三千人以上を生きたまま人体実験して殺した731部隊が免罪され、厚生省 ...
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https://mainichi.jp/articles/20170630/k00/00e/040/275000c
父の覚悟の証言、後世に…元高校教諭が出版
毎日新聞2017年6月30日 14時00分(最終更新 6月30日 14時27分)
旧日本軍が中国人捕虜らに人体実験を行った「731部隊」の史実を残そうと、名古屋市緑区の元高校教諭、神谷則明さん(66)は今月、部隊員だった父の証言をまとめた著書「長き沈黙 父が語った悪魔の731部隊」(かもがわ出版)を出版した。「父は蛮行を悔い、戦争で何が起きたか知ってほしいと勇気を出して証言した。その遺志を継ぎたい」と話す則明さんは、脳出血の後遺症で右半身が不自由となりながら、講演活動を続けている。【吉富裕倫】
則明さんの父、実さんは愛知県一宮町(現一宮市)出身。1940年に731部隊に入り、当初は炊事を担当した。その後、医師による実験を手伝った。試験管に入れたノミを中国や旧ソ連の捕虜の手に押し当ててペストに感染させたり、ペスト菌爆弾で捕虜の体に付着したノミを数えたりした。
97年に82歳で死亡した実さんは、その約3年前、初めて則明さんに事実を明かした。終戦時、命令により全ての証拠を破壊・焼却処分し、戦後も「話したら殺される」と思っていた。証言したのは、死んでいく年齢と覚悟し「もう、殺されても構わない」と考えたからだという。
戦争の残虐さを伝えたいと、父の体験を紹介する講演を始めた当初、則明さんは父のことだと言えず「知人の体験」とした。しかし父の覚悟を思い、実名で証言を紹介するようになった。「中国のプロパガンダだ。うそをつくな。子どもがどうなるか分かっているな」と脅迫されたこともある。そんな時、「父が体験し、話したことだから事実だ」と反論した。
則明さんは高校退職前の61歳の時に脳出血を患い右半身が不自由となった。今も車椅子生活を送るが、リハビリで言語能力を回復させ約1年半前に講演を再開した。延べ講演回数は470に上る。
出版は、731部隊にまつわる「悪魔の飽食」コンサート愛知公演が7月2日、名古屋市で開かれるのに間に合わせた。則明さんは呼びかけ人の一人。安全保障関連法や改正組織犯罪処罰法(「共謀罪」法)の成立が相次ぐ時代に、「日本は戦争ができる国になろうとしている。戦争を語り継ぐことが大切だ」と訴えた。
731部隊
旧日本陸軍が1933年に創設し、中国東北部(旧満州)を支配した関東軍の細菌戦部隊「防疫給水部」の別称。京都大医学部出身の石井四郎・陸軍軍医中将が部隊長で「石井部隊」とも呼ばれていた。多くの研究者が参加し、ペスト菌などの細菌兵器や毒ガスを開発。中国人捕虜らに人体実験を行い、多くの犠牲者を出した。