保守論客の西部邁さん死去 言論界は「貴重な思想家を失った」
保守派の評論家で元東京大教授の西部邁さんが2018年1月21日、死亡したと、複数のメディアが同日夕、報じた。78歳だった自殺とみられている。 保守派の重鎮に訪れた突然の訃報に、言論界は「貴重な思想家を失った」と悲しみにつつまれている。
新著を出したばかりだった
TBSなどの報道によると、1月21日6時30分すぎ、東京都大田区田園調布5丁目の多摩川で、「父親が飛び込んだようだ」と西部さんの息子から110番通報があった。警視庁が川で流されている西部さんを見つけ救助したが、搬送先の病院でまもなく死亡が確認されたという。
西部さんは1939年、北海道生まれ。東京大に入学し、60年の安保闘争に参加した後、86年に東大教養学部教授に就任。真正保守を標榜する言論誌「発言者」(現在は廃刊)の主幹を務め、現在は後継誌「表現者」の顧問を務めていた。
テレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ」でも活躍した。最近では2017年12月、新著「保守の真髄 老酔狂で語る文明の紊乱」(講談社現代新書)を刊行し、亡くなる前日の18年1月20日に放送された「西部邁ゼミナール」(TOKYO MX)に出演していた。
東浩紀「もういちどお会いしたかった」宮台真司「泣いています」
西部さんの訃報を受けて、ツイッターでは著名人から惜しむ声が相次いでいる。
元東京都知事の舛添要一氏は、「30年前、東大改革に失敗して、村上、公文、西部、私の4人が辞表を出した。その後、『朝まで生テレビ』などで、保守陣営から、左翼の似非改革主義者と闘ってきた同志だ。悲しい。今は似非保守主義者と闘う時代なのに、貴重な思想家を失った。ご冥福をお祈りする」と哀悼の意を表した。
批評家の東浩紀氏も、「いちど長い会話をしたことがあったけど、あれももう10年以上前。もういちどお会いしたかった。心より、ご冥福をお祈りいたします」とツイート。
社会学者の宮台真司氏も「悲しくて泣いています。かつて僕と激突して番組を退席された後、先生は楽屋で最後まで待っておられて僕を励ましてくれました」とつぶやいた。
保守論壇に詳しい著述家の古谷経衡氏は、「ネット右翼に全く媚びず、保守とは何かの神髄を説き続けた偉大な思想家であったが、後進が存在しない以上、保守言論界における痛手は極めて大きい」と説いた。
西部邁さん死去 自殺か ウーマン・村本さんとの対談で「日本人はJAP.COMの社員」
評論家の西部邁(すすむ)さん(78)が21日、死去した。東京都大田区田園調布5丁目の多摩川に自ら入り、警視庁と消防が西部さんを救出したが、約2時間後に搬送先の病院で死亡が確認された。
【ウーマンの村本さんとの対談はこちら】
警視庁によると、同日未明に家族が「父親がいない」と110番通報。行方を捜しているなかで、多摩川で発見された。河川敷に遺書が残されており、自殺とみられている。最近は体調が優れなかったという。
1939年、北海道生まれで東大経済学部卒。元東大教授。保守派の論客として活躍した。著書に「大衆への反逆」などがある。最近まで雑誌「表現者」顧問をしていた。
2017年12月18日号のAERAでは40歳以上、年の離れた芸人のウーマンラッシュアワー・村本大輔さんと対談し、話題を呼んだ。
西部さんは村本さんとの対談で一度も投票に行ったことがないことを笑顔でこう明かしていた。
「最初の投票用紙が送られてきた20か21歳のとき、東京拘置所にいた。当時は東京大学の学生で、暴力革命を唱え、政治犯の被告として収監されていた。暴力といっても首相官邸や国会の門扉を壊した程度だったけど、確信犯だったからそんなやつが投票をするのは間尺に合わないと考えた。その後も転居の連続で10年ぐらい投票用紙が届かなかったし、あえて投票のことも考えませんでした」
また、「投票が権利ではなく義務だというなら、放棄した場合には罰金を設ければいい。世界にはそういう国もある」と持論を村本さんに披露していた。
「安倍さんとは彼が最初に総理を辞めた後、1年間研究会を開いて正しい保守についてレクチャーをしていました。そのうえで気に入らないことを言わせてもらえば、日米同盟の下で安保法制をつくったことです。僕は安保法制自体には何の問題もないとの立場で、自衛隊が行く必要のある特殊事情があるなら、地球の裏側でも行け、鉄砲も撃てと思う。だけど、それを米国のような国とやるな。米国は北朝鮮の核武装はけしからんと言っておいて、自分たちの友好国のイスラエルなどには、どんどんやれと言っているような国です」
現在の日米関係については辛辣に語っていた。
「米国もめちゃくちゃになっているから日本を守る気なんてない。それに、北朝鮮のような侵略性むき出しの国が核武装すると世界の迷惑だからつぶせと言うけど、最も侵略的なのは米国に決まっている。僕は日本人だけど、その圧倒的大多数はアメリカンデモクラシーの名の下にアメリカの属国民、つまりJAP.COMの社員になっている」
村本さんはツイッタ―で≪堀潤さんから「とんでもない人がいたよ!」って教えてくれたのがこの人。そのあとTwitterで西部邁さんと話したいって書いたらAERAから対談のオファー。何というか目のキラキラした少年と話してるような、そんな人。また話したかった。≫と記していた。(AERAdot編集部)