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9.25【安倍首相、解散表明へ】◆東京新聞 社説「首相の冒頭解散 違憲の疑いはないか」 /◆木村草太が説く、やっぱり無視できない「憲法上の疑義」

2017-09-25 15:12:20 | 政治 選挙 
【衆院解散】
安倍晋三首相の記者会見は午後6時から 解散表明へ

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【東京新聞 社説】

首相の冒頭解散 違憲の疑いはないか

 安倍晋三首相が二十八日召集の臨時国会の冒頭で衆院を解散するという。野党による憲法規定に基づく臨時国会の求めは六月下旬からだ。解散でそれも流れてしまう。違憲の疑いが出てこよう。

 「権力者が都合のいいときに解散する。過去になかったことではないか」

 かつて衆院議長をつとめた河野洋平氏は二十日に東京都千代田区の日本記者クラブで語った。加計学園問題などで野党が臨時国会の召集を求めていたことにも触れ、「(首相が)一度も丁寧な説明をしないで解散するのは理解できない」と述べた。

 吉田茂首相の抜き打ち解散をめぐって、一九六〇年の最高裁判決がある。高度に政治性のある国家行為は裁判所の審査権の外にあり、最終的には国民の政治判断に委ねられる。これが首相の解散権の判例である。「審査権の外」だから、首相による解散権の行使は裁判所から自由に行われる。

 だからといって、「法からの自由」ではない。憲法学の泰斗・芦部信喜著「憲法」(岩波書店)には次のように記されている。

 <内閣に自由な解散権が認められるとしても、解散は国民に対して内閣が信を問う制度であるから、それにふさわしい理由が存在しなければならない>

 政府提出の重要法律案の否決、予算案の否決…、最高裁判決の中でも例示があった。

 解散権のような権限は本来、権力者が好き勝手に振り回してはいけないものなのだ。成文化されてはいないが、「法」に潜むブレーキである。権力の自己利益のための解散は「非立憲」、つまり憲法に基づく政治である「立憲」ではないとみなされる。

 今回の場合は野党四党が憲法五三条を使い臨時国会を六月二十二日に求めたことがポイントだ。この条文はいずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は臨時会を召集せねばならない。もう三カ月もたつ。

 条文に期限は書いていないが、常識的に考えて合理的期間はとうに過ぎていよう。かつ二十八日に開かれる臨時国会を冒頭で解散するとすれば、総選挙が行われ、国会審議はますます遠のく。憲法五三条に反する疑いが生じてくる。

 首相の解散権を制約する主要先進国からみれば、「乱用」と映るかもしれない冒頭解散劇になる。二十五日の首相の会見ではしっかりした説明を聞きたい。

 

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 現代ビジネス 2017.9.25

衆院解散、やっぱり無視できない「憲法上の疑義」木村草太が説く

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52964

解散権濫用を防ぐ「3つの対応策」とは

 

安倍首相は、9月28日召集の臨時国会冒頭、衆議院を解散する意向だという。小泉郵政解散以降、解散権の濫用気味の事案が多いと言われるが、今回の解散については特に批判が高まっている。憲法の観点から検討してみよう。

衆議院の解散は、天皇の国事行為

まず、衆議院の解散についての憲法規定を確認しよう。憲法7条3号は、次のように定める。

【日本国憲法7条3号】
第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
三  衆議院を解散すること。

このように、衆議院の解散は、天皇の国事行為とされている。もっとも、憲法7条は、どのような場合に解散できるのかについては何も規定していない。そして、解散が行われる場合を規定した憲法条文は、69条のみである。

第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

このように、内閣不信任の場合には解散が行われうる。

では、それ以外の場合に、解散をしてもよいのか。この点は、憲法制定当初、政界でも憲法学界でも激しく議論された。

しかし、現在の実務では、69条の場合でなくとも、7条の文言を根拠に、内閣が天皇に解散をするよう「助言と承認」をすれば解散できるとする解釈が定着している。また、憲法学説の多くも、69条非限定説を採っている。

とはいえ、69条非限定説は、解散権行使を内閣の好き勝手な判断に委ねる見解ではない。

 

そもそも、解散権のみならず、行政権や外交権などの内閣の権限は、公共の利益を実現するために、主権者国民から負託された権限だ。与党の党利党略や政府のスキャンダル隠しのために使ってよいものではない。憲法7条を改めて読み直すと、天皇の国事行為は、政府や与党の都合ではなく、「国民のために」行うものだと規定している。

