舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

フラの自主トレについて考える

2014-06-17 06:01:48 | ダンス話&スタジオM
かなり前の記事で書いた事を、今一度掘り下げる必要があると感じまして、改めて取り上げたいと思います。


フラを学んでいる方の多くは「自主トレ」を実施していらっしゃる事でしょう。
一人で基本や振りを確認するレベルのものから、クラスのほぼ全員が会場や日時を改めて集って行う大規模なものまで、色々な自主トレの仕方が考えられます。


しかし、私は声を大にして言いたい。
自主トレは、やり方や頻度を間違えると全く効果を得られないどころか、かえって悪影響を及ぼす場合がある事を肝に銘じた上で行いましょう。


これは長年フラを学ぶ方々(ウチの生徒さんもそうでない方も含む)を見て来て辿り着いた、紛う事なく確かな結論です。
世の中には自主トレのせいで迷走しているダンサーがあまりにも多過ぎる。
無駄な自主トレさえしなければその人の踊りは今頃ずっと良くなっていたであろう事を考えると無念でなりません。

ウチの生徒さんであればレッスン時にアドバイス出来ますが(アドバイスを容れるか容れないかはまた別として)、自主トレの功罪は、「フラが上手くなりたい」「早く新曲を覚えたい」「イベントを成功させたい」と願うすべての方にお伝えしたい案件なのです。


個人レベルでの自主トレについては前述の昔の記事に詳しく書きましたので、よろしかったらそちらをご参照ください。
そちらでも書いたとおり、個人で練習する事自体は決して悪くありません(しなかったからと言ってウチじゃ誰も責めたりしないけど。っつーか、家庭学習ってモノを一切やって来なかった私が自習をやれとは言えません)。
自主トレが次のレッスンまでに振付を忘れないようにしたり、イベント用のフォーメーションを叩き込んだりするのに役立てばそれでいいのです。
今回問題提起するのは「グループ単位での自主トレ」でございます。



レッスン日に会場へ行くと、こういう凄まじい光景が繰り広げられているところに遭遇してしまった事が幾度かあります。

このいらすとにはおかしなところがあるよ!どこかな?きみもかんがえてみよう!

…と幼児教材風の謎のツッコミを入れたくなるような光景です。


では、じっさいに考えてみましょう。



まずコレ。踊り方が壊滅的に崩壊しています。
壊滅的に崩壊って「頭痛が痛い」並におかしな言葉ですが、そう言いたくなるくらい絶望的に壊れています。
少なくともウチでは決して屁っ放り腰で踊る事はお勧めしませんし、ガニ股にもしません。
もしウチと異なり、踊り方が脚を開き気味にするスタイルであったとしても、ステップに合わせて上半身がブレブレなんて事があってはならないはずです。

しかしながら、まちがった方向の自主トレを過度に行い続けた場合、きょくたんな話このようにその教室のスタイルから乖離した踊り方に変化していってしまうおそれがあります。
なぜならば、正しい方向に軌道修正する立場の指導者が存在しないからです。

「自分の脳内にはウチの教室のスタイルが正確にインプットされている!違う方に逸れていくなんて有り得ない!」と思う人もいらっしゃるでしょうが、残念ながらなかなか完璧に正確に覚えている人はいないものです。
子供時代に住んでいた場所や母校を久しぶりに訪ねるといろんなものがちょっとずつ記憶とは違っていたり、同級生との思い出話が微妙に食い違ったりするように、たった今目の前にあるものでない限り、100%完璧に記憶し再現するのはあんがい難しいんですよね。

フラも同じです。レッスンの時に振付はもちろん先生の微妙なハンドモーションや顔の角度などにいたるまで完璧にインプットしたつもりでも、レッスンから離れるとその記憶は少しずつずれていきます。
私も数年前、ロバート・カジメロ様のtreeのモーションが神がかった美しさなのを見て、私も是非とも身につけたいと強く願って凝視したものでしたが、数年経った今では脳内記憶と実際にやってみたときの手の動きが全然一致してくれません

それがレッスン中であれば違う事をやっても指導者が軌道修正してくれます(※ただしマトモな先生なら、という前提は付きますが)。
苦手な箇所が上手く行かなくても、何度も修正される事によって正しい記憶が脳よりも身体に刻まれていくのです。


ところが、自主トレではこのような軌道修正が行われません。
脳が間違ったものを正しいと認識してしまっても、誰も直してくれないのです。
まして団体で練習しているうちにみんなで間違った事を正しいと認識した場合、間違えた状態で記憶が強化され、それを身体が覚えてしまいますので、全員揃って仲良く行っちゃダメな方向に突き進んで行くのです。


こういうことは本当に起るんですねえ。
あるクラスに2週間ぶりに行ってみたら、レッスンがなかった2週間のうちに彼女達の踊りが自主トレによってスッカリ間違ったアサッテの方向へ飛んでいってしまっており、それを元に戻すのに1時間費やさなければならないという事態になった事は決して少なくありません。

それだったら、自主トレなんか何も行わず、前回やった事をスッカリ忘れた状態で次のレッスンに入った方がまだマシです。
一旦マイナスまで行っちゃったものをゼロに戻す作業から始めなければならないよりは、再びゼロから入る方がずっと効率的なのですから。


踊り方の美しさや振付の習熟度を客観的に見ても、自主トレを沢山しているグループほど良くできているかと言ったら、決してそうとは限りません。
むしろ、今述べたようにレッスンのたびに軌道修正する所から始めなければならない事すらあり、軌道修正が必要になるような自主トレでは却って逆効果と言えます。




そしてこのイラストの中で最も「おかしなところ」はこの人です。
レッスンの仕切り役、あるいは先生役の人!



自主トレの様子を見ていると、グループの一人が前に出て見本となり、あるいは監督となり、他のメンバーを仕切っている事があります。
もちろん、その人が本当の先生から認められたインストラクターなり先生代理なりだったら構いませんが、問題なのは自らその役を買って出たり、他の誰かに「○○さんなら上手だから/よく覚えているから」などと祭り上げられたりした人であった場合です。
そういう人が本当に正しいとは限りません。


このイラストに描いた人のように、「腰の振りは大きければ大きいほど良い」などと致命的な勘違いを起している人であったらもう絶望的ですし、そこまでは酷くなくとも、いくら上手な人や物覚えのいい人であろうと覚えまちがいや踊り方の癖などが皆無とは行かないわけで、それを見本にして踊っていれば当然、それらの間違いや癖が見事なまでに伝染します。グループ全員に。


全員仲良く間違った方向へ突き進んでしまったのであれば連帯責任(ああイヤだわこの言葉)ですが、先生役を務めた誰かの間違いや癖が全員に伝染した場合、やはり責任はその「誰か」にあります。
別に仕事というわけでもないのに、ボランティア精神や仲間からの推薦によってその立場を引き受けた人にとって、そんな風に責任を問われるのは何とも割に合わない話ではありませんか。
ですから、同じグループの仲間という平等であるはずの立場の中で先生役なんてのを買って出るべきではないし、誰かを祭り上げるような無責任な事もするべきじゃありません。


そうそう、平等な立場と書いて思い出しましたが、やはり上手だろうと振付を覚えていようとあくまでも「仲間」なので、「先生に注意されるのはいいけど、同じクラスの○○さんにうるさく言われるのは耐えられない」と訴える生徒さんも結構いらっしゃいます。
一応先生の端くれである私でさえ、何十人もの前で誰か一人の生徒さんを注意するのは気が引けて、つい昨日も個人的にコッソリ「あの~○○さん、どこそこの手が逆でしたよ………」とお伝えしたばかりなくらいで(笑)、これが仲間同士になったら、誰かを個人的に注意したり指摘したりするのはもっとデリケートな問題になると思うんですよね。
ですから、仲間内でそんな憎まれ役をわざわざ買って出る必要はないです。


世の中には「仲間同士でお互いに間違いや欠点を指摘し合うように」との指導をするお教室もあると聞きます。
でもウチはそういう方針じゃありません。そんな事したら深く傷つく人もいるでしょうし、第一楽しくないもんね。
上達は汗と血と涙の結晶からしか生まれないわけではありません。趣味の集まりなんだから、楽しみながら上達したっていいじゃないですか。


え~長々と書いて参りましたが、総括するとこういう事です。
まず自主トレは適量を守ってほどほどに。って酒かよ。
個人的には、グループで自主トレするのは「イベント直前に立ち位置やフォーメーションを叩き込みたい時」くらいでいいんじゃないかなと思います。
定期開催じゃなく、イベント前だけの臨時開催で十分。
ハッキリ申しまして、定期的かつ頻繁な自主トレをしているグループで、「自主トレのお陰で上手くなったなあ」と思った所は残念ながら一つもない!(笑)


どうしてもそれ以上にやりたい時は、決して間違った方向に進んでいかないよう、細心の注意を払う必要があります。
自主トレを散々した後のレッスンで「今日は前回のおさらいばかりやらされてちっとも進まなかった」「何だか基本練習がしつこいなあ」と感じたら、それはあなたの自主トレがマズい方向に行きつつあるという危険信号です
マトモな指導者なら、ちょっとでも軌道がズレていれば一発で分りますし、ズレてきた軌道をきちんと修正してからでなければ決して次に進ませようとしないものです。出来るだけ早い段階で修正しておかないと、今後ますますアサッテの方向へ行ってしまいますからね。


そして、自薦他薦を問わず先生役を立てないこと。
自主トレは「みんなでするもの」です。「誰かに指導されるもの」ではありません。
そのあたりの区別をキッチリつけておかないと、先生役の人によって全員がズレた方向に導かれてしまったり、仲間が仲間を注意する事で人間関係にヒビが生じたりするおそれがあります。


あと最後にもうひとつ。
先生が全くいない状態、つまり誰からも習う事なく自主トレのみで踊る事はやめましょう。
フラは「何曲習ったからこれ以上学ばなくていいや」というものではありません。
もう二度と決して踊らないのでない限り、指導者の存在は必要なのです。
すでにハワイで名の通っているクムでさえ、さらに優れたクムに教えを乞うほどなのですから。

コレ、別に私が先生だからそう言ってんじゃないですよ(笑)。ホントは世の中のものすべてがそうだと思うのです。
たとえばヨガなどを考えても、DVDか何かを見て上辺だけ真似したって何の効果も得られない事でしょう。
本物のヨガを身につけるためには本物のプロに習わなければなりませんし、その後も続けていくのであれば定期的に学び続ける必要があります。


導き手を失ってもなおフラを踊り続けているとだんだん踊りがゾンビ化してきます。
冗談ではありません。マジで軌道修正してくれる人が誰もいなくなっちゃうわけですから、その後どんな暴走をしたって不思議じゃないのですぞ。

よし、今度フラゾンビのイラスト描こう。もちろんカラーで(笑)。





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