天使の図書館ブログ

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動物たちの王国【第一部】-19-

2014-02-08 | 創作ノート
【夜】ジャン=レオン・ジェローム


 今回は本文が短めなので、前文は何を書こうかなと思ったんですけど、実をいうと前回の脳死のことについてもまだ、補足事項はいくつもあるんですよね

 でも結局、脳死のことについてはいくら書いても「答えが出ない」という側面があるので、とりあえず一旦ここで切っておくことにしたいと思いますm(_ _)m

 そんなわけで(どんわけだか)、前に書いてた「褥瘡の思ひ出☆」についてでも、と思ったり(^^;)

 ええと、褥瘡っていうのは床ずれのことなんですけど、普通は「ああハイハイ、床ずれのことね☆」っていうくらいな感じかなと思ったり。

 これ、別に無理して見る必要はまったくないんですけど……ウィキさんの褥瘡のページの下のほうに実際の褥瘡がどんなものかっていう画像があります。

 結構衝撃的(?)というか、グロテスクな画像なので、開いてみて「うえっ!!」と思われた方は、速攻閉じてくださいm(_ _)m

 上の画像はかなりのところ褥瘡の末期状態的なもので、下のほうはまだ正視可能というか、老人福祉施設などで働いてる方だったら「うん、似たようなのなら見たことある」っていうような感じかな、なんて思ったり(^^;)

 上の画像も出来はじめの頃は、下の画像みたいな感じだったと思うんですよね。でもそれを放っておくとどんどんひどくなっていって、上の画像みたいな末期状態になるというか。

 ホームヘルパーの資格を取りにいったりすると、褥瘡のことは必ず教科書などで習うと思うんですけど、そういう写真とか参考的に見せられても、たぶん大抵の方はあまりピンと来ないような気がします

 わたしも2級の資格を取りにいった時、「前にこの褥瘡の写真見て気持ち悪くなった人がいるから、無理しないように」と言って写真を見せられたんですけど……「いやいや、このくらいならまだ全然可愛いほうだから☆」みたいな写真でした(^^;)

 ↑のウィキさんのページでいったら、最初は下の画像くらいだったものが、放っておくと上くらいひどいものになる……って言われても、そこまでひどくなるまで放っておく状態というのが、まず想像できないというか。

 わたしが昔見たことのあるかなりひどい状態の患者さんも、来た時にはすでにお尻にふたつ穴が開いてる状態だったので、「ここまでひどくなるまで放っておくシチュエーション」というのが、まずもって理解できませんでした

 でも、お尻にふたつ穴があいて肉が腐って骨まで見えてるような状態にせよなんにしても――まずは治療しなくちゃなんないということで、寝たきりのそのおばあさんの体を押えてる間、看護師さんが処置をすることに。

 なんていうか、これがまあ、なんとも言えない荒治療!!!

 そのですね……まずは洗浄しなくちゃいけないっていうことで、生理食塩水を患部にぶっかけるのですが、そのおばあさんがもし気管切開してなくて、普通に声を出せたとしたら――「ぎやああああああッ!!」と、間違いなくホラー映画ばりに叫んでいたくらいだと思います。

 寝たきりで気管切開してるとはいえ、きちんと意識のある方なので……処置の間中口を大きく開いて、最後にはふたつの目からは涙がこぼれ落ちていたほどでした

 いえ、体押えてるわたしのほうでも、「これはもしや治療という名の虐待なのでは??」と思ったほどなんですけど、その日以来わたしの頭には褥瘡って、お、恐ろしい……という情報がこの上もなく明確にインプットされたという。。。

 なんていうか、褥瘡の出来はじめって、本当に地味なんですよね。「あれ~?なんか皮膚にちょっと色のついてる場所があるけど、まあいいか」くらいのが、まずは褥瘡のはじまりなのかもって思います。

 もちろんこの時点で「褥瘡の恐ろしさ」をよく知る看護師さんだと、そこだけ特に柔らかめのクッション当てたりとかして、他の人にも注意を促すと思うんですよね。体位交換する時にそこが圧迫されないようにすることも大切だと思うし、この時点でしょっちゅう注意して見て、また元の皮膚の色に戻ってくれるのがベストなのかもしれません。

 でも大抵はもしかしたら、皮膚がめくれるくらいになって、薬塗る必要が出てくるまで不注意にも放っておく……という感じなのかなって思ったり(^^;)

 この時点でもまだ早期発見という感じで、薬塗って上から被覆材当てるような感じですよね、たぶん。でも寝たきりのお年寄りの方の場合特に……傷の治りが遅いとか、そういうのもあってどんどん悪くなってハッと気づいた時にはホラーな世界が待っている……そういうことになってしまうのかもしれません。

 やっぱり、ここで一番大切なのって、絶対的に危機意識だという気がします。わたしの中ではもし誰かお年寄りの背中に褥瘡の影らしきものを見た瞬間――「ヒィィィィィッ!!」とホラー映画ばりに叫びたくなるくらいの気持ちがあったり(^^;)

 なんでかっていうと、最初はその程度のものが放っておくといずれああなる……というのが頭の中にインプットされてるので、とにかくもう「予防が大切!!」と思うからなんですよね。

 でも職員さんの中には結構、「え?このくらい何よ??」っていう感じで、大して気に留めない方もいると思います

 前に本文の中で「褥瘡の画期的新薬」みたいなことを書いたんですけど、実際にはそんなことをうたった似たりよったりの薬があるだけという気がするので、ドラえもんの四次元ポケットから出てきたような「スーパー褥瘡ナオール・ハイパー」みたいな薬でも出来てくれないものかなって思います(^^;)

 それではまた~!!



