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子どもの熱中症は予防できる(7/15デーリー東北記事より)

2017年07月15日 | こども・小児科
本日(7/15)のデーリー東北に、子どもの熱中症に関する記事が掲載されました。その中で、私のコメントも一部採用されていますが、実際には、取材に来た記者に以下のようなメモ(少し手を加えてあります)をあらかじめ送った上で追加の説明し、それを基に記事にしていただきました(画像を後で追加します)。

ポイントは、乳幼児が殊更に熱中症になりやすいわけではなく、育児やケアの過誤が主であり、普通に気をつけて貰えばほとんどは予防可能なこと。年長児では学校行事、部活やクラブスポーツでの教師・指導者の問題。子どもが熱中症になるとすれば、その原因の大半は親や教師、指導者にあると言えると思います。
その他、一般的に言われている点と少し違った角度から見た説明も含まれています。

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まず、熱中症について一般向けに公開されているのHPや資料を参照してください。
その上で、実際にはどうなのかという考え(私見も含めて)をお伝えできればと思います。

熱中症について学ぼう
https://www.netsuzero.jp/learning
熱中症、こんな人は特に注意!「子ども」
https://www.netsuzero.jp/learning/le04
熱中症環境保健マニュアル
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php

①子どもの方が熱中症にかかりやすい? その原因は?

一般論としては
・体重あたりの水分量が多く、必要な摂取水分量の割合が多い(脱水になりやすい)
・体温調節中枢が未熟
・体表面積(体重あたり)が大きく、環境温の影響を受けやすい
・汗をかき出す温度が高く、反応がゆっくり
・身長が低いので地面の温度の影響を受けやすい
その他に、
・自らの意志で水分をとったり環境を調節しにくい
などがありますが、
「子どもの方が熱中症にかかりやすい」という「定型文(決まり文句)」のようなものについて、
・確かに統計的には「十代の子ども」と高齢者が多いという傾向はあり、上記の資料にもそのような表現がありますが、必ずしも「子どもの方が熱中症にかかりやすい」とは言えません。
・むしろ、子どもの熱中症のほとんどは予防可能であり(最重要)、適切なケアや運動の選択などをしていれば、そんなに熱中症になるわけではない、と考えていただきたい。(後述)

②熱中症の症状で子ども特有のものは?

・熱中症に特有の症状というのはありません。子どもも同じです。
・具合が悪い。ぐったりするなどは既に進んだ症状。
・症状で何かを見分けるようとするのではなく、環境や状況などが重要。
・頭痛、嘔吐、発熱、倦怠感などは、風邪(この時期だとウイルス性の夏風邪)と「文面だけでは」区別することはできません。(診察すれば大体わかりますが)
・だから、「風邪ではなく熱中症ではないかと疑うべき」という流れになりがちですが、むしろ最近では、明らかに風邪の経過や所見なのに熱中症ではないかと聞いてくる親も多く、過度の心配を助長するような記載は避けるべきかと考えます。
・熱中症は、「その時にその場で」症状が出て悪くなるものです。運動をして帰ってから夜に熱が出てきたというのは、熱中症の経過ではありません。
・上記のような症状は、要するに「具合が悪い」ということです。子どもの具合、年長児であれば自分の具合を、ちゃんとみて把握することが大事。ごく普通のことで、熱中症に限った特別なことではありません。
・繰り返しますが、症状で見分けたりする以前に、適切な環境、水分摂取、運動の選択などを行うことが肝要。

③どんな状況で熱中症は起こりやすいのか?

・乳幼児の場合は不適切な養育・虐待(ネグレクト;車内に放置などは論外ですが)、車内でクーラーをつけていても、片側だけ直射日光があたるなど
・不必要なレジャー(夏休みに上の子と一緒に乳幼児をテーマパークや海水浴に連れまわすなど)
・ベビーカー(アスファルトの照り返し)
・年長児の場合は、運動(部活・クラブスポーツなど)
・熱を発散しにくい服装・ユニフォーム(野球、剣道など)
・いずれの種目でも、トレーニングとしてのランニング中
・校内マラソン大会など

④親が子どものためにできる対策などがあれば。

・まず「熱中症の予防に水分摂取は必要(=必要条件)」であっても、「水分を取っていれば熱中症にはならない(=十分条件)」ではない、ということをメディアが逆の間違ったメッセージとして伝えていないか。。今年になって「水分・水分」の大合唱ではなく、クーラーや高熱環境を防ぐなどの一番大事なことが優先的に言われるようになってきていると感じられますが。
・情報の把握 暑さ指数(WBGT) 環境省サイト スマホのアラート
・上記のような不必要な外出や活動をしない
・服装(風通しや速乾性素材)や帽子、日傘、日陰、水分など一般的なこと
・具合が悪そうであれば(上述)、涼しい室内や木陰などに移動し、水分摂取や冷却などを行う
・水分の選択 「イオン飲料(ポカリ)神話」 乳幼児は麦茶 運動時はイオン飲料(スポーツドリンクという名称が普及してしまっている)ではなく、市販の経口補水液を適度に希釈する。1時間以上の継続的運動なら経口補水液(塩分が多い)そのままでも構わないが、むしろそのような運動は避けるべき。
・親もそうですが、特にスポーツ指導者に求められること
 ・時間帯(朝や夕方)の選択や継続時間、休憩時間
 ・トレーニングの選択 長距離走ではなく短いトレーニングの組み合わせなど
 ・一律のトレーニングの強制ではなく、個人個人でのメニュー
 (トレーニング状況、体力、判断力などにより新人と高学年は変えるなど)
 ・馴化(1日涼しいクーラーの室内にいないで、少しずつ暑い環境に出す)
 ・効率重視、スポーツ医学、体育会系体質(気力・根性)からの脱却
 ・休む(運動しない) これが最も重要
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