期待以上の舞台でした。なんといっても二人とも見目麗しい。ヴィシニョーワは舞台向きの美人ですし、マラーホフの脚の長さや細さなんて、日本人男性にはまず100%ありえません。テクニック以前でおお、と感心させちゃうなんて、ずるいとすらいえるかも。それにテクニックと演技力が加わるわけですから、よい舞台でないはずがありません。
ヴィシニョーワといえば、もう10年以上前になるローザンヌ・バレエ・コンクールの時に踊ったカルメンが強烈なせいか、妖艶なイメージがあります。『ラ・バヤデール』のニキヤ、『マノン』のマノン、あるいは勝気で華やかな『ドン・キホーテ』のキトリなんてぴったり。『ジュエルズ』のルビーもきっとにあうでしょう。
でも、ジゼルはどうかなあ......という心配とは裏腹に、なんとも可憐雰囲気で第1幕で登場。何をやってもかわいい。そして一途で純粋。登場のときの愛らしさといったら。パドドゥもかわいいし、コンクールでよく踊られるソロも愛くるしい。そして、とても純真。狂気から死に至るまでの演技はいろいろあるんですけど、ヴィシニョーワのジゼルはいったん母の腕に抱かれながらも、最終的にはアルブレヒトの腕に飛び込み、死んでいくんです。だまされたってわかっても、決して嫌えないし、うらむことはできないんですね。かわいそうなジゼル。
こんな死に方をするもんですから、二幕でミルタを初めとするほかのウイリーから懸命にアルブレヒトを守ろうとする姿に説得力がありました
1幕の軽やかさにも目をみはったんですが、2幕は夢のよう。空気のなかをふわ、ふわ、とただようようなかんじなんです。徐々に脚を上げていくディベロッペ、助走を伴わないスーブルソー、シソンヌといったジャンプも体重がないかのよう。口をぽかんとあけて見ほれてしまいました。
また、マラーホフのサポートがうまいの。アルブレヒトとジゼルはふれあいそうでふれあわない(だって、ジゼルは死んじゃってるんですからね)ていう設定なので、リフトも、白鳥やらドンキ、眠りやロミオとジュリエットあたりのように、どうだ、すごいだろ、この二人の息のあったテクニックを見よ、というふうなリフトにはなりません。アルブレヒトが後にまわって、ジゼルがひとりでに浮かぶみたいなリフトをするんですね。リフトって力技でしょ。なのに、まったくそう見えない。ふ~っと浮かんで、ふわっと降りるかんじ。アラベスクでポーズをとるときのサポートもそうですね。とにかく二人でウイリーの世界を作り出していました
マラーホフの演技も好ましかったですねえSwan Magazine Vol 4にのっていたインタビューによると、「ジゼルに対するアルブレヒトの感情は、初めは気まぐれ、ちょっと危険なゲーム、もちろん少しはラブもあったかもしれないけれど、やがて本気になり、感情が深まる。それに彼自身が気づく」(p.12)ということだったんですが、はじめから軽薄なプレイボーイというかんじではなかったです。ジゼル同様、一途に見えたのは気のせいかしら。バチルダがでてきたときも動揺してるみたいだったし。少なくともジゼルが狂気に陥るあたりなんかはすっかり本気になってしまったみたいで、ジゼルから目をまったく離さないの。そして一幕ラストから二幕にかけての嘆きようなど、ナルシズムぎりぎり。でも許せるんですよ。あまりに痛々しくて。あれじゃあ、守ってあげようという気になっても不思議はありますまい
ミルタあたりのソロは食い足りないところがあったのですが、ウイリーの群舞はとてもよかったです。統一性があって、美しいのに不気味で。ロマンチック・チュチュってきれいですよね。それにポアントって、ウイリーやシルフィードなどの役のためのもの、とつくづく感じました。薄暗い舞台では、地上につかずに浮かび上がっているみたいですもん。
