始まりは、1972年…
この映画の舞台となるグランドホテルで
主人公が不思議な老女から懐中時計を受け取るところから…。
それから8年後の1980年、
新進気鋭の劇作家となったものの、仕事に行き詰った主人公は、
大学時代に一度だけ訪れたグランドホテルの「歴史ホール」で美しい女優の写真に出会います。
そして、そこから過去に遡ること68年前の1912年、
主人公の劇作家は、女優の活躍していた時代、
1912年にタイムトリップすることを願い、
ついに、実現させます。
そこには、当時一世を風靡した憧れの女優がいて
出逢った瞬間2人は恋に堕ちます。
1972年に初めて出逢った時は男子大学生と老女だった2人が、
1912年、運命の出逢いをして恋に堕ちるのです。
なんともロマンティックなSFですが、
誰も止められない一途な恋の行方を観ている私は、
( 結末はどうなるのだろう…)と思いながら
美しい2人に見惚れ、
この時間が永遠に続けばいいのにと願うのです。
そして、一気に燃え上がった2人に残酷な別れが訪れます。
ポケットから取り出したコインが1979年製造のものであることに気がついた途端、
劇作家は、時空を超えて現代に連れ戻されてしまうのです。
ここまでは、予想どおり。
この後、劇作家はどうなるのか…
気を取り戻して、過去の世界で女優に約束したとおりの作品を書くのかな?
と思ったら、
そうではなく…彼は女優のことが忘れられず
過去の世界に戻りたいと願うあまり、
とうとう寝食も忘れて引きこもり、誰の問いかけにも答えなくなり虚ろな目で空を見続け、
その朦朧とした意識の中で、
女優が手招きしている姿が浮かぶ…という展開に
( これは、ハッピーエンド?
いやいや 、これは現実逃避の物語だ。
仕事に行き詰まった劇作家が神経を病んだあげく
創り上げた妄想なのに違いない。)
…と、現実主義者の私は考えるのであります。
そう思いながらも、
私なら誰に会いに行くかしら?
と、
タイムトリップできた自分を想像し、
( きっと、あの方だわ )
写真を見て、一目惚れした…
明治2年5月11日に亡くなった“あの方”を想うのです。
それにしても…1912年の世界は美しい…、
ゴミだらけのシカゴとは別世界、
まるで絵画を観ているよう…
ジェーン・シーモアと
今は亡きクリストファー・リーヴ、
そして、ラフマニノフのラプソディと
ジョン・バリーの音楽が、
甘く、切ない…映画です。
しみずゆみ ⏳