▼ SPEEDI隠蔽批判報道は的外れか追及が甘い。政府が何としても隠そうとしたのは飯舘村汚染(3/15夜)ではなく、その前の東京への放射性プルーム襲来(3/15朝)であったと考えるのが、ごく当たり前の論理だ。(以下、いくつかの状況証拠から論証してみるが、具体的な証拠を知る立場にはないので、それ以上の追及はここではできない。)
この日は関東全域に少なくとも屋内退避(全経済活動停止)を命ずるべき状況だったが、政府は絶対にそんなことはしないしできないと確信していた。しかし、翌日になればメディアも国民もいくら何でも気がつき、大騒ぎになるだろうと判断した。(前段は当たっていたが後段は間違っていた)
▼ NHK ETV特集取材班による『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』の第一章に次のような記載があるのを読んで、いくつかの状況証拠が繋がってきたのを感じた。
「実は前日(註:3月14日)の深夜ある専門家筋からの情報でこの日にプルーム(放射性雲)が東京・横浜方面に流れると聞いていた。朝早く起きてメールなどで知っている限りの友人に知らせた。職場の上司にも、研究所員を自宅待機にするよう進言した。娘もありとあらゆる友だちに携帯メールで「いまそこにある危機」を知らせた。」
この章は七沢潔ディレクターの執筆。この「専門家筋」が誰なのかは突いても出てこないだろうが、SPEEDI情報ではないかと推察される。七沢氏はチェルノブイリ以来、原発問題を追及し続けており、SPEEDIの存在やその情報を入手できる人を知っていたとしても不思議ではない。あるいは、SPEEDIそのものではなくても、原発の状況と風向き情報などを総合的に判断できる専門家だったのかもしれないが、「東京・横浜方面に流れる」という表現は具体的すぎる。
(追記:この部分を引用したのは七沢氏が情報を公表せずに身内や知人だけに伝えたことを非難しようとしたわけではない。あの状況ではそれ以上のことは出来なかったと思うし、私自身も、3/15には家族にしか連絡しなかったから。しかし、1年経って状況が変わって来ており、情報源やルート、SPEEDI隠蔽問題との関連などを明らかにする時期が来ているのではないか。)
問題はこの記事。
▼ 文科相ら「公表できない」SPEEDIの拡散予測
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201203030112.html
「昨年3月15日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測について、当時の高木義明文部科学相ら政務三役や文科省幹部が協議し「一般にはとても公表できない内容と判断」と記した内部文書が作成…」「予測は原子炉内の全ての放射性物質の放出を想定し、文書には「関東、東北地方に放射性雲が流れるとの結果が出た」と広範囲な流出も記載 …文書は昨年3月19日付。政務三役らが出席した15日の会議で、試算結果を三役が見て「一般には公表できない内容であると判断」 …当時副大臣だった鈴木寛参院議員は「全量放出との前提は現実にはありえず、パニックを呼ぶ恐れもあった」と説明した。」
これでは具体的にどの情報を見て「とても公表できない内容」と判断したのかが判然としない。日付は問題の3月15日、菅前首相が東電に乗り込んだ日だ。政府首脳は当時SPEEDIの存在も知らされていなかったと主張しているがそれも嘘だと考えるべき。文部科学大臣や文科省幹部だけでこんな重要なことを決められるはずがない。(高木義明文部科学相も戦犯の1人として捜査対象に入れるべきだ。)
状況を振り返ってみてみれば、最初の危機的状況は飯舘村・福島市方面ではなく、東京・横浜への大襲来であり、「一般には公表できない内容」がそれに相当すると考えるのが普通だ。
▼ 文部科学省のSPEEDIのページを探してみた。
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)等による計算結果(文部科学省)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_SPEEDI/
福島第1原子力発電所(単位放出 WSPEEDI)[平成23年3月15日(火曜日)](PDF:435KB)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1770/2011/03/1305748_0315_06.pdf