セットも美しかったし、衣装もよかったです。ジゼルの衣装はピンク系でまとめてあり、よくみるバッテンのような紐をアクセントにした素朴な雰囲気の村娘衣装とは異なる洗練されたもの。ヴィシニョーワにはにあっていました。アルブレヒトがもっていた黒いマントも印象的でした。しょっぱなにそれをはおってでてくるんですが、なにか不吉でね。二幕で同じマントに身を包んで白い百合をもって登場するのも、絵として非常に美しい。黒と白のコントラストに、大輪の百合が似合うマラーホフ。またマントをはずす動きが優美で目が離せませんでした 何をやっても麗しいアルブレヒトでしたねえ。
ラストもなんとも印象的。ジゼルがアルブレヒトの命乞いのため、ミルタの前にもっていき、落とした百合をまた拾い上げ、ジゼルの墓前にもっていったあと、少しずつ百合を落としていき、落とし終わったところでアルブレヒトは倒れます。百合といえば、純粋、高貴、聖母のイメージ......ジゼル=百合というイメージでないような気はしたんですが、やはり、ジゼルの象徴なんでしょうか。それをすべて落とし、しかも墓からも距離をあけてしまう意味ってのは...と一夜たった今も考え込んでいます。
とにかくよかったので、ヴィシニョーワとマラーホフの組み合わせでもう一度見てみたいもの。やっぱりDVDを手に入れるべきでしょうかね。いやいや、他のダンサーが踊るジゼルもみたい、と、しばらくジゼルが念頭から離れそうもないのでした
ヴィシニョーワといえば、もう10年以上前になるローザンヌ・バレエ・コンクールの時に踊ったカルメンが強烈なせいか、妖艶なイメージがあります。『ラ・バヤデール』のニキヤ、『マノン』のマノン、あるいは勝気で華やかな『ドン・キホーテ』のキトリなんてぴったり。『ジュエルズ』のルビーもきっとにあうでしょう。
でも、ジゼルはどうかなあ......という心配とは裏腹に、なんとも可憐雰囲気で第1幕で登場。何をやってもかわいい。そして一途で純粋。登場のときの愛らしさといったら。パドドゥもかわいいし、コンクールでよく踊られるソロも愛くるしい。そして、とても純真。狂気から死に至るまでの演技はいろいろあるんですけど、ヴィシニョーワのジゼルはいったん母の腕に抱かれながらも、最終的にはアルブレヒトの腕に飛び込み、死んでいくんです。だまされたってわかっても、決して嫌えないし、うらむことはできないんですね。かわいそうなジゼル。
こんな死に方をするもんですから、二幕でミルタを初めとするほかのウイリーから懸命にアルブレヒトを守ろうとする姿に説得力がありました
1幕の軽やかさにも目をみはったんですが、2幕は夢のよう。空気のなかをふわ、ふわ、とただようようなかんじなんです。徐々に脚を上げていくディベロッペ、助走を伴わないスーブルソー、シソンヌといったジャンプも体重がないかのよう。口をぽかんとあけて見ほれてしまいました。
また、マラーホフのサポートがうまいの。アルブレヒトとジゼルはふれあいそうでふれあわない(だって、ジゼルは死んじゃってるんですからね)ていう設定なので、リフトも、白鳥やらドンキ、眠りやロミオとジュリエットあたりのように、どうだ、すごいだろ、この二人の息のあったテクニックを見よ、というふうなリフトにはなりません。アルブレヒトが後にまわって、ジゼルがひとりでに浮かぶみたいなリフトをするんですね。リフトって力技でしょ。なのに、まったくそう見えない。ふ~っと浮かんで、ふわっと降りるかんじ。アラベスクでポーズをとるときのサポートもそうですね。とにかく二人でウイリーの世界を作り出していました
