ち付けられた教会について、どう考えればよいのか。教会の隣に建っている怪しげな建物については?あるいは、プリームス牧師が馬の蹄鉄嵌めにほとんどの時間を費やしていることは?あるいは、牧師の妻ウーアが風呂に入ったことがない、食べたことがない、眠ったことがない、とうわさされていることについては?ありそうにないことの上にありそうにないことを積み上げて、『氷河の下で』は難解であると同時に魅力的な幻想を呼び起こしながら、ワイルドでありながらそのワイルドぶりを見せつけない喜劇に満ち溢れている。」
タオイズムとキリスト教、幽霊、サガ(中世期、アイスランドの叙事詩)、UFOや宇宙のなにやらとの交信……、アイスランドの習俗も、小説の中にいろいろと取り混ぜられている。話は尽きない。これから先、読むたびに新しい発見や理解が得られそうな小説なのである。
首都のレイキャヴィックといえば今までは、1987年のゴルバチョフ・レーガンの会談が思い出されるくらいの認識しか私にはなかった。その時も、中距離核戦力全廃条約調印へと続く、そして東西の冷戦終結をもたらすことになった歴史的な会談を成功させたアイスランドに私は好印象を抱いたものだが、その後、私の中の「アイスランド」は眠りに就いていた。そしてあの会談から約20年後の今、再び「アイスランド」が私を突き動かしている!
人口が、とても少ない。30万人の国だ。この数は、私が育った練馬区の現在の人口の、半分以下だ。アイスランドでは、生きている人間の人口よりも、幽霊の数の方が多いそうだ。北欧諸国の例に漏れず、税が高い。それでも人々が豊かなのは、高い税金に見合った保障が、生活上さまざまに得られているからだろう。氷の国で、火(火山)の国である。地熱でエネルギーを捻出している。エコロジーで注目されている国でもある。何よりも、平和である。この地球上で、わが国の憲法9条、またはそれに類する精神が実際に生かされ、地域の平和に貢献している場所が、私が思い当たる限りでは4箇所ある。アイスランドが、その一つである。アイスランドは人口が少ないから、軍隊を持ちたくとも持てないだろう。それでこれまでは、国防はもっぱらアメリカ軍頼みであったが、最近では、アメリカ軍とNATOの撤退を求める抗議行動も行われているようだ。
ラクスネスからアイスランドの話になってしまった。どちらも当分、熱く、そして静かにハマリそうである。
「桂冠を授けるに値するハルドール・ラクスネスの小説『氷河の下で』は、ユニークな傑作である。この世的でもあり、あの世的でもある、奇妙に挑発的な小説だ。最初に、スナイフェル氷河の牧師にかけられたいくつかの疑い――中でも、死者の埋葬を行わないようだ、など――について調査するようにと、アイスランドの司教が若い使者を派遣する。しかし使者がそこで理解したのは、この職務放棄が少々風変わりとみなされるに過ぎない、ということである。この共同体は世界の中心とみなされており、そこでは創造が進行中のものであると考えられている。たとえば、板でドアを打ち付けられた教会について、どう考えればよいのか。教会の隣に建っている怪しげな建物については?あるいは、プリームス牧師が馬の蹄鉄嵌めにほとんどの時間を費やしていることは?あるいは、牧師の妻ウーアが風呂に入ったことがない、食べたことがない、眠ったことがない、とうわさされていることについては?ありそうにないことの上にありそうにないことを積み上げて、『氷河の下で』は難解であると同時に魅力的な幻想を呼び起こしながら、ワイルドでありながらそのワイルドぶりを見せつけない喜劇に満ち溢れている。」
タオイズムとキリスト教、幽霊、サガ(中世期、アイスランドの叙事詩)、UFOや宇宙のなにやらとの交信……、アイスランドの習俗も、小説の中にいろいろと取り混ぜられている。話は尽きない。これから先、読むたびに新しい発見や理解が得られそうな小説なのである。
首都のレイキャヴィックといえば今までは、1987年のゴルバチョフ・レーガンの会談が思い出されるくらいの認識しか私にはなかった。その時も、中距離核戦力全廃条約調印へと続く、そして東西の冷戦終結をもたらすことになった歴史的な会談を成功させたアイスランドに私は好印象を抱いたものだが、その後、私の中の「アイスランド」は眠りに就いていた。そしてあの会談から約20年後の今、再び「アイスランド」が私を突き動かしている!
人口が、とても少ない。30万人の国だ。この数は、私が育った練馬区の現在の人口の、半分以下だ。アイスランドでは、生きている人間の人口よりも、幽霊の数の方が多いそうだ。北欧諸国の例に漏れず、税が高い。それでも人々が豊かなのは、高い税金に見合った保障が、生活上さまざまに得られているからだろう。氷の国で、火(火山)の国である。地熱でエネルギーを捻出している。エコロジーで注目されている国でもある。何よりも、平和である。この地球上で、わが国の憲法9条、またはそれに類する精神が実際に生かされ、地域の平和に貢献している場所が、私が思い当たる限りでは4箇所ある。アイスランドが、その一つである。アイスランドは人口が少ないから、軍隊を持ちたくとも持てないだろう。それでこれまでは、国防はもっぱらアメリカ軍頼みであったが、最近では、アメリカ軍とNATOの撤退を求める抗議行動も行われているようだ。
ラクスネスからアイスランドの話になってしまった。どちらも当分、熱く、そして静かにハマリそうである。