京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「輝ける皇妃 エリザベート展」

2012年09月07日 | 展覧会
  
エリザベートは、19世紀ドイツ一帯を中世以来支配するヨーロッパの名家、バイエルン王国ヴィッテルスバッハ家の一族に1837年12月24日、クリスマス・イブに生まれている。父親と野山を歩き、乗馬を好んだ少女は、一方で文学少女で、詩作にふけるメルヘンチックな「野生の少女」だったと紹介される。
そんな少女が16歳で王家に嫁ぐ運命が決まってしまって、やはり少しづつ心身のバランスを失っていくようだ。ハプスブルク帝国皇妃となって、数奇な運命に翻弄されていく。宮廷生活から逃げ出すように、やがて放浪の旅に出、暴漢に襲われて最期を遂げる。

この肖像画の口元の愛らしさ。と、同時に見惚れるほどに美しい。野性的な魅力とともに「気品と神々しさ」を備えていた女性は、身長172cm、体重は生涯48~50kgを維持したそうで、52cmのベルトにサイズ22.5cmの靴が展示されていた。死後100年以上経っても世界中で語られ、ミュージカルとしても上演が繰り返されている。人気の秘密は何だろうか、このドラマチックな人生かもしれない。そしてこの美しさ。


初めてウイーン版でミュージカル「エリザベート」を観たのが5年前。以後、宝塚や東宝の舞台でも楽しんできた。今月末、再びウイーン版観劇のチャンスが控えている。DVDやCDで何度も再現して、不思議とはまり込んだミュージカルの一つになった。これも演劇好きの友による道案内があって、楽しみの世界を広げることができた事だと嬉しく思っている。

そんな折も折、『輝ける皇妃 エリザベート展』が美術館「えき」KYOTOで始まったとあって、足を運んだ。エリザベート生誕175周年とある。
数々のすばらしい展示物の中で、最も印象深かったことは「扇の言葉」に関する説明書きだった。
当時の社交界、恋の相手と思しき男性に向かって、扇を扱う様々なしぐさ一つひとつに思いを込め、モールス信号のように「言葉」を発していたらしい。その扱い方は複雑で、アカデミーで学んだという。
扇の、わからないほどのひねり具合、開き加減、それをどの位置に持っていくか、目、胸の位置、扇の振り加減、バタバタの仕方の違い… 多用な組み合わせに意味を持たせて、実に様々な説明がされていた。扇を持つ指の小指を立てたら「さようなら」、だそうな。

演劇通の友人はこのことを知らないだろう。彼女の関心はあくまでも「舞台」なのだ。歴史や文化的なことは置き去りにしがちなので、仕入れたばかりの知識を披露してみるとしよう。ふーんって顔つきで、さっと聞き流すだろう。きっとそうだ。
コメント (4)
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