のぶのぶの音楽雑記

演奏会のお知らせだけでなく、色々なことを書いていこうと思います。

榎本智史さんの私的演奏協会:シェーンベルク《3つのピアノ曲》

2024-03-24 02:29:52 | 日記

友人であり、シェーンベルクの研究・演奏を中心に活躍されている榎本智史さんの「私的演奏協会:シェーンベルク《3つのピアノ曲》Op.11」に行ってきました。部分的に抜き出し解説を受け、一通り聴かせていただくという贅沢な時間です。
以前、2023年の9月9日にはシェーンベルクの「ピアノのための組曲Op.25」を同じ手法で演奏されました。

シェーンベルクと言えばやはり十二音技法というイメージでしょうか。私はResonanCeでおじょーがシェーンベルクの歌曲Op.2への並々ならぬ想いを受け、しばらくは十二音技法前のシェーンベルクにハマったものです。後期ロマン派の流れを汲むというのはよく言われていることですね。

「十二音技法」ということこそ知れど、曲は難解というイメージがどうしても先行してしまいます。ところが榎本さんの解説を聞きながら演奏を聴くと、ポイントを掴めるのか、立体的に聴こえるのです。以前、榎本さんとの合わせの時、シェーンベルクのジーグはジーグなのか?という質問に対し、丁寧に説明しながら演奏してくださったのですが、最初に演奏した時と解説後とでは全く違って聴こえるのです。しっかりとジーグの輪郭が浮かび上がります。これは解説による効果と、しっかりとそれに乗せた演奏だからこそなのだと思います。

なんとも掴みどころがなく思えた音楽が「あ、なるほど」となる瞬間は面白いものです。この試奏会シリーズでは時折思想面のお話も出てきます。これが私の日々考えるバロック・古典に重なる部分が多々あるのです。恐らくどこかに不動の礎となるものがあるのだろうと考えることがあります。聖書、そこから派生する神秘思想のようなものがもっと掴めれば十二音がもう少し自分にとって近いものになるような感覚があります。そういった意味でも榎本さんのお話、演奏はとても面白く同時にとても興味深いものです。

シェーンベルクの弟子であるウェーベルンはとある手紙の中で(ライヒに送ったものだったか?)「プラトンを読んだが、ノモス(法則)はまた旋律のことでもあった」というような文がありました。これは彼の作品に影響があるようで、非常に興味深い部分です。
シェーンベルクのもとで勉強したウェーベルンは、その期間の一区切りとしてOp.1のパッサカリアを書きました。私が注目するのは「パッサカリア」という古い形式・形態で、ニ短調というこれも古いと捉えられる調性が曲全体の世界を決定づけています。
ウェーベルンはゲーテの形態学を引用しており、変奏について話しています。これはゲーテの根本的同一性という部分を使っているのですが、パッサカリアにはまさにこの部分が見て取れます。同じテーマ(種)の中から変奏(茎から枝葉)が生まれるという、それがウェーベルンにとっての「ノモス」だったのではないかと考えています。
また別の手紙には「音列自体がすでに1つの法則を表します」という文がありました。これは十二音の音列のことでしょうが、ウェーベルンにとってその「ノモス」は大事なものだったに違いありません。それがシェーンベルクのもとで勉強した後の曲に決定的に現れているというのはシェーンベルクからの影響があるのか…?

脱線しましたが、榎本さんのこの会ではそういったことをふと考えさせられます。演奏にも説得力があるからこそ、そのような気持ちになるのでしょう。気付きの多い楽しい会です。榎本さんの私的演奏協会を聞いていくうちに様々な疑問が今後明らかになっていきそうです。
ここでは質問もOKですが、咀嚼するだけで精一杯です。ワクワクしながら通ってます(笑)
次回はベルクを取り上げるとのことで、今から非常に楽しみです。

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