       動物たちの王国【第一部】-19-

 唯はその日の朝、とても嫌な夢を見た。

 あたりはとても暗く、死の臭気があたりにはたちこめており――微かに血の匂いまでがそこには混ざっている。

 目の前は恐ろしく高い、暗黒の崖だった。しかも、こんな高い山を登っていったところで、頂上に太陽が約束されているというわけでもない。

(一体いつまでこうしていれば……)と唯が思った時、遥か彼方上方に人の気配がすることに気づいた。そこには青い手術着を着た結城医師が立っていて、初めて唯は心底ほっとするものを感じた。

(良かった。あそこまで行けば結城先生がいる。だからもう大丈夫だ)

 R医大病院の手術着はグリーンだったが、唯は夢の中でそのことを少しも不思議には思わなかった。

(結城先生のいるところまで登っていけば)というその一念で闇雲に崖を登っていく。

 けれど、彼と自分との距離が少しも縮まっていかないことに、唯は次第に強い焦りと疲れ、それに苛立ちを覚えるようになっていった。やがて結城医師が何か「ずる」でもして最初からずっと山の頂きにいるのではないかとすら思われ、腹が立ってきたほどである。

 そして唯が、自分が向こうに近づくのではなく、むしろ結城医師に今いる場所から下りてきてもらいたいと思い、彼の名前を呼ぼうとした時のことだった。

「ゆう、き……」

 先生、という言葉を、唯は口に出すことが出来なかった。何故といってその瞬間に急斜面の岩肌が砕け、唯は岩壁に手がかりを失ったからである。

(嫌だ。こんなところで死にたくない。結城先生と離れたくない)

 唯はそう思ったが、体はすでに暗い宙を舞い、下へと落ちはじめていた。そんな無重力状態の唯が最後に目にしたもの――それは結城医師が自分の存在に初めて気づき、助けようとしたのだが助けられず、最後には哀れみに満ちたような優しい眼差しで、そしてどこか悲しげにこちらを見下ろしている顔の表情だった。

 唯はここでハッと目が覚めると、ベッドの上に飛び起きた。

(嫌な夢……というより、なんだか不吉な印象の夢だったわ)

 まだ心臓がドキドキしていることに気づき、唯は一度深呼吸すると、ヘッドボードの目覚まし時計に目をやった。5:59分――ベルの鳴るほんの一分前だった。

 唯は時計のボタンを押して目覚ましが鳴る前にそれをストップさせると、軽い朝食を作ることにした。去年の四月や五月、また六月くらいの自分には、考えられない行動だと、唯はそう思う。

 何故といってその頃は仕事のすべてを覚えきれず、人間関係もうまくいってなくて、朝ごはんをまともに食べることさえつらかったからだ。それでも看護師という職業上、腹が減っては戦は出来ぬと思い、どうにかべーグルを一個食べて出勤するという毎日だった。

 けれど今は、きのう作って残ったごはんやお味噌汁、それにちょっとしたおかずを食べてからゆとりをもって職場へ出かけることの出来る自分がいる。もちろん日によっては前日の疲れが残っているあまり、(起きたくない)と思うこともあれば、夜勤前などが特にそうだが(今日はどんな急患が飛び込んでくるやら……)と、憂鬱な気分になることもある。

 唯は、看護師となって一年ほどが過ぎたこの時――看護という仕事に誇りとやり甲斐、それに充実感を持っていた。そしてこれがもっとも大きなことだが、何よりも人間関係がうまくいっている。唯は仲間のサポートがあれば、彼女たちが自分に一してくれたことに対し、十も二十も恩返しがしたい気持ちになったし、それは他のみなも同じだということ、それが唯のことを何にも増して強い気持ちで仕事に向かわせていた。

(思えば、わたしはとてもラッキーだったんだわ)と、満員電車に揺られながら、その日唯は思った。結城医師の研修医綾瀬に対する態度、あるいは鈴村主任の北島や時田らと接する態度を見ていると、唯にはよくわかる。「これが一番大切なことだけど、どうやらあんたたちには何度言っても伝わらないみたいね」……そんなふうに諦められることのほうが、実は何よりも惨めでつらいことなのだと、最近唯はそんなふうに思うようになっていた。

 そしてこの日も唯は、結城医師や鈴村主任、また気の合う職場の仲間たちの顔を思い浮かべ――いつまでもこんなふうに毎日が続いていくだろうと、信じて疑いもしなかった。にも関わらずこの日、「結城先生が近く救急部をやめるらしい」と噂で聞いて、唯は愕然とすることになる。



 >>続く。





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2 コメント

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初めまして。 (千菊丸)
2014-02-10 15:17:51
「動物たちの王国」、一話から拝読しております。

褥創・・一度興味本位にグーグルで画像検索してみたら、結構グロテスクな画像が画面いっぱいにバーッと表示されて、後悔したおぼえがあります。

寝がえりを打てないと、あんな風に皮膚が・・と思うと、介護がどんなに大変なものなのかがわかりました。
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Unknown (ルシア)
2014-02-11 04:30:07
 千菊丸さん、初めまして♪(^^)

 そうなんですよね……結構油断(?)してる時に思わず見ると「うっ!!(>_<)」と来る感じですよね

 寝たきりの方は大体2~3時間置きくらいに体位交換すると思うんですけど、腰のあたり(仙骨部)とか、体重のかかりやすいところに褥瘡って出来やすいみたいです。

 この小説結構長いので、もし最後まで読むとしたら結構骨が折れると思うんですけど(汗)、千菊丸さんがお暇な時にでもテキトーに読んでいただけると幸いです♪(^^)

 コメント、ありがとう~

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