藤田宜永の「夢で逢いましょう」を読んだ。奥さんの小池真理子とともに恋愛小説の書き手というイメージがあるが、この人の作品は初めて読んだ。
主人公は還暦を迎え定年退職した日浦昌二。昌二が小学校の時の同級生で探偵業を営む三郎と還暦を迎えて再会。昌二と三郎に後に再会する誠一郎の3人は小学生だった昭和30年代の人気テレビ番組のお笑い三人組に例えられる遊び仲間。小学校の頃のマドンナだった美代子がストーリーを引き立てている。
夢で逢いましょうは昭和30年代にNHKで放送されたTV番組
現在と小学生だった昭和30年代、三郎の大学時代の昭和40年代が交錯してストーリーは進む。個人的には三郎の大学生の頃の章が好きだ。572ページにも及ぶ長編小説だが、各章のタイトルがOh!モーレツ、ゲハゲバ、ジェットストリームなど当時の流行語やテレビ、ラジオ番組でユニーク。
ジェットストリームは今でもやってる番組だけど当時のナレーターは城達也。「夜のしじまに・・・」が名文句の東京FMの看板番組。大学生の頃、オーディオデッキのタイマーをかけて、寝る時、よく聞いた。
各章、挿絵あり。旧丸善石油のCMで一躍有名になったのは小川ローザ。
新宿ゴールデン街のBARの話も面白い。足を踏み入れたことないけど、個性的な人が集う場所のようだ。
小学生の時の淡い恋、中年のほろ苦の恋、高度経済成長期の若者文化や風俗、音楽、社会問題や現代人の孤独が巧みに描かれている。
還暦というと一昔前までは老人というイメージがあったけど最近の60歳は若いね。自分が還暦を迎える時、どんな生活してるのかな?
人のつながりが人を呼ぶ。何十年の歳月を経て、人の縁が戻ってくる。一期一会という言葉があるが、この作品読んで感じたな。ここ数年で読んだ小説のなかで宮本輝の流転の海と並んで最も面白い作品かも。40代以上の男性には強力にお薦め。
裏表紙は小学生の頃の3人
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