◆「旅の終わりの音楽」
タイタニック号沈没の時、最後まで演奏し続けた楽団員の話。
とはいっても、メンバーは作者の創造されたもので、タイタニックという状況を借りているだけだ。史実と虚実が、見事に一体化していてこの上もなく美しい模様を描いている。
七人の楽団員のうちの5人のタイタニックにいたるまでの話がメインになっているのだが、私は最初のリーダーの話が胸に響いた。
ともあれ、この小説にこれ以外のタイトルはないし、これ以上のタイトルもない。このタイトルが全てを集約しているし、これ以上語ることも必要ではない。
そして、そういうタイトルを得ることのできた小説というのは、それだけで幸福なのだとも思う。