福島第1原子力発電所1号炉(全量2)[平成23年3月14日(月曜日)](PDF:309KB)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1770/2011/03/1305748_0314_01.pdf
…「全量放出」という条件では後者だろうが、東京横浜直撃という画像では前者がまさにその情報だ。PDFから切り取った画像を最後に掲載しておく。
▼ SPEEDIの公開情報をチェックしてみたが、3月15日朝の拡散予測は東京に赤とオレンジの細い筋が真っ直ぐ押し寄せている。3月15日の朝に2号機爆発のニュース(これは予測の範囲内だったが)とアメダスの風向きを見てこれはまずいと思った。風向きの変化までは想定していなかったが、前夜に予測は出ていたのだ。
▼ 東京へのSPEEDI拡散予測を隠せば、その後の飯舘村方面への拡散予測も何もかも隠さざるを得ない。結果として、運命の風と雨(雪)により飯舘村や福島市が汚染されたが、これがいわき市や水戸市であっても何らおかしくなかった。もちろん、東京や横浜であった可能性もあった。
▼ 政府が守ろうとしたのは何だったのか。東京に屋内退避命令を出せば、東証も停止となり株は暴落。世界中の投資家が日本から資金を引き上げて、損失は放射能汚染の補償どころの話ではなくなる。今こうやって直接被災していない多くの国民が(形だけでも)普通に暮らしていられるのは、政府がSPEEDI情報を隠してくれたお陰だと言うこともできる。それは福島や関東・東北の広い地域の放射能汚染という犠牲の上で成り立っているものだが。
▼ 昨年3月15日~16日の放射性物質拡散予測(SPEEDI)。データはKr85だが他の放射性物質も当然一緒に押し寄せた。
▼ 3/15 11時~21時の積算値 吸入による1歳児の甲状腺被曝等価線量
川内村にかかっている内側の濃い点線が1000mSv、いわき市にまで広がっている外側のオレンジの点線が1mSv あくまでシミュレーションによる計算値ですが
※ なお、当日(3/15)の放射性物質拡散シミュレーションについては数日前に書いたが、13時の図を再掲しておく。SPEEDIの予測がほぼぴったり当たっていることがわかる。(どちらもシミュレーションではあるが)
国立環境研究所の放射性物質シミュレーションを見直してみる 運命の風と雨・雪 関東の I-131被曝は?(2012年03月17日)
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b69c56540c1eee7fbeb914fd59265fbe
この日は関東全域に少なくとも屋内退避(全経済活動停止)を命ずるべき状況だったが、政府は絶対にそんなことはしないしできないと確信していた。しかし、翌日になればメディアも国民もいくら何でも気がつき、大騒ぎになるだろうと判断した。(前段は当たっていたが後段は間違っていた)
▼ NHK ETV特集取材班による『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』の第一章に次のような記載があるのを読んで、いくつかの状況証拠が繋がってきたのを感じた。
「実は前日(註:3月14日)の深夜ある専門家筋からの情報でこの日にプルーム(放射性雲)が東京・横浜方面に流れると聞いていた。朝早く起きてメールなどで知っている限りの友人に知らせた。職場の上司にも、研究所員を自宅待機にするよう進言した。娘もありとあらゆる友だちに携帯メールで「いまそこにある危機」を知らせた。」
この章は七沢潔ディレクターの執筆。この「専門家筋」が誰なのかは突いても出てこないだろうが、SPEEDI情報ではないかと推察される。七沢氏はチェルノブイリ以来、原発問題を追及し続けており、SPEEDIの存在やその情報を入手できる人を知っていたとしても不思議ではない。あるいは、SPEEDIそのものではなくても、原発の状況と風向き情報などを総合的に判断できる専門家だったのかもしれないが、「東京・横浜方面に流れる」という表現は具体的すぎる。
(追記:この部分を引用したのは七沢氏が情報を公表せずに身内や知人だけに伝えたことを非難しようとしたわけではない。あの状況ではそれ以上のことは出来なかったと思うし、私自身も、3/15には家族にしか連絡しなかったから。しかし、1年経って状況が変わって来ており、情報源やルート、SPEEDI隠蔽問題との関連などを明らかにする時期が来ているのではないか。)
問題はこの記事。
▼ 文科相ら「公表できない」SPEEDIの拡散予測
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201203030112.html
