先週の土曜日21日のNHKスペシャルで、「神の数式、宇宙の方程式を探せ」という番組を放送していた。
この世の全てのことを単純な美しい数式で表そうとする試みを、全世界の物理学者が100年に渡って追求し続けているという。
電子、2種類のクォーク、ニュートリノ、原子核そして話題のヒッグス粒子にまつわる話だ。
自然界には電磁気力、弱い核力、強い核力そして重力の4つの力がある。
これらの力を、数学の方程式で表すという試みがある程度成功している。
最初に電子の動きに注目して粒子の動きを数式で明快に表したは、ケンブリッジ大学の「ポール・ディラック」。
物理学でいうところの美しさ、対称性を追い求めて「ディラック方程式」に行き着いた。
この数式は電子だけでなく、まだ発見されていなかったクォークやニュートリノの動きまで完全に表すことができるという素晴らしいものだった。
物理学者たちはこの方程式を初めて見た時、あまりの美しさに涙を流すという。
電磁気力を数式で表すことに成功したのは、アメリカの「ロバート・オッペンハイマー」。
作り上げた数式が表したのは、原子核と電子の間の電磁気力を光が媒介しているという驚くべき事実だった。
質量のない光子が、電子と核との間をつないで力を生み出しているのだと言う。
この理論では粒子の質量が無限大になってしまうという問題が起きたが、日本人朝永振一郎の研究によって解決される。
オッペンハイマーは物理学のあらゆる部門に精通したとんでもない天才だったらしい。
時代は戦争へと向かい、彼は原子爆弾の開発責任者になる。
原爆は完成するが、これは最先端の理論物理学が最も早く実用化された例ではないだろうか。
戦後「原爆の父」というありがたくない称号を与えられてしまう。
弱い核力、強い核力の謎を解いたのは中国人の物理学者チェンニン・ヤン。
だがこの数式では粒子の質量がゼロになってしまい、実験の結果との矛盾を指摘される。
南部陽一郎が提唱した「自発的対称性の破れ」という理論によってこの矛盾も解決される。
なんだか難しい言葉だが、対称性が破れることで質量が生まれるという意味らしい。
質量ゼロの問題を、イギリスの物理学者ピーター・ヒッグスが提唱した「ヒッグス粒子」によって説明したのがアメリカのワインバーグ。
宇宙誕生の直後は全ての粒子に質量がなく、光速で飛び回っていた。
その後、といっても10のマイナス13乗秒後に全ての空間がヒッグス粒子で満たされ、その効果によりいろんな粒子に質量が生まれたのだと言う。
ヒッグス粒子が存在しなければ、この世界は成立しなかったことになる。
一昨年スイスにある「欧州原子核研究機構(CERN)」が、新しい素粒子を発見した。
全周 27kmもある大型ハドロン衝突型加速器による実験の結果である。
CERN(セルン)という名はどこかで聞いたなと思っていたが、「シュタインズ・ゲート」というアニメに出てきた。
タイムマシンを開発して人類の未来を支配する悪役だ。
本当にあるとは知らなかった。
今年になって、この粒子が「ヒッグス粒子」である可能性が高まったと発表された。
ワインバーグから40年後の、「神の粒子」の発見である。
人間はまた一歩、「神の方程式」の完成に近づいたわけだ。