マラーホフの演技も好ましかったですねえSwan Magazine Vol 4にのっていたインタビューによると、「ジゼルに対するアルブレヒトの感情は、初めは気まぐれ、ちょっと危険なゲーム、もちろん少しはラブもあったかもしれないけれど、やがて本気になり、感情が深まる。それに彼自身が気づく」(p.12)ということだったんですが、はじめから軽薄なプレイボーイというかんじではなかったです。ジゼル同様、一途に見えたのは気のせいかしら。バチルダがでてきたときも動揺してるみたいだったし。少なくともジゼルが狂気に陥るあたりなんかはすっかり本気になってしまったみたいで、ジゼルから目をまったく離さないの。そして一幕ラストから二幕にかけての嘆きようなど、ナルシズムぎりぎり。でも許せるんですよ。あまりに痛々しくて。あれじゃあ、守ってあげようという気になっても不思議はありますまい
ミルタあたりのソロは食い足りないところがあったのですが、ウイリーの群舞はとてもよかったです。統一性があって、美しいのに不気味で。ロマンチック・チュチュってきれいですよね。それにポアントって、ウイリーやシルフィードなどの役のためのもの、とつくづく感じました。薄暗い舞台では、地上につかずに浮かび上がっているみたいですもん。
セットも美しかったし、衣装もよかったです。ジゼルの衣装はピンク系でまとめてあり、よくみるバッテンのような紐をアクセントにした素朴な雰囲気の村娘衣装とは異なる洗練されたもの。ヴィシニョーワにはにあっていました。アルブレヒトがもっていた黒いマントも印象的でした。しょっぱなにそれをはおってでてくるんですが、なにか不吉でね。二幕で同じマントに身を包んで白い百合をもって登場するのも、絵として非常に美しい。黒と白のコントラストに、大輪の百合が似合うマラーホフ。またマントをはずす動きが優美で目が離せませんでした 何をやっても麗しいアルブレヒトでしたねえ。
ラストもなんとも印象的。ジゼルがアルブレヒトの命乞いのため、ミルタの前にもっていき、落とした百合をまた拾い上げ、ジゼルの墓前にもっていったあと、少しずつ百合を落としていき、落とし終わったところでアルブレヒトは倒れます。百合といえば、純粋、高貴、聖母のイメージ......ジゼル=百合というイメージでないような気はしたんですが、やはり、ジゼルの象徴なんでしょうか。それをすべて落とし、しかも墓からも距離をあけてしまう意味ってのは...と一夜たった今も考え込んでいます。
とにかくよかったので、ヴィシニョーワとマラーホフの組み合わせでもう一度見てみたいもの。やっぱりDVDを手に入れるべきでしょうかね。いやいや、他のダンサーが踊るジゼルもみたい、と、しばらくジゼルが念頭から離れそうもないのでした
素晴らしい舞台ということが、ありありと伝わってきました。うらやましい限りです。バレエは子供時代に8年やっていたのでとても好きですが、ニュージーランド在住なので、なかなか世界一流の舞台を見る機会はありません。
ただ、なんといういうか、日本より生活に密着している感じがします。子供たちが習うバレエは、英国のロイヤルアカデミーのメソッドが導入されていて(日本でも取り入れているところがあるようですが)、日本でいう、華道や茶道という感じがします。
今度、ニュージーランドロイヤルバレエが12月にジゼルを公演するので、今から楽しみにしています。
あと、こちらで教えていただいたSwan Magazineは、私はアマゾンで購入しています!
そういえば、オーストラリアの人が、小さい子が結構バレエを習っている、みたいな話を以前していました。ニュージーランドも同じようなかんじなんでしょうか。姿勢がよくなっていいですよね。ロイヤル方式なら、
日本にはたしかに一流所が来日することは多いですが、見たい舞台は東京どまりが多いです大阪でやるのは白鳥とくるみ割りばかりだったりします。最近はちょっと改善されているかしら。
ニュージーランドロイヤルバレエも、イギリスのロイヤルと同じくドラマ性の強い演目が得意なのでしょうか。年末のジゼル、楽しんでくださいね