http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015083002000135.html
社説:週のはじめに考える デモの民主主義が来た
きょうも国会周辺などで行われる「デモ」が力を増しています。民衆の声をのせた風が政治に吹き込む時、日本の民主主義はどう変わるのでしょうか。
いま、安全保障法制で政治が国民世論から離れていくのを目の当たりにして「居ても立ってもいられずに」「子や孫たちのため私たちの手で何とかしなければ」。全国各地で繰り広げられるデモの渦中で、多くの市民が口にする、政治への強い参加意欲です。
日本の政治空間にデモの存在感が増しています。東日本大震災後の「脱原発」以降、ここ数年で定着した大規模デモは、個別の利害が絡む従来の組織動員型デモと区別して、「草の根デモ」と呼ばれることがあります。
◆シアトルの教え
ほとんどはインターネットを介し、さまざまな生活感や価値観をもつ不特定の、つまり「草の根」の一般市民が自由につながり自発的に参加するデモの形です。
デモといえば思い浮かぶ光景があります。一九九九年十二月、米シアトルでの出来事です。
ちょうどインターネットが爆発的に普及したころ。世界貿易機関(WTO)閣僚会議の周辺に世界から約五万人が集結した「反グローバリズム」運動は、草の根型デモのはしりでした。このデモが今に残した教えが二つあります。
一つ目は、ネットがもたらす連帯力の効果です。会議の専門的な議論を、ネットの交流で一般市民向けにかみ砕き、デモ参加の敷居を低くしたことでしょう。
二つ目は、暴力の逆効果。草の根デモの自由さゆえに統制が利かず一部が暴徒化し、民主主義的なデモの効果を自らそいでしまったことです。
さて日本のデモがここまで大がかりに定着してきたのはなぜか。シアトルの教えをなぞれば見えてきます。
◆参加の敷居を下げる
一つ目。市民レベルの議論が広まった背景には、原発政策をはじめ特定秘密保護法、安保法制と矢継ぎ早の国論を二分する大問題に対し、国民の関心がおのずと高まったことがあります。
さしずめ憲法や国民の命に関わる重大事では「選挙で全権一切を政権に預けたわけではない」との思いが、人々の政治参加意欲をかき立て、デモに向かわせたのでしょう。その過程で例えば安保法制では、自衛権の「集団的か個別的か」という政治家の議論が、ネットで「戦争か平和か」の選択に変換され、敷居を下げた議論の輪が広がっていったのです。
二つ目の暴力性は、当初の脱原発デモが暴力とは無縁の3・11追悼ムードから始まり、非暴力の流れが後のデモに根付いたことで、これも市民参加の敷居を下げデモの拡大を促しました。
日本の草の根デモはこうして、選挙とは別に、国民が求めた第二の参政権の使い方として定着しました。しかし、ここで問題となるのは、選挙を通じた議会制民主主義とデモとの関係です。
一二年春の脱原発デモ直後に、『「デモ」とは何か』(NHK出版)を著した五野井郁夫・高千穂大准教授がそこに引用した古い論文に興味深い考察があります。
いわゆる六〇年安保に際して、戦後を代表する政治学者、丸山真男氏が残した『議会政治をきずくには』の一節です。
要約すれば、議会内の「院内」政治と、デモなど社会運動による「院外」政治とを切り分けて、双方のずれをなくし、風通しをよくしていくことが、健全な議会政治には肝要なのだ、と。五野井氏はこれを踏まえ、議会制とは別の、デモによる直接民主主義への期待を記しています。
◆政治家の意識の中に
そして今日、安保法制に挑むデモは高、中、若年の各層に広がり規模拡大の勢いは止まりません。 昨年は騒音を理由に国会前のデモ規制まで示唆して強気だった政権も、その勢いに押されてか、今年七月の安保法案の衆議院通過はその週末に企画された大規模デモの前に急ぎ足ですり抜けた印象です。安倍晋三首相も法案通過後、国民の理解が進んでいないことを認めざるを得ませんでした。
世論調査の結果もあるでしょうが、政治家たちの意識の中にデモが大きな地位を占めてもいるはずです。これはもはや、デモが議会制と並ぶ第二の民主主義に成長した姿なのかもしれません。
ともかくも「院外」の市民たちは、デモの民主主義を日本の政治に打ち立てつつあります。
あとは「院内」政治が窓を開けて風を通すことです。健全な議会政治を築くため、デモの声に耳を傾けることです。さもなければ、デモで巻き上がった風は次の「院内」をつくる選挙に、何らかの形で吹き込んでいくはずです。
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〔目良 誠二郎さんFBより〕
8月30日の歴史的なデモ・抗議行動について真正面から論じた全国各紙の社説を調べてみました。
残念ながら全国紙は1社もありませんでしたが...
『東京新聞』『琉球新報』『沖縄タイムス』を先頭に地方紙が頑張っています。
ご一読下さい。
社説<安保法制反対集会 草の根の声聞き成立断念を>
(琉球新報 8月31日)
http://ryukyushimpo.jp/ne…/storyid-248112-storytopic-11.html
社説<県議会意見書 沖縄の声は安保法廃案だ>
(琉球新報 9月1日)
http://ryukyushimpo.jp/ne…/storyid-248175-storytopic-11.html
社説<[安保法制 きょう全国行動]民主主義を更新しよう>
(沖縄タイムス 8月30日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=130756&f=t
社説<[安保法案と辺野古]連動する反対のうねり>
(沖縄タイムス 8月31日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=130856
社説<安保法制 国会の外に響く声を聞け>
(西日本新聞 9月2日)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/192570
社説<【安保法案集会】誤解者扱いは筋違いだ>
(高知新聞 9月1日)
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=343443&nwIW=1&nwVt=knd
社説<野党再編/安保国会はそっちのけか>
(神戸新聞 9月2日)
http://www.kobe-np.co.jp/c…/shasetsu/201509/0008357825.shtml
社説<安保法制反対のうねり 政権に希薄な「国民主権」>
(福井新聞 9月1日)
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/78729.html
社説<安保をただす 大規模集会 抗議の声に向き合え>
(信濃毎日新聞 9月1日)
http://www.shinmai.co.jp/…/20150901/KT150831ETI090007000.php
社説<新安保法制 広がる反対運動 首相は民意受け止めよ>
(北海道新聞 9月1日)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/…/opin…/editorial/2-0028612.html