このため、学説は、内閣が解散権を行使できるのは、国民に選挙で信を問うべき特別な事情がある場合に限定すべきだという。

最近の報道を見ていても、有名政治家が「今回の解散には大義がないのではないか」との疑義を呈しており、実務上も「解散には大義が必要」との認識があるのがわかる。

政策の是非を問うことが解散の理由になる条件

では、今回の解散に、大義はあるのか。

この点、教育無償化の是非、改憲発議、「人づくり革命」といった政策の是非を有権者に問うことが、今回の解散の理由となると指摘されている。

しかし、国民に政策の是非を問うのが解散の理由になるためには、次の二つの条件が満たされねばならない。

条件1:問うべき政策の内容が具体的に提示されていること
条件2:各政党が、その政策をどう評価しているかが明らかになっていること

まず、条件1が欠けると、有権者も各政党も、何を議論してよいかが分からない。また、問うべき政策内容が明確でも、条件2が充たされないと、有権者は、自分の意思を表明するために、どの党に投票すればよいのかが分からない。

現段階では、安倍首相が提案する政策内容は甚だ不明確で、改憲案の条文も示されていない。つまり、条件1が欠けている。

さらに、与野党交えた審議はおろか、首相の考えを説明する所信表明演説の機会すら設けられない見通しだというのだから、条件2も充たしようがない。

こういう状況では、「有権者に問うべき政策があるから解散する」との説明に何の説得力もない。森友問題・加計問題への追及かわしや野党の選挙準備不足を突くための党利党略解散だと言われても仕方がないだろう。

 

憲法53条を妨害する理由での解散?

さらに、今回は、憲法53条との関係も問題となる。この条文は次のように規定する。

第五十三条  内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

これは、多数派の横暴により国会が機能不全になるのを防ぐため、少数派の議員に対して、重要案件がある場合に国会召集を要求できる権限を与えた規定と言える。

今年6月22日、民進党や共産党の議員は、森友問題・加計学園問題などの審議のため、憲法53条後段に基づき国会召集を求めた。しかし、安倍内閣は召集を拒み続け、ようやく開会した臨時国会では、審議なしで冒頭に解散する見込みだという。

衆議院が解散されれば、国会は閉会となり、現在の衆議院議員の構成で審議を行う機会は失われる。つまり、この解散は、野党の国会召集要求を妨害するもので、憲法53条に違反すると評価される可能性もある。

解散を行う理由があるとしても、野党の求める審議を一定時間行ってから解散すべきだろう。

今後に向けた対応策を示そう

このように今回の解散には、無視できない憲法上の疑義がある。今後、不当な解散が繰り返されないようにするため、次の三つの対応を検討すべきだ。

対応1:憲法を改正して解散権の行使に限定をかける
対応2:2012年自民党改憲草案53条を実現する
対応3:法律で解散権行使の場合の厳格な手続を設ける

第一に、解散権を制限する改憲を考えるべきだ。今回の解散が報道されて以降、与野党の議員から解散の大義がないのではないか、との指摘が相次いだ。解散権の行使を大義ある場合に限定する改憲は、政治実務の感覚にも適合する。民進党は、今回の解散総選挙で、これを公約に盛り込む意向だというから、選挙を通じて議論を深めるべきだろう。

第二に、現行の憲法53条には、少数派の要求があった場合、いつまでに国会を召集すべきかが規定されていない。このことが、安倍内閣が、国会召集の要求をかわしてきた原因の一つとなっている。

他方、2012年発表の自民党改憲草案には、憲法53条に「二十日以内」という期限を設ける提案が盛り込まれている。野党は、総選挙で、この規定の実現を訴えてみてはどうだろうか。自民党の内閣が起こしてきた問題を繰り返さないために、自民党草案53条を実現しようというのは、何とも味わい深い改憲理由である。

第三に、憲法を改正しなくとも、法律で解散の手続をコントロールする方法もある。解散権が濫用される原因の一つは、内閣が、公式に解散の理由を表明する手続がないことである。

そこで、次のような手続を設けてはどうか。

 
1. 内閣が衆議院を解散する場合には、あらかじめ解散の意向を表明しなくてはならない。
2. 解散の意向表明から、正式に解散を宣言するまでには、最低でも48時間の時間をおかなくてはならない。
3. 意向表明から正式な解散宣言がなされるまでの時間、衆議院で、首相出席の下で解散の理由についての審議を行う。

このような手続があれば、解散の理由が不明確なまま総選挙に突入する事態は避けられる。国民は、解散理由の適否も投票の判断材料とするようになるので、不当な解散権行使を抑制できる。

このような手続の設定は、内閣の解散権を縛るものではなく、手続を定めているだけなので、憲法改正ではなく、法律で実現することも十分可能である。

以上のように、解散権の濫用を防ぐためになすべき対策はいろいろある。総選挙では、こうした点について、ぜひ議論を深めてほしい。

 

 

 

 


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