まだあんまりお話が進んでないのでアレ(ドレ?)なんですけど、クラシックの音楽フェスティバル中に殺人が起きるということで、そもそもわたしがクラシック好きになった経緯について、ちょっと書いてみたいと思います
もともとはわたし(というのは、中学生くらいの頃☆)、クラシックってつまんなくて退屈な音楽だなあ……とか、ぼんやり思ってました。誰もが聞いたことのあるようなメロディラインのもの以外は、聞いてて途中で眠くなる、みたいな
そんなわけで、いわゆる超有名どころ(?)のクラシックCD以外は特にそれほど聞いたこともなくやってきて、二十歳すぎたくらいの頃に、洋楽聞くのもなんとなく飽きてきたな……と思った時に、クラシックってなんかいいなと思うようになり。。。
で、それまでに自分が買ったことのあるものや、家にあったものを少し集中的に聞くようになったわけです。
そして、その時にアバド指揮のモーツァルトの40番と41番の入ったCDを聞いてて、ふと思ったんですよね。
「この音楽をやってる人は、すごく心の綺麗な人なんだろうなあ」みたいに。
でもよく考えてみると、指揮してる人の「心が綺麗」って、おかしな話ですよね(笑)
第一、指揮者は自分では一音も出さないわけだし、じゃあ実際に音色を奏でてる楽団員の人たちの心がみんな綺麗っていうことなのか……いやいや、それもなんかおかしい話だろうと思い、その時に初めて指揮者のクラウディオ・アバドっていう人がどんな人なのか、興味を持ったというか(^^;)
え~と、もちろんクラシック好きな方にとっては、アバドの名前を知らない人がこの世にいるのかというくらい凄い人だっていうのは、今はわたしにもよくわかります。
んでも、その時までわたしは聞いてる音楽さえ耳に心地好かったら、指揮者が誰かとか、どこの楽団が演奏してるのかとか、まったく興味を持ったことがなく……でも作曲したモーツァルトの「心が綺麗☆」なのか、指揮者さんの「心が綺麗」だからあの演奏なのか、それとも楽団員全員の(以下略・笑)っていうことなのかっていう謎がこの時残って。。。
自分でも「なんというアホな謎☆」と思いつつも、調べずにはいられなくなり、まずは指揮者のアバドがどういう人なのかっていうことを調べたんですよね。
そ、そしたら……「クラウディオ・アバドって誰?」ってもし誰かに聞いたら、「おまえバカじゃねーの?」というくらい超有名な方であることがわかったというか(一体どこまでアホなのかww)
で、調べれば調べるほど、どんどんどんどんどんどんどん(×∞)すごい人だっていうことがわかって。。。
さらに、指揮者としてだけじゃなく、人間的にも素晴らしい人っていうんですかね(笑)ようするに誠実で温厚で性格までいいっていう、超エリート系の人だったというか(^^;)
そこで、自分が最初に思った「心が綺麗」って、意外に当たってたと思い、わたしその時、アバド指揮のものってモーツァルトのそれしか持ってなかったので、他のCDを聞いても同じように感じるかどうか、調べることにしたわけです。
そんでもって、同じ、同じ、同じ!!!っていう驚きがあって、もうここまでくると先入観だろうとなんだろうととにかく「この人好きだーっ!!」みたいになりますよね(笑)
まあ、そんなわけで(どんなわけだか☆)、指揮者のアバドを入口にして、わたしはクラシック音楽が大好きになったのでした。
おしまい。。。みたいな?(笑)
それまでは、同じ楽曲を指揮者違い、楽団の違いで聞き比べる人に対して「アホなんじゃねーの?」とすら思ってたんですけど、以降自分もめでたくそのアホ☆の仲間入りを果たしたといいますか(^^;)
でもたぶんわたし、先にアバドの経歴的なものを知ってたら、彼のことは好きになってなかったと思うんですよね
この時期にとにかくアバドの情報が欲しくて欲しくて、家にあったクラシック関係の雑誌なんかを全部引っくり返して読みました。それでもたまにしかアバドの名前は見つからず、そしてアバドの三文字を見つけた時には「キャーッ!!(≧∇≦*)」という感じで、その短い記事を繰り返し読むという。。。
あとはクラシックCDの評論っていうんでしょうか。それはアバドのところは全部読みました。
まあ、それが本当に的を得ているかどうかは別としても(でも参考にはなる☆)、当時の古い雑誌とか本に書いてあった意見の中に「アバドは優等生すぎる」とか「アバドや小澤は結局のところ、音楽に対するアプローチ法が2~3種類しかない」とか書いてあるのには思わず笑ってしまったり。
だってその人たちって一応、そういう種類のプロとして評論の文章を埋めてると思うんですけど、結構個人的な意見が多いっていうか、「専門家に近いような人がそんな私見にも近いこと言ってていいのかww」と思ったりしたもんでした(^^;)
でも、なんでそうした方がそういう意見を書いてるのかっていうのも、少しだけわかんなくもないんですよね。
アバドの欠点を述べよ、とかもし言われても……アバドの場合特にこれといって何も見つからないというか、経歴とか色々、どこを調べても凄すぎて一部の隙もないっていうんでしょうか。しかも若い頃のジャケ写真とか見ると、すごい格好いいんですよね、この人(笑)
ゆえにわたし、音楽性がどうのという以前に、アバドの経歴と若い頃の写真とか知ってたら、まずもって好きになってなかったと思います(天邪鬼だから☆)
というか、CDショップにいってアバドのCDのジャケ写真見てかなりびっくりしたというか(^^;)
わたしの中では指揮者=白髪のおじいちゃんってイメージだったので……今はアバドもおじいちゃんですけど(笑)、この方は精神的にはずっと若いままなんじゃないかなって思います(というか、音楽やられてる方はそういう率がかなり高いんじゃないかと思う)。
もちろん、音楽的には円熟味の上にも円熟味を重ねて、もはや他の追随を許さないという領域に入って何十年にもなるとは思うんですけど、音楽に対する情熱は若い頃のままというか、そういう姿勢みたいなものが一切ブレずに全然変わらない人だな~なんて、そんなふうに思うんですよね。
なんにしても今回、少しばかりクラシックに関係したお話を書いてみて、またちょっと色々クラシックについて知りたい虫が疼いた部分があるので……アバドのCDやDVDなんかをまた買おうかなと思ったりしてます(^^;)
それではまた~!!
カルテット。-2-
「来週、南沢湖っていうところでさ、音楽フェスティバルが開催されるんだけど、行く気ないか?」
「音楽フェスティバルねえ」
悪友、時司要に電話をかけた翌日、翼はせっかちな性格も手伝ってか、早速とばかり彼のアトリエがある、城のような住居に邪魔をしていた。
和洋折衷型のなんともおかしな建造物で、奇妙なところで行き止まりになっていたり、あるいは抜け道や隠し部屋のあったりする、作るのに数億かかったと言われる、要曰く、彼の<おもちゃ>だった。
その時、薄いガラスを透かして、数人のモデルをしている美女が、何気なく同時にこちらを見た。全員、同じかつらを被り、まったく同じ古代ギリシャ風の服装をさせられている。
「おまえってさ、変わってるよな。モデルは人形にすぎないから、絵を描いてる間は必ずガラス越しに彼女たちを見て、一切話はしないだなんてさ」
「指示はするよ。けど、こっちの声は向こうに聞こえるけど、向こうで何か言っても、僕には聞こえないね。ま、口の動きで大体、<おしっこ>とか、言いたいことはわかるけど」
(やれやれ)と思いながら、キャスター付きの椅子を後ろ前にして座り、翼はその椅子をくるくると何度も回転させた。要はといえば、絵を描いている時独特の集中力を漲らせて、彼が何をしようとも一切頓着しない――とにかく、この部屋にいる時はいつもそうだった。
「おまえさ、トイレいく時に「おトイレ」って上品に言わずに、おしっこなんて言う下品な女ばっかモデルにしてんの?」
「さあ、どうかな」と、要は絵筆を動かし続けながら言った。「知能指数の低さとモデルとしての優秀さっていうのは、意外に比例するもんでね。下手にお上品な女性なんか雇うと、むしろあとあと面倒だっていうのもあるし」
「なるほどね。納得」
――ある程度絵が描き終わると、下の食堂にモデルの女性たちを招待し、美味しい食事とシャンパンが<ご褒美>として振舞われた。もっとも、ご褒美などといっても、彼女たちにはそれぞれ時給で結構な額が支払われてもいたのだが。
「俺さあ、おまえみたいな自由業って絶対向いてないって思ってたんだけど、要見てると、いつもほんと、羨ましいって思うわ。自由自適な生活で、セレブとしての品格も漂っててっていうかさ。なんていうか、要には凡人にない高貴な気品っていうのがあるよな。俺、もし自分が女で、おまえみたいな男に一瞬でも軽蔑の眼差しで見られたら――明日には自殺してるかもしれん」
「なんだ?もう酔ったのか?」
遠くに夕陽の見えるテラスに出て、モデルの女性たちがひとり、またひとりと車で帰っていくのを見送りながら、ふたりの男は茜色の空を背景にして語りあっていた。
「いや、俺は単に自分の品性の卑しさの話をしてるってだけの話。俺がおまえみたいな王子的ルックスで、絵の才能なんかあったら、まず最悪だな。今日はAと寝て、明日はB、それから次は……っていう感じで、無駄に才能をすり減らして駄目になってくっていうタイプの典型だな。というよりむしろ、なんでおまえがそうならないのかが不思議っつーか」
