京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 蛇頂石

2010年07月22日 | 日々の暮らしの中で
              

「家宝」とはまた随分大きく出たが、いかにも父らしい。おまけに「禁持出」としてある。
何にでもこう書き添える癖があった。
実家に伝わる大切なものが、いつから、どうして私の手元にあるのか、不思議なことにそのいきさつにはまったく記憶がない。物持ちがよい娘、と単純に私を信用していた父だ。紛失の可能性も一番薄いと思ったかもしれない。

私の知る限り、すでに縦半分に割れていたが、これは「蛇頂石」といって、人造石らしい。
まだ幼かった弟が蜂に刺された時があった。その傷口に、濡らしたこの石を割れた左右をきちんと合わせて当て、絆創膏で止めていたと思う。虫刺されでひどく地腫れしたときなども父はこの石を当ててくれた。

         

蛇頂石が、毒を吸ってくれるようだ。
どのくらいの経過を見てだったか…、石をはずして水の入った湯飲み茶碗に沈める。石からは面白いようにプクプクと泡が出てくるのだが、それを家族6人が興味深げに頭をそろえて覗き込んでいた。笑いを誘われる懐かしい少女時代、あ~、もう大昔の話。

我家のばあ様が、ムカデに刺された!と言って大騒ぎになった日、あの時、出し惜しみしたわけではあるまいな…、と今思い出している。多分まだ石は手元にはなかったのだ。隠しておいたわけではない。あっても蛇頂石では手に負えなかっただろう。病院へ飛んで行った。

しかし、この石も宝の持ち腐れもいいところで、効果を試す機会も失われてしまったまま、出番がない。せっかくだから、夏のアウトドアーには携行したほうがいいのかもしれない。
今は製造法も定かではなく、手に入らない珍しいものではあるようだ…。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする