伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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都市の限界集落化

2012-06-25 20:12:37 | 政治・政策・経済


(「限界集落」とは、)

大野晃(長野大学教授)が提唱した概念で、
およそ65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、
社会的共同生活の維持が困難になった集落を指す言葉です。
行政上の用語ではありません。

大野は、65歳以上の高齢者が
地方自治体総人口の過半数を占める状態を「限界自治体」と名付けました。

ウイキによれば2010年の国勢調査の限界自治体の数は11町村。
財政再建団体の北海道夕張市は、平成18年)時点で
65歳以上比率が41%と市では最も高齢者比率が高く、
財政再建の前に、市が消滅するのではという切迫した問題があります。



(超高齢社会)

ウイキによれば次のように分類されています。
 高齢社会  65歳以上の人口 14% ~ 21%
 超高齢社会 65歳以上の人口 21% 以上

じつは日本においては「超高齢社会」は特別な状況ではありません。
すでに日本は、平成7年に高齢社会となり、
平成19年には超高齢社会となっています。

世界と比べて、もう一つの日本の人口の特徴は高齢化のスピードです。
あまりの速さに、社会制度や文化、慣習の変化がついていけないほど。
高齢化率が7%を超えてから倍の14%に達するまでの所要年数で比較すると、
フランスが115年、スウェーデンが85年、比較的短いドイツが40年、イギリスが47年。
それに対して日本は、1970年(昭和45年)に7%を超えると、
その後24年(平成6年)で14%に達しました。
日本の高齢化は、世界に例をみない速度で進行しています。



(都市部も限界集落化)

都市部でも高齢化が進んでいるという指摘があり、
県内の市の中でもっとも高齢化が進んでいる桐生市に注目しました。


  (桐生市HPより)


桐生市の高齢化率は、今年の4月現在で29.0%です。
日本の現在の高齢化率の平均は下のグラフのとおり25%弱と思われます。
しかしこれは、過疎地域などを含んだ平均です。
桐生市の場合、国の平均を既に上回っています。


  (資料:国立人口問題研究所)



(人口フレーム)

各自治体における一番基礎的な計画が「総合計画」です。
10年ほどの将来を予測して計画します。
そしてその計画を立てる上で一番重要なのが「人口予測」なのです。
行政サービスのニーズを予測したり、
税収見積もりの基礎になるからです。

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 <桐生市新生総合計画> 基本構想 3 フレーム

 ○ 人口
  総合計画を作成するに際して、重要な要素のひとつである
  人口を推計します。桐生市は東毛地区の中核都市として発展して
  きましたが、産業構造の変化や生活範囲の拡大、核家族化等の
  影響から、本市の人口は、市外への人口の流動が顕著となり、
  国勢調査では昭和50年を境に減少傾向となっています。
  さらに出生率の低下と高齢化の急速な進展に伴い、
  自然動態についても平成4年から減少しています。
 
  本計画の目標年度である平成29年の桐生市の人口は、
  *7コーホート要因法による推計人口113,000人に、
  新たな市営住宅建設や定住促進事業、そして、民間活力導入
  による住宅や分譲住宅などの開発による3,000人、
  さらには、新里地区における工業団地や住宅開発による1,000人、
  合計4,000人の政策的人口を加味した「定住人口」を
  見込むとともに、本市のまちづくりに深く関わる通勤・通学者など、
  いわゆる交流人口を考慮した117,000人を「計画人口」として、
  まちづくりを進めます。

  「目標年度-平成29年度」
  コーホート要因法による推計人口 桐生地区 94,623人
  新里地区15,775人
  黒保根地区 2,159人
  計 112,557人
   A ≒113,000人
  政策的増加見込人口  B 4,000人
  定住 人 口  A+B 117,000人
  交流人口  C 0人
  計画 人 口  A+B+C 117,000人

  なお、年齢構成では、
  0~14歳の年少人口は、出生率の低下などによる
  人口減少社会を背景として減少傾向にあり、当面はこうした傾向が
  続くと考えられますが、積極的な子育て支援・環境の整備を
  行うことによって、減少幅は縮減するものと想定されます。
  15歳~64歳の生産年齢人口については、
  今後も年少人口の状況から実数、構成割合とも減少が続くものと
  想定されますが、住宅施策や工場誘致などの対策を
  積極的に行うことによって、社会的減少の抑制が見込まれます。