「またその話か」
要はスプマンテをフルートグラスに注ぐと、よくバーテンダーがそうするような指使いで、翼のほうへ差しだした。
「前にもこの話、翼にしなかったっけ?僕はおそろしく飽きっぽいから……まあ、おまえとはまた別の意味で、女性とは長続きしない。それでも、名前が売れだす前までは良かったんだよ。たとえば僕が、この屋敷のバスルームで刺されてるのが発見されたとか、そんなことがあってもね。でもまあ、今は色々迷惑をかける方面の人もいるしで、あまり遊べないっていう感じだな。僕にしてみたら、自由な身の翼のほうがよっほど羨ましいって思うけどね」
「結局、ないものねだりっていうことか。有名になって金が入るようになると、それ相応のものをどっかに支払わなきゃいけないってことだよな。まったく、面倒なこって」
「ほんとにね」
それから翼と要は、暮れゆく夏の夕景色を暫く黙って眺め、雲ひとつない空に星が瞬きはじめ、空気が生ぬるく感じられるようになってから、室内へ戻った。
「で、どうする?例の音楽祭」
「なんだっけ?クラシックのなんとかいう有名な指揮者と楽団がやって来るんだろ?俺さ、実をいうとブルックナー・アレルギーなんだよな。まだ研修医だった頃、朝比奈教授って奴が、手術中にブルックナーを必ずかけてたんだ。以来、手術室に入る前、緊張のあまり下痢になった時のことを思いだす。特に交響曲の五番と八番は死ぬまで永遠に聴きたくない」
要はカウンターの向こうで新しく氷をだし、さも面白いことでも聞いたというように、大声で笑っていた。
「ふう~ん。翼にもそんな可愛い頃があったのか。でも確か、ブルックナーは曲目の中になかったような気がするから、大丈夫じゃないか。西園寺圭が指揮するのは確か、ラヴェルとベルリオーズとストラヴィンスキー、モーツァルトなんかじゃなかったかな。あとは海外から何人か、著名な指揮者もやって来るし、クラシック好きにとっては垂涎ものの公演なんだけど、翼は興味ないか」
「そういうわけでもないんだけどさ、なんかこう……俺って場違いな気がするわけ。要はセレブなおつきあいとかで、そういうのにも慣れてるんだろうけど、結局俺って田舎者だからな。なんかの拍子にお里が知れちゃいそうとか思うわけ」
「べつに、そう堅苦しい場所ってわけじゃないよ」
お手伝いさんが作っていったという、つまみの皿をカウンターに並べながら、要は新たにワインの栓を抜いた。
高級な酒を、まるで水のように飲める生活を送っていながら、少しも酒や女に溺れるところのない親友が、時々翼は憎らしいようにすら感じられてならない。
「僕は主催者に招待されたってだけなんだけど、その主催者が僕の絵を買ってコンサートホールの建物に飾ってくれたような人なわけ。けどまあ、コンサート自体は一週間の間、野外でも行われるし、人気のある公演は当然、もうチケットが売り切れてないわけだけど……僕とその連れっていうことなら、どこでもフリーパスで入れるだろうっていう、これはそれだけの話」
「それだけの話ねえ」
(大した特権じゃないか)と思いながら、翼はチーズやマリネを口にし、ワインをがぶ飲みした。
「どっちにしろ、失業して暇なんだろ。僕も、誰を誘うにしても気疲れするのは嫌だしね。その点おまえが相手なら、暇な時はホテルのコートでテニスしたり、遊べていいなと思うわけ。あと、ホテルの中には馬鹿でかいプールもあるから、それなりにリラックスして楽しめるんじゃないかな」
「ふう~む。確かにそうだな。俺、要以外に友達いないし、先週酔って寝た子は電話番号がわかんなかったり……なんにしても、日頃の行ないが悪いと、まわりに人がいなくなるっつーか。これで要にまで見捨てられたら、天涯孤独だから、行きますよ。いや、むしろ行かせてくだせえ」
翼の話ぶりは最後、若干呂律が回らないような感じだった。
「おまえさ、そんな生活送ってたらほんと、ある日女に刺されて死ぬよ。そんで、自分の勤めてた緊急病院に搬送されて、元同僚にこう言われるんじゃないか?『結城先生はいつかこんなことになると思ってました』みたいにさ」
「要に、言われたく、ない……」
翼はやがて、カウンターの上に頭をのせたまま、いびきをかいて寝はじめていた。
「やれやれ」
要は溜息を着くと、奥の部屋からガーゼケットを持ってきて、親友の肩にかけてやることにした。そして苦笑する。表面的でないという意味の友達であれば――確かに自分にも、彼以外そのような存在は誰もいないということに、ふと気づいたというそのせいだった。
>>続く……。
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