ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

78.変わらない姿勢

2017-06-11 22:38:32 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 「はーい」と店主の明るく甲高い声が響く。カウンターとテーブル席20席程度の串焼店。「すみません、注文いいですか」と客の声がかかるやいなや「はーい」。カウンターで目の前の店主に注文しても、大きな声で「はーい」。テーブル席では、店主が返事をするとアルバイト店員が小走りに飛んで来る。串焼店なので、焼き物には少し時間がかかるが、飲み物は早い。たいていの飲み物は1分以内に出てくる。

 短髪で浅黒、作務衣を着た50代と思われる店主は、バイト店員には厳しいようだ。見た目からしておそらく皆学生だろう。注文取りが遅かったり、盛り付けなどでもたついていると、小声で厳しい指示が飛ぶ。時には叱責の声も聞こえる。怒るのではなく、短く叱っている。そんな時でも、客から注文の声がかかると即「はーい」と声が響く。

 店主は二代目らしいが、おそらく30年以上は串焼きを仕事としている。「はーい」と返事をするようになったのはいつ頃からか知らないが、いつも変わらない快活な接客姿勢だ。特別なことをしている訳ではないが、仕事に対する真剣さが伝わってきて安心できる。元気をもらえる。店主が率先して大きな声で返事をするから、バイト店員の動きもてきぱきしている。しかも、バイトが長続きして手際も良くなってくる。店主から仕事の厳しさを学んでいるのかもしれない。
 
 飲食店の接客姿勢は店によって様々だが、変化や質の低下に客は敏感だ。観光スポットなどで一元客を相手にするなら、マニュアルどおりの対応でよいかもしれないが、マニュアル対応は必ずしも均一で上質な接客とは限らない。

 客足が一段落した頃、カウンターの中で店主とバイト店員が談笑していることがある。そんな時、店主の鋭い眼光がやさしい眼になっている。ガラッと戸が開き、「はーい、いらっしゃいませー」と声が響く。「入れますか?」と客の声。即、バイト店員が席を案内する。
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