京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

聞き役、 上手?

2008年09月30日 | 日々の暮らしの中で
お酒の匂いをプンプンさせて、万さんの立ち寄る先が “keiさんのとこ”。
夕御飯の支度に忙しい傍に寄って来て、上がり框に腰掛ける。
専用の一升瓶で、さらにコップ酒。
人恋しいのか毎夕keiさん、keiさんと言って、顔を見せてくれる。
あちこちにいたという女性の話や、わが半生のご披露が始まる。
家には帰りを待つ、老いた母が一人。
腕にはシールなどではない、カラーの装飾を施した植木職人さんだ。

相づちを打って、打って、打って。
へぇ~、へぇ~、へぇ~と感嘆詞で受けて。
私って聞き上手?演技派? 
万さんは充分気持ちよくしゃべった様子。
「また来てくださいねー」と送り出して、何年が経ったかしら。
罪な相づちだったろうか、お酒がもとで亡くなった。

嫁が怒るから「keiさん、ボタンつけて」と、大きな犬に引っ張られて散歩するUさんがやってきた。
針と糸を持って来て並んで座る。Uさんの口からぽろぽろこぼれる胸の内。
すべてを拾い集め、糸に通し、こぼれないようしっかりと玉結び。これで大丈夫。

私がニコニコ黙って聞いていると、胸のつかえをおろして帰られる。
私はどこへしまおう。“すべてを胸に収めて”…、ちょっとつらい時もある。
小耳にはさんだオモシロイコト、しゃべりたくなってしまうことが…。

「ふ~ん」「ふ~ん」「そうですよね~」と聞いているばかりの未熟な聞き役に、荷物を預けて帰られる。
裏切ったらいけません…、「貝」になれとか?
しまいきれないから、そっと流してしまおう。

悩みの捨て所、それを拾い上げる私の悩みはだれに捨てよう。




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4 コメント

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また一つ…… (yattaro-)
2008-10-01 10:16:00
keiさんのお人柄を偲ばせるエピソード。また一つ近くに寄せてもらった気持ちです。
色んな人が色んな形で、“ちょっと顔を見に寄ったよ…” “ちょっと話して帰ろう…” などと気楽に立ち寄れる「心の休憩所」「浮き世の憂さの捨て所」
そういう雰囲気がkeiさんの持ち味なんでしょう、きっと。

相づちを打って、打って、打って。聞いて上げる。それだけで十分です。これに勝る聞き上手はありません。
貝になるのも結構ですが、両手一杯になったら少し流しましょうよ。誰かが拾ってくれますよ。 世の中全て持ち回り。捨てる神あれば拾う神あり…ですよ。

気持ちが軽くなるブログ、なんか得した気分です。
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聞き上手 (Rei)
2008-10-01 21:58:59
思わず今日の連載小説「親鸞」の一節を思い浮かべました。
「忠範には幼い頃から、自分では気づいていない不思議な才能があった、中略 ただの聞き上手ではない・・・」

その方はkeiさんに癒され、和まれお帰りになるのでしょうね。なかなか誰にもできる事ではないと思います。 「人助け」かも・・・
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そっと (kei)
2008-10-01 23:50:12
万さんの話はお酒が入っていますからね、どこまでが?かでしたが、相手が欲しいのでしょうか。仕事を終えて一杯飲んで家へ帰るその前にもう一度、一杯。

なかなか放してもらえぬ時の、手段でもあったんですよ。
しっかり聞いていられないから、やたらと、いかにも面白そうな感じで聞いちゃうのです。喜んでしゃべってお酒も回ってきて、またねと。(万さん、ゴメンネー、です)

「世の中全て持ち回り」
そっと流していきます。
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話しやすいように聞いているだけです (kei)
2008-10-02 00:02:38
私も今朝の「親鸞」興味深く読みました。
インパクトのある描写ですね。
犬丸の秘密って…、明日が楽しみです。

胸に詰まってるものを、気が済むようにこぼして、少し気が楽になるのではないでしょうかね。聞いてもらうだけでありがたいような経験ってありますし…。

私がやたらと口をはさまないからきっといいのでしょうね。癒され、和むって感じとは遠いですね。

やたらの相づちや、余計なひと言が、災いのもとになっても困りますしね(笑)、気をつけながらです。
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