ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は30日、トルコ訪問からの帰路の機中で記者会見し、中東やアフリカなど世界各地で戦乱が続く状況を「私たちは断片的に『第3次世界大戦』の中にある」と強い懸念を示した。その上で「広島と長崎から、人類は何も学んでいない」と、核廃絶が進まない現状を批判した。

 第2次大戦終結と原爆の悲劇から来年で70年を迎えることについて、朝日新聞など日本記者団の質問に答えた。

 法王は「第3次大戦」について、「人よりお金を中心に置く思想」が、戦争の背景となる政治経済の問題や敵対を生んでいると指摘。戦争で利益を得る軍需産業を「最も力を持つ産業の一つとなっている」と批判した。シリアの化学兵器を例に挙げ、保有を批判した先進国側の企業こそが製造などに関与してきたのではないかと疑念を示した。

 核兵器について「神は、無知な私たち人類に創造力を授けた。人類の文明は、有益に使える原子力にまで至った。しかし人類はそれを、人類を殺すために使った」と1945年の原爆投下を振り返った。そして、その後も各国が核兵器を持ち続ける現状について「そんな文明は、新たな『無知』だ。『終末的』と呼ぶべきだ」と述べ、「もし終末的なことが起きれば、人類は再び一から始めなければならない。広島と長崎がそうしたように」と強く警告した。

 2代前の法王ヨハネ・パウロ2世は、81年の訪日の際、広島と長崎を訪れた。日本カトリック司教協議会は、来年中のフランシスコ法王の訪日を招請している。(法王特別機中=石田博士