  65歳以上の老年人口については、
  平均寿命の伸びや団塊世代の将来推移などから、
  増加傾向が加速するものと想定され、本市は特に実数、
  構成割合とも顕著な傾向が見込まれます。
  そのため本格的な超高齢社会に対応する必要があります。

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以上が、桐生市の総合計画「桐生市新生総合計画」からの抜粋です。
国立社会保障・人口問題研究所が行った桐生市の人口予測と比較してみましょう。


  (資料:人口問題研究所)

研究所の推計では、現在13万人弱の桐生市の人口は、
平成29年(2017)ごろには11万人程度と予測しています。
桐生市が研究所の予測より人口が多いと見込む根拠を見てみましょう。

まず基本部分のコーホート要因法による予測113,000人は、
どのような前提条件をおくかによって異なります。
人口問題研究所(私は出生と死亡を中位の条件に指定)の予測と、
桐生市の予測はほぼ同じでしょう。

桐生市の場合、更に次のような増加要因を挙げています。

  新たな市営住宅建設や定住促進事業、そして、
  民間活力導入による住宅や分譲住宅などの開発による3,000人、
  さらには、新里地区における工業団地や住宅開発による1,000人、
  合計4,000人の政策的人口を加味した「定住人口」を見込む

市営住宅や民間の分譲住宅を造ることで3,000人の増加。
更に、新里地区の工業団地と住宅開発で1,000人の増加。
下図のように日本中で人口が減少する中で、桐生市に住宅を大量に作っても
はたしてどこから人が来るのか。厳しいのではないでしょうか。


  (資料:人口問題研究所)

工業団地についても、桐生市に隣接している伊勢崎市でも
新たな工業団地を次々と造成する計画です。前橋市や高崎市も同様です。
しだいに日本の製造業が海外へ移転する流れの中で、
桐生市の工業団地がどれだけの強みをもてるのか。
全国で桐生市だけが住宅や工業団地を作るのではありせんので、
「住宅を作れば人が来る、工業団地を造れば人が増える」、
といった「希望的観測」では、甘い予測となってしまわないか心配です。



(前橋市の人口予測)
前橋市の総合計画における人口予測と年齢割合です。



人口問題研究所の2015年の前橋市の人口予測は出生中位・死亡中位の条件では
307,341人ですので、前橋市の予測は若干高めです。
なんらかの好条件を試算の前提に組み入れていると思います。



(伊勢崎市の人口予測)
伊勢崎市の総合計画における人口予測と年齢割合です。


伊勢崎市の2035年の予測人口204,188人は、人口問題研究所の
出生中位・死亡中位の条件での将来予測人口とぴったり同じです。
色々な条件は、良くなったり悪くなったりしますので、中位を採用しているならば
妥当なところではないでしょうか。
伊勢崎市の場合、全国や県の人口動態を踏まえているところも好感が持てます。



(これからの自治体がめざすもの)

人口問題研究所の将来の桐生市の年齢構成の推計です。



この推計によれば、2005年からわずか30年で人口が30%減少。
人口の3割減は、ただ事ではありません。
2035年ごろの高齢化率は40%ほどに到達します。
さらに将来、高齢化率が50%に到達するようですと、
存続が難しいといわれる「限界集落」に該当してしまいます。

桐生市に限らず、これからの地方自治体は、
「住宅と工業団地を造れば人口は増えます」という楽観的な見通しよりも、
高齢化を前提としたコンパクトシティづくりや、
買い物難民の解消、お金のかからない予防医療や予防介護の構築、
高齢者の孤立を防ぐコミュニティ作りなど急がねばならないと考えます。

県西部の南牧村は、人口問題研究所の予測では
23年後には、人口929人、高齢化率67.8%、
75歳以上の割合は52.9%になります。
単独の自治体として機能するのは難しいのではないでしょうか。
その時まで「県」があるとすれば(私は道州制推進派です)、
自治体の成り行き任せではなく
いまから広域合併を計画的に進める必要があると考えます。









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