
植え込みに絡みながら伸びた枯れた茎を手繰って行くのだけれど、その根元まで行き着けない。色づいたカラスウリの実を、茎の途中で手折って集めていた。仕方がない、タネを蒔いてみようか…、と思いながら。
大黒さんが入っている、と言われるタネ。タネからでは、花が咲くまでに三年かかると聞いた。
カーテン越しの向こうから、コンコン!と。目じりにいっぱい笑顔のしわを刻むおじいちゃん(義妹のお父さん)が差し出してくれた、軍手をはめた手のひらには、ご覧のとおりのたくさんの根っこ。続く再びのコンコン!には、たくさんの赤い実を。三回忌の法要も無事に済ませ、今日は息子のいるマンションに行こうとする七日の朝だった。

カラスウリのあるところ必ず、黒い、ホタルのようなクロウリハムシが飛んでくるのだそうだ。ウリしか食べない虫は、ガリガリ、ガリガリと音をたてて葉に刻み目を入れる。
その行為が止まると、葉は食べられまいと毒を出す。それを知る虫は、食べる分をまず確保ということか、先に、葉に刻み目を入れてしまうのだという。
「トレンチ・コード」。刻むことで、そこには境目ができる、壕を掘って安全地帯を作ることにつながるのか、その習性と合わせてそう言うのだろう。
この虫が葉から飛び上がるのは遅い。腹いっぱい食べるし、ヘリコプターのように飛び上がるので、そこを両手でパン!とやっつける。
少し前にこの話をしてくれた方の、夏の日課だったそうな。
「あー、こんなことをいろいろ調べているのが面白いなあ」と。
小さな攻防戦が繰り広げられる自然界の楽しい話に、私はその時メモを取っていたのだ。
黄色いウリもあるが、葉は少しがさつで荒っぽい。“大阪のおばちゃん”ですね。
そこへ行くと、赤いほうのウリは、ホンマに上品、強いし、いいですわー…。“京都のおばちゃん”ですね、って。(ちなみに、私は関東出身ですので悪しからず。)
ポッとランプが灯るかのように明るいカラスウリの実、病気療養中の沈みがちな知人に届けてあげられのだとか…。
私は一度実際に花を見て見たい。弟は見たのだろうか…。