この頃、我が家の周辺ではカラスが喧しい。
鳥インフルも流行っているので、近くに飛んでくるのは困るが、
朝から大きな声で仲間に何かを知らせるように鳴くのは気味が悪い。
私には、
『モウスグ コノイエノ オオキナイヌガ シヌヨ』
とでも言っているように聞こえるのだ。
Halは、夫が言うように急速に弱っている。
もう自分で立つ事もできないし、
支えてやってようやくヨタヨタと歩くほどだ…。
水を飲めば吐くし、
今まで食べていた流動食でさえ鼻先に近づけても、食べたがらない。
かろうじて今朝は無糖ヨーグルトをひと匙だけ食べた。
口からは粘液性の血の混じった涎が出ている…
昨夜までは庭に連れていくと、オシッコをしていたが、
今朝は、立つ事もできないので紙オムツをしているが、汚れる気配はない…。
ただ、意識はまだある。
今朝もベッドから起きあがろうとするし、
窓辺に移動させてみるとクンクンを鼻先を庭の方へ向けた。
外に出たいのだ。
夫と2人がかりで抱えて、Halのお気に入りの作業小屋の前まで運ぶと、
すぐに、いつものように横になって日向ぼっこをする体勢になった。
私は、その横でキャンプ用チェアを組み立て、
BGM用のBluetoothスピーカーをセットして、
防寒着を着込んで、コーヒーと読みかけの本を開いている…
だけど、
本を読み進めることはない。
読んでいるのは、藤田宜永のハードボイルド小説だが、
頭の中にあるのはHalの事と、Hal亡き後の夫と私のこれからの生活のことだ。
Halが居てくれたおかげで最高に幸せだと感じていたこれまでの生活は、これから、どうなるのだろう…
頭上でカラスが、大きく羽ばたいて飛んでいった…。