伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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リーダーの役割

2011-09-29 20:04:31 | 政治・政策・経済
知事や市長など、首長の役割は、
遠く高い目標を掲げて、組織や市民を導いていく
灯台のような役割だと、以前本で読みました。

今日、明日のことではなく、
2、3年先のことでもなく、
これからの50年先、100年先の、
地球、日本、社会、自治体のあり方を見通して、
どうあるべきか考え、そのためには、
今からどの方向に進むべきかを指し示すのが
リーダーの役割です。

ものごとを考える条件に、
自分の努力でどうにかなる条件と、
すでに与えられたもので、あとからでは
どうにもならない条件、即ち「与件」があります。

与件その1
自治体は日本の国から独立していませんので、
国の状態から大きな影響を受けます。

これから50年先、100年先の
自治体経営や日本社会のあり方を考える上で、
大きな制約となる与件が少なくとも二つあります。

一つは国の財政です。
財政危機のギリシャの国の負債額は、
GDPの140%です。

ドル安とギリシャの影響を受けているユーロ安の影響で
現在、非常に円高です。
しかし、日本の国の借金はGDP比で200%。
ギリシャよりもはるかに悪いのです。

2010年度と2011年度の国の予算は、
税収よりも、国債による借金収入のほうがすでに多いのです。

借金には利息が発生しますので、
単純に考えるなら、一年間の税収全てを
借金の返済にまわしてもまだ足りない、というのが現在の
日本国財政です。

自治体は、いつまでも国からの交付税や補助金が
これまでのように流れてくるとは、
考えるべきではありません。十分に情報は公開され、
危険な前兆は出ているのですから、
「想定外でした」ではなく、もしもの時に
備えた対策を準備しておく必要があります。

与件その2
100年後の日本の人口は現在の3分の1という推定が出ました。
外国人が大量に入国しない限り、ほぼ変わりません。

単純に考えて、人口が減れば
税収も減ります。
行政サービスの対象者も減ります。

大まかには、自治体の財政規模や職員数などは
100年後には、現在の3分の1になるように
進めていかなくてはなりません。

また、細かく考えれば、高齢化が進みます。
人口が3分の1でも、高齢者の割合は
現在よりも高くなり、納税者の割合は少なくなります。

このことから、
時代に会わなくなって不必要となった事業は
積極的にカットするとともに、
民間でできる事業は、積極的に
民間に引き継ぐようにしなければ、
自治体はもちません。

100年後に3分の1の規模ということは、
100年後には、現在の70%ちかくカットできていなければなりません。
いきなり、50%カット、70%カットはできないと思います。

10年ごとに7%削減を10回繰り返して
100年後に70%カットを達成しようとするのが
これからの自治体(国も含む)の基本的な方針に
しなければならないと考えます。

このような背景があるので、
予算を前年比よりも伸ばせと主張したり、
新規の事業をどんどん始めようとするのは
非常に危険です。

もちろん新規の事業でも
必要なものは始めなければなりません。
問題はトータルとして10年ごとに
マイナス7%を達成できるようにもっていくのが
「自治体経営」なのです。

10年で7%ということは、
毎年0.7%の削減が必要です。
約1%弱です。

一年で予算を0.7%減らせないような自治体は
翌年度、その分を含めた1.4%減らすことはできないでしょう。

今さえ良ければよい、
足りない分は借金すればよい、
後のことは知らない、というやり方を
続けてきた結果が今の日本の財政です。

たとえ国がだめでも、
すべての自治体の首長には、
以上の与件を踏まえた自治体経営をして頂きたいと
強く思います。

P.S.
自治体の予算カットの手法で最悪なのは、
全分野一律のカットです。

時代の変化に応じて、必要性の高まる分野もあれば
逆の分野もあります。
この意味で、一律カットは思考停止の愚かな手法です。

また、一律カットの場合
何も考えずに各分野が
事業規模だけ縮小する恐れがあります。
これもまた思考停止です。なんのイノベーションも起こりません。

社会に必要な事業であれば、
いちがいに廃止できません。
しかし行政が直接行うには予算的にも人的にも
限界があります。

いかに、民間企業やNPOに引き継いでいくかを
考えていかなければなりません。
これはまったく新しい取り組みです。
前例踏襲の、去年と同じことを繰り返すだけの
お役所仕事では、達成できません。

受け皿となるNPOが無いのなら、
いかに育てていくかを考えるのが
現代に求められる行政の戦略です。

これからの自治体職員は、
従来と同じことをやろうとしてもできません。
そういう心がけですと、つまらない仕事でしょう。

しかし、
「まったく新しい目標を持ち、チャレンジしていくことが仕事である」
と定義できれば、とてもやりがいがあります。
勉強の範囲や、創意工夫すべき範囲は無限です。

自治体の部・課長や、職員に対する評価は、
いかに予算や職員を増やしたかではなく、
いかに行政から民間へ仕事を引き継ぎ、
行政のスリム化を図ったか、で評価されなくてはなりません。

この点でも、首長さんには
自治体経営の舵取りを、
よろしくお願いします。

100年後を見通して、
どの方向に進むのか。
首長の見識が問われます。




















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