白河夜舟

水盤に沈む光る音の銀砂

花火宇宙の夢

2006-07-30 | 哲学・評論的に、思うこと
花火の宇宙が消滅したあと、硝煙くすぶる一面の葦原は
雄大に沈思する大河を撫で渡ってきた涼風にさざらと揺れ、
見上げれば、数千光年の銀河の群れ、恒星、大三角、プレアデスを、
水墨の薄く延ばされた雲が時折僕の目から遮断した。
深更、虚空から切断しておいた、消滅した花火宇宙たちを
タロットのように並べて、眠る。




                                                                     




『―まあ、まあ、まあ、すると、大暗黒の隅の隅に眩く輝いている
  小さな花火の傘の中の黄、青、赤、白の光というのは、
  すべて「存在」へ向ってのびあがっている大暗黒の溜息ですの?

 ―そうです。いってみれば、大暗黒の中に停っている《もの以前》を
  誘惑するひそかな力に充ちた蠱惑者でしたが、この現在の誘惑も
  また成功せず、大暗黒の隅の隅の小さな花火の傘は、
  ただただ自己の中へ落ち込自己刑罰の《重力者》としての世界を
  ただただ示して見せたに過ぎません。』

                   (埴谷雄高 『死霊』)

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