「昨年3月15日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測について、当時の高木義明文部科学相ら政務三役や文科省幹部が協議し「一般にはとても公表できない内容と判断」と記した内部文書が作成…」「予測は原子炉内の全ての放射性物質の放出を想定し、文書には「関東、東北地方に放射性雲が流れるとの結果が出た」と広範囲な流出も記載 …文書は昨年3月19日付。政務三役らが出席した15日の会議で、試算結果を三役が見て「一般には公表できない内容であると判断」 …当時副大臣だった鈴木寛参院議員は「全量放出との前提は現実にはありえず、パニックを呼ぶ恐れもあった」と説明した。」
これでは具体的にどの情報を見て「とても公表できない内容」と判断したのかが判然としない。日付は問題の3月15日、菅前首相が東電に乗り込んだ日だ。政府首脳は当時SPEEDIの存在も知らされていなかったと主張しているがそれも嘘だと考えるべき。文部科学大臣や文科省幹部だけでこんな重要なことを決められるはずがない。(高木義明文部科学相も戦犯の1人として捜査対象に入れるべきだ。)
状況を振り返ってみてみれば、最初の危機的状況は飯舘村・福島市方面ではなく、東京・横浜への大襲来であり、「一般には公表できない内容」がそれに相当すると考えるのが普通だ。
▼ 文部科学省のSPEEDIのページを探してみた。
緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)等による計算結果(文部科学省)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_SPEEDI/
福島第1原子力発電所(単位放出 WSPEEDI)[平成23年3月15日(火曜日)](PDF:435KB)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1770/2011/03/1305748_0315_06.pdf
福島第1原子力発電所1号炉(全量2)[平成23年3月14日(月曜日)](PDF:309KB)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1770/2011/03/1305748_0314_01.pdf
…「全量放出」という条件では後者だろうが、東京横浜直撃という画像では前者がまさにその情報だ。PDFから切り取った画像を最後に掲載しておく。
▼ SPEEDIの公開情報をチェックしてみたが、3月15日朝の拡散予測は東京に赤とオレンジの細い筋が真っ直ぐ押し寄せている。3月15日の朝に2号機爆発のニュース(これは予測の範囲内だったが)とアメダスの風向きを見てこれはまずいと思った。風向きの変化までは想定していなかったが、前夜に予測は出ていたのだ。
▼ 東京へのSPEEDI拡散予測を隠せば、その後の飯舘村方面への拡散予測も何もかも隠さざるを得ない。結果として、運命の風と雨(雪)により飯舘村や福島市が汚染されたが、これがいわき市や水戸市であっても何らおかしくなかった。もちろん、東京や横浜であった可能性もあった。
▼ 政府が守ろうとしたのは何だったのか。東京に屋内退避命令を出せば、東証も停止となり株は暴落。世界中の投資家が日本から資金を引き上げて、損失は放射能汚染の補償どころの話ではなくなる。今こうやって直接被災していない多くの国民が(形だけでも)普通に暮らしていられるのは、政府がSPEEDI情報を隠してくれたお陰だと言うこともできる。それは福島や関東・東北の広い地域の放射能汚染という犠牲の上で成り立っているものだが。
▼ 昨年3月15日~16日の放射性物質拡散予測(SPEEDI)。データはKr85だが他の放射性物質も当然一緒に押し寄せた。
▼ 3/15 11時~21時の積算値 吸入による1歳児の甲状腺被曝等価線量
川内村にかかっている内側の濃い点線が1000mSv、いわき市にまで広がっている外側のオレンジの点線が1mSv あくまでシミュレーションによる計算値ですが
※ なお、当日(3/15)の放射性物質拡散シミュレーションについては数日前に書いたが、13時の図を再掲しておく。SPEEDIの予測がほぼぴったり当たっていることがわかる。(どちらもシミュレーションではあるが)
国立環境研究所の放射性物質シミュレーションを見直してみる 運命の風と雨・雪 関東の I-131被曝は?(2012年03月17日)
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b69c56540c1eee7fbeb914fd59265fbe