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【東北大震災】 <もう一度会いたい> 何で先に逝ったんだ

2015-12-11 03:25:04 | 震災、津波

河北新報ONLINE NEWShttp://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201512/20151210_13005.html?fb_action_ids=409933705869547&fb_action_types=og.likes より転載

<もう一度会いたい>何で先に逝ったんだ

遺品を収める棚を見上げる。ビールに手が伸びる
 

◎(8)不意にこみ上げ 涙

 涙で目が曇らなかった日を思い出せない。
 宮城県石巻市の今野浩行さん(53)は震災で長女麻里さん=当時(18)=、次女理加さん=同(16)=、長男大輔君=同(12)=を亡くした。
 人生これからという時に世を去った不遇を哀れむ。
 子を守れなかった無力を恥じる。
 頬がぬれる。
 子のいなくなった人生を送る意味を見いだせない。
 「死にたい」
 夫がそう口走っていたのを妻のひとみさん(45)は何度か耳にしている。
 針岡橋に足が向く。
 欄干からのぞき込む。
 津波の遡上(そじょう)で川が氾濫し、命を奪った。
 引き込まれそうだ。身を投げる衝動に駆られる。

<酒に逃げる>
 家を流失し、仮住まいに居を求めた。
 初日の晩、ひとみさんに鍋をリクエストした。
 家族そろって鍋好きで何かというとみんなでつついていた。
 寄せ鍋が用意された。
 子の取り鉢も配膳されたのを見たら、たまらず涙があふれた。
 部屋には、子の写真をありったけ飾った。どこを向いても目に入るように。
 子と目が合う。
 鼻の付け根がツンとくる。
 酒に逃げた。意識が混濁し、悲嘆から解放される。
 こたつで寝入り、朝を迎える。
 酔いが覚めたら現実に引き戻される。それが嫌でまた酒に手を伸ばした。
 酒浸りで血圧が跳ね上がった。上で200を超す。血糖値もHbA1cが10%をオーバーした。6%台後半で糖尿病と言われる。
 ドクターストップが掛かった。
 「先生、糖質ゼロのやつでは駄目ですか」
 医師は返事をしなかった。

<男のくせに>
 震災遺族として中国地方に講演に行く機会があった。
 広島の原爆ドームに寄る。
 長男の大輔君が小5の学習発表会で「はだしのゲン」のゲンの弟を演じた記憶がよみがえり、目頭が熱くなった。
 涙は枯れることを知らない。泣きはらし、泣き疲れ、泣き明かしても尽きずにこみ上げる。
 不意に涙ぐむことがある。スーパーで買い物をしている時とか。髪を切っている時とか。子とは無関係の何の脈絡のない状況でウッとくる。
 ひとみさんには「男のくせに」と言われる。
 多分、お前より心(しん)が弱い。
 泣いてばかりいる。
 遺品を手にしても。
 子と遊んだ公園を通り掛かっても。
 いわさきちひろの絵を眺めても。
 テレビの「はじめてのおつかい」を見ても。
 何で親より先に逝ったんだ?
 死ぬ順番を変えては駄目だ。

 

2015年12月10日木曜日

 


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