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出生前診断の新たな展開、生殖医療の未来 平成24年度母子保健講習会報告(1)

2013年02月26日 | こども・小児科
 日本医師会主催の母子保健講習会を受講してきたので、報告書(八戸市医師会報掲載予定)を3回に分けて掲載します。2回目までが講演の内容のメモ。3回目は感想と私見です。

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平成24年度母子保健講習会
平成25年2月17日(日) 東京都 日本医師会館

 東京は快晴、旧東海道をジョギング。えんぶり初日の八戸は湿った大雪。今回は出生前診断、生殖医療と、小児保健法を中心とした子育て支援政策についての密度の濃い講演を受講した。

メインテーマ「子ども支援日本医師会宣言の実現を目指して-7」

講演

1) 出生前診断の新たな展開とその課題
   平原史樹(横浜市立大学附属病院長)

 母体血胎児DNA出生前診断(NIPT)について学会から運用の指針案が提議されている。NIPTは染色体分析検査ではなく胎児・胎盤由来cell-free DNAを用いた診断であり、確定には羊水検査が必要である。陽性的中率は一般の集団では低下するため、マススクリーニングではなくハイリスク群に限定し、認定施設において複数回の遺伝カウンセリングが必須である。

 ダウン症の出生率は高齢出産の増加に伴い増加し続けている。日本では中高生の生物学教育で遺伝子の多様性についてほとんど教えられていないことが大きな問題である。

2)わが国の生殖医療の未来に求めるもの
   吉村泰典(慶應義塾大学産婦人科教授)

 生殖補助医療(ART)により全世界で500万人、わが国でも27万人以上の子どもが誕生している。国内でART出生児は総出生児数の2%を超え、欧米では3~4%に達している。日本では欧米より治療年齢が2~3歳高齢で、38歳を過ぎると妊娠・生産率は急速に低下する。

 多胎児は90年代に急増して問題となったが、二度の会告により三胎以上は減少した。胚移植は2個よりも1個の方が予後は良い。着床前遺伝子診断は学会ガイドラインで規制しつつ容認しているが、着床前スクリーニングは禁止している。規制は国により異なり、男女産み分けのための海外渡航が現実化している。

 米国では40歳以上は卵子提供が主で、ARTの12%に達している。卵子提供には倫理・医学両面での問題が存在する。そのほか、クローン技術を応用した受精卵の治療、凍結受精卵、卵巣凍結・移植、ES細胞やiPS細胞から生殖医療への展開の可能性と限界などについても解説された。

■ 卵子提供による妊娠
1. 倫理的問題点
・提供者に過排卵操作によるリスクを負わせる
・金銭の授受
・家族関係や人間関係が複雑になる
2. 医学的問題点
・高齢妊娠による産科的リスク
・卵子提供による遺伝的不適合

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