フィリピン中部シブヤン海で見つかった「戦艦武蔵」の様子が13日午前、インターネットで世界中に生中継された。映像から、艦体の各部が海底に散在している状況が判明。沈没時に爆発が起きたとみられる。戦闘の激しさを物語る貴重な資料だとして、研究者は艦体の保存や映像の解説・展示に動き出した。

 映像は、発見者の米マイクロソフト共同創業者ポール・アレン氏の調査チームが無人の探査機に搭載したカメラで撮影、同氏のサイト(http://musashi.paulallen.com/)を通じて世界に同時配信した。魚雷で激しく損傷した艦首付近、「大和」型の戦艦として特徴的な対空砲、プロペラ用のシャフトなどが鮮明に映し出された。

 武蔵は全長263メートルだが、艦橋の残骸や高角砲などは長さ880メートル、幅500メートルにわたって水深約1千メートルの海底域で見つかった。艦尾は艦首と離れた場所で発見。調査チームは「沈没時に少なくとも1回、火薬庫が大規模な爆発を起こした」と分析する。爆発で艦体は大きく二つに分断され、まだ発見されていない艦上機などは大破し、海底に埋もれた可能性があるという。

 日本の研究者の間では、東シナ海で大爆発して沈没した姉妹艦「大和」と比べ、武蔵は破損が少ない形で発見されるとの期待もあったが、映像を見た広島県の呉市海事歴史科学館の戸高一成館長(66)は「大和と同じようなダメージ。想像以上だ」と述べた。

 だが、海底約340メートルで見つかった大和と比べ、武蔵の発見場所は約千メートルと深く、海藻などの付着は少ない。戸高氏は「映像を分析するだけでも沈没時の詳しい状況がわかる」と期待する。同館はアレン氏らの許可を得たうえで、映像に解説をつけて展示することを検討するという。

 世界に配信された中継画像には、4時間で少なくとも27万人がアクセスした。日米を中心とした研究者の関心も高く、比国立博物館は近く、文化財保護に向けて調査を開始する。アレン氏は今後の具体的な方針を示していないが「日本政府や比政府と協力しながら対応する」としている。

 武蔵は第2次世界大戦中、大和と並ぶ世界最大の戦艦として建造。1944年10月、レイテ沖海戦にからみ、米軍機の集中攻撃を受けて沈没、乗組員約1千人が亡くなった。(バンコク=